地神と海神 ～防衛省最強超類のとんでも体験談～

出る！

　自衛隊施設って「出る」って知ってた？

　面白いことに、新しくつくられた護衛艦で、過去になんも事件が無くても「出る」。

　え、出る理由？

　そんなのおらはユーレイじゃないんだから知らないよ。

　出てきたユーレイに訊いてみて。

　まぁ理屈で考えると、自衛隊組織ってのは、他国から見りゃ軍隊だ。

　そういう場所ってどうにも「寄ってきやすい」みたい。

　今回は、おらやおらの知り合いが実際に遭遇した、ユーレイの話をいくつか紹介するね。

　あー、プライベートでの話じゃないよ、あくまで「自衛隊で遭遇した」ね。

　１：硫黄島

　これはおらの体験談じゃなくて、おらと親しかった人の体験。

　その人が桃太郎(※)だった頃の話。

　硫黄島の夜間警備で見回りしてたんだって。

　で、高射砲のところに着いた時、旧軍の服装した男性を見つけちゃった。

　当然彼が桃太郎だった頃なら、旧軍の服を着てる候補生や教官なんて存在しない。

　だから彼はその男性が「大先輩」だって気づいちゃった、てワケ。

　腰を抜かしてもさすが桃太郎、匍匐前進泥まみれになりながらも、教官室へ向かった。

　教官室前でドアノブを必死で掴み、なんとか立ち上がる。

　できるだけ泥を払ってから報告。

「報告します！　高射砲のそばに、大先輩がおられましたッ！」

「うむ、そうか！　じゃ、今から戻って、そこから夜間警備の続き。なっ！」

　教官のまぶしい笑顔で、彼は焼失しそうになったそうだ。

　でも結局、大先輩より生きてる教官の方が遥かに怖いわけだから、彼はちゃんと夜間警備をまっとうした。

　硫黄島はさ、霊感なくても遭遇する。そういう場なんだよね。

　おらも遭遇したよ。

　おらが遭遇した大先輩たちは、勝手に戦争してた。

　こっちに興味は特になかったみたい。

　おらはハナホジしながら通り過ぎたとかしてないとか。

　※……「海上自衛隊幹部候補生」のこと。江田島の幹部候補生学校が「鬼が島」と言われていたことに由来。

　２：砲兵森

　これは陸自さんの訓練場所だけど、尉官以上になると訓練の一環で富士演習場での訓練に行かされるんだよ。

　おらも勿論行かされた。

　砲兵森の屯田兵ユーレイ、出るよ。

　なんかみーんなユーレイさんを怖がるけど、ユーレイさんの目的は

「訓練中の後輩を怖がらせて楽しむ」

　なんだからさー……

　おらも遭遇したんだけどね。

　穴に入って警戒してるじゃない？

　来たわけだよ、おらの後ろに。

　で、よくネットの怪談なんかにある通り、

「●●大隊はどこでありますかー」

　っておらに言ってくるの。

(※筆者注：監修者に聞いたのに忘れましたごめんなさい)

　おらは激怒した(メロスか)。

　いくらパイセンでも、おらより階級下なんだよ？

　木っ端如きが幹部のおらを見下すなんぞ許さんぞ。

　だからおらはユーレイさんに言ってやった。

「貴様の後方3000メートル、そこから上空1万メートルで貴様を待っているっ！」

「…………」

　ユーレイさん黙っちゃった。

　おらになんか言ってた時はニヤケ面だったくせにさ、能面になって。

　で。すーっ、と消えちゃった。

　なんなんだよ、迷惑な奴だな。

　残念ながら陸自の後輩たちはまだ、そのユーレイさんに遭遇してる。

　だから成仏はしてないね。

　多分、おらはビビらなかったから、つまんなかったんだろ。

　ぜいたくなユーレイだよね。

　※このエピソードはYouTubeで似た話の動画に、筆者(ペン子)がコメントで残したことがあります。なので知ってる人がいるかもしれませんね。

　3：教育参考館

　江田島の幹部候補生学校敷地内に、教育参考館って施設があるんだ。

　ここはねー、出るんだよ。

　理由は遺品。

　建物自体に曰くがあるわけじゃないんだな。

　わりとその辺勘違いしてる人、多いかも。

　よくここを紹介している動画があるけど、間違いだらけ。

　大先輩たちの遺品が展示されてるんだから、そりゃー出るでしょ。

　思い入れがあるんだから。

　ちなみに大先輩たちが何してるか、っていうとね。

　ただ歩いてる(浮いて飛んでる、が正しいのかな？)だけ。

　おらが遭遇した大先輩たちは、ただ歩いてるだけで、なんもしてこなかった。

　ここで大先輩に遭遇したやつの中には、

「着いてこられた！」

「睨まれた！」

「肩を掴まれた！」

　って怖がってるのがいるらしいけど、これなんでだかわかる？

「貴様は士官として、なっとらん！　教育せねば！」

　って大先輩から思われた、ってこと。

　江田島は「海軍兵学校」だった場所。

　海軍兵学校って、今でいう超エリートの学校。

　国民の手本にならなきゃいけない存在だったの。

　なのに見回り程度ですらダラダラしてたら、そりゃー

「貴様、それでも日本男児か！　帝国海軍軍人かーっ！」

　って大先輩が怒るよ、当時はそういう価値観だったんだから。

　大先輩を今の価値観で見てもダメだよ、理解してもらえないもん。

　だっておらのじー様や親父がそうだったし。

　ちっちゃい頃のいたいけなおらを殴ってた、とんでもねー悪辣なヤツらだ。

　ユーレイになって出てきたら、とっつかまえて見世物小屋に売り飛ばしてやる。

　そう思って早く出てこい、っていつも思ってるんだけどさ。

　全然出てこないんだよね。ケチだなぁ。

　4：市ヶ谷の地下駐車場

　おらたちが「市ヶ谷」って言った場合、大抵「防衛省」のことだよ。

　市ヶ谷の地下駐車場に、板が打ち付けられた壁があるんだ。

　これは壁のシミが、何度ペンキを塗りなおしても浮き上がってくるから。

　その壁のシミだけど、母娘の影の形してるんだ。

　一説には戦時中この辺で逃げ回ってて亡くなった母娘のもの、という噂がある。

　真相はわからないけどね。

　で、最初普通にペンキが腐ったかなんかでできたシミだと思われてた。

　だから、清掃してから塗りなおした。

　でもさ、何度塗りなおしても、同じ形が浮かび上がってくる。

　お偉いさんはめんどくさくなったから、板を打ち付けて放置。

　多分今も板の下には、母娘の形したシミが「いる」はず。

　5：立て籠もったアイツ

　市ヶ谷の有名なユーレイさんだと、もう一人いる。

　立て籠もったアイツ。

　おらが市ヶ谷でお仕事してたら、アイツが見てたこともあった。

「何見てんだこらぁ」

　おらたちは機密事項扱ってるんだから、見てないでさっさと成仏してほしい。

　と何度思ったことか。

　ま、そういうわけで、自衛隊。

　ユーレイさん出るよ。