第4話
「車検の不適合箇所はこのくらいか」
吹谷はチェックシートに印をつける。
今はお客様から預かった車の車検前に事前点検を行い見積もりを作成していた。
「城森さん、これで入力お願い」
「分かりました。査定もお願いされてたのでそちらも良いですか?」
「はいよ」
フロントのPCに吹谷が点検した項目を城森が入力する。
その間、吹谷は預かっている車のおおよその価値を調べていた。
「ざっと420万くらいか。まあまあレアな車だし、それくらいの価値はあるだろ」
「ではそのように私から説明しましょうか?」
「任せてもいいか?」
「はい。吹谷さん休憩行かれたらどうです?」
「そうするわ」
城森にお客様対応を任せ、吹谷は喫煙所に向かう。
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「ふぅ」
タバコに火をつけ、煙を吐く。
「これ良いな」
タバコを吸いながらネットショッピングを眺めていた。
基本的にアパレル系を見ることが多く、今はブーツを探していた。
「6万かぁ」
吹谷が気に入ったのは6万円のエンジニアブーツだった。
「今月、カード使いすぎたしなぁ。どうするか」
クレジットカードの利用明細を見ると、レストランやアパレルショップといったものが記載されていた。
全て、城森とのデート代での履歴だった。
吹谷はデートの際、必ず奢っていた。
もちろん、城森は嫌がり怒りもしたが、吹谷は変わらない。
「我慢するかぁ」
吹谷は大学生の時に稼いだお金の大半を貯金や資産運用に回しているが、そのお金に手をつけないようにしている。
[それ、正直重いよ。もう雄也のこと好きじゃなくなった。]
この言葉は、城森と付き合う前吹谷が愛していた人の最後の言葉だった。
「嫌なこと思い出したな、、、。戻るか」
タバコを吸い終え、事務所に戻る。
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「吹谷さん、先ほどちょうどお客様帰られました」
「そっか、対応ありがとう」
「いえいえ」
吹谷はタバコとライターを置く。
「何かありました?」
「ん?何が?」
「いや、元気なさそうなので」
「タバコの吸いすぎで酸欠になったかな」
「そうですか。嘘をつくんですね」
「へ?」
「どうせ、元カノのこと思い出してたんでしょ」
「何言ってんだ」
「何年付き合ってましたっけ?」
「、、、4年」
「はぁ、そんな長いなら忘れられないのは分かりますけど。私じゃだめですか?」
「そんなことねぇよ」
「そうですか、、、」
吹谷は元カノとのことを忘れられないでいた。
それほど、楽しい日々を送っていたし、幸せにしたいと本気で思っていた。
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仕事を終え、2人は吹谷の家に帰っていた。
仕事中の会話を最後に2人は会話をしていなかった。
「佳奈」
「何です?」
「ごめん」
吹谷は城森と向き合い、頭を下げる。
「何に対してですか?」
「今は佳奈っていう大切な人がいるのに昔の女を忘れないでいるから」
「はぁ、雄也がそういう人なのは知ってます。出会ってたかだか1年とちょっとですが、雄也のことはだいぶ分かってきたつもりです」
「そっか」
「だからこそ私からも言わせてください。雄也は私のです。絶対に裏切りません。私が雄也を幸せにします」
「ありがとう」
「ふふっ、今日は寝かせませんからね?」
城森は部屋の電気を消した。
頼りない彼氏としっかり者の彼女 MiYu @MiYu517
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