路上占い、あれこれ57【占い師は間違える】
崔 梨遙(再)
今宵は1762文字です。
僕がまだ夜のミナミの路上で占いをしていた時のこと。
目の前に、ギャルが座った。長身、スタイルはいい。顔はメイクが濃すぎるが、多分、それなりに美人なのだと思う。しかし、所詮は高校生、いくら背伸びをしたところで、まだ色気は漂わせていない。だが、若いというのはいいものだ。
「今日は何を占いましょうか?」
「当ててみろや」
「は?」
「私が何を占ってほしいか? 当ててみろって言うてるねん」
「・・・・・・妊娠?」
「はあ? アホか! 妊娠の前に大事なことがあるやろ?」
「避妊?」
「ちゃうやろ! 恋愛や! まずは恋愛からやろ」
「ああ、恋愛ですか、じゃあ、占います」
「ちょっと待て、もっと聞け。今、気になる男が3人おるねん。1人は勉強が1番できるマナブ君、1人はスポーツ万能のカケル君、最後に、学校で1番おもしろいユウ君や」
「じゃあ、その3人との恋愛をそれぞれ占って、比較してみては?」
「ちょっと待て。もっと聞けって。マナブ君とカケル君は、関西人やのに話がおもしろくないねん。関西人でおもしろくないって、アカンやろ?」
「でも、好意を持っているんでしょ?」
「うん、黙々と勉強してテストの度に学年1番で輝くマナブ君、眩しいねん。ほんで、スポーツで汗を流すカケル君を見たらタオルを差し出したくなるねん。でも、この2人は話してても全然おもしろくないねん。どう思う?」
「では、占います」
「もっと聞けや! って・・・まあ、もうええわ。占ってや」
「どういうことやねん? オッサン。3人、誰に告白しても楽しく付き合えるって、こんな結果を出されたら私が困るやんか」
「誰か1人に絞りたいんですよね?」
「そうや、そのためにここに座ってるのに」
「ですが、嘘は言えません。3人、誰と付き合っても良い恋愛ができるんです。それに、あなたが今持っている恋愛運を見たらすごく良かったんです。今は絶好調なんですよ」
「うーん、誰にしようかな? オッサンやったら誰がいい?」
「僕はマナブ君ですね」
「なんで?」
「マナブ君はレベルの高い大学に行き、大企業に就職する可能性が高いように思えます。若いときは、おもしろい男が良い、運動神経のいい男がカッコイイと言うんですけど、結局、結婚するとなったらエリートを求めることが多いんです」
「マナブ君かぁ・・・」
「あなたはモテ期のようです。例えあなたがビリから3番の成績でも、マナブ君はあなたに夢中になるでしょう」
「誰がビリから3番やねん! 私はいつも学年で3番の成績や!」
「あ、これこれは、失礼しました。軽い冗談だったんですけど」
「オッサン、私を何やと思ってるねん。いきなり『妊娠』とか言い出すし」
「だって、女子高生から妊娠の占いを頼まれることは多いんですよ」
「オッサン、今、聞き逃すことができへんことを言うたな?」
「え? なんですか? 僕、なんか悪いことをいいましたか?」
「私は、中学生や! 私は処女やー!」
後日。目の前に小さくてカワイイ、お人形さんのような少女が座った。僕はロリコンではない、年上が好きだ。でも、その少女を『妹にしたい』と思った。
「さあ、今日は何を占いましょうか?」
「恋愛を・・・・・・」
「想い人がいるんですね?」
「はい・・・・・・」
「では、その想い人との恋愛運を見ますね」
「はい・・・・・・」
「うまくいきますよ。必要なものは『きっかけ』、それだけです。友人とかに協力してもらえそうですか?」
「はい・・・・・・」
「友人に頼んで、好きな人と連絡先の交換とか手伝ってもらえるといいですね」
「私、好きな人と付き合えるんですか?」
「はい、付き合えますよ・・・」
少女は泣き始めた。
「ちょっと、なんで? なんで泣くの?」
「嬉しくて・・・今まで、好きじゃない人からは告られるけど、好きな人に告られたことが無いし、『もう、好きな人とは付き合えないのかな?』と諦めかけていたから。だから、好きな人と付き合えるって言われて、今、とても嬉しいです」
「そうかぁ。良かったですね。でも、まだ中学生なんだから、エッチなことはなるべく我慢した方がいいですよ」
少女は泣き止みかけていたのに、また泣き出した。
「何? どうしたの?」
「ヒドい・・・私、大学生なのに・・・」
後日。
所帯やつれした、オバチャンが目の前に座った。
「今日は、何を?」
「私、二十歳の女子大生なんですけど・・・」
「嘘つけー!」
路上占い、あれこれ57【占い師は間違える】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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