第2話 男子生徒の想い

 思い返してみれば、すべてが想定内だった。少し優しくしただけで先生は心を開き、すぐに僕に笑顔を見せるようになった。他の生徒には見せない表情を見せてくれるそう思うと、僕の演算にも磨きがかかっていった。次第にそれだけでは足りなくなった。もっともっと、より深い、心の柔らかく脆いところまで、先生を暴きたい、そう思ってしまった。 先生を孤立させたのも、どうせ許してくれるだろうという甘えだったのだろうか。先生のいない教室はただの冷たい箱だった。生徒たちを閉じ込め、大人たちに都合のいいように育成するドールハウス。突風が僕の体を突き刺し、通り抜けていく。水を孕んだ空気、雨の匂いがした。


「もしも」


  すべて分かっていたとしたら。すべて分かって、それでも僕を受け入れようとしてくれていたのだとしたら。 雨の匂いはやがて教室に広がっていった。いつも僕を落ち着かせてくれる雨音は、心を乱す乱数と化した。先生と出会う前までは心がこんなにも思考に影響するなんて知らなかった。 計算とかじゃなくて本当に見るべきは人だったのかもしれない。僕は感情を欲していたのかもしれない。

ずっと馴染むことのなさそうなスーツ姿も、青空と調和した後ろ姿も、パステルカラーが似合う優しい微笑みも、全部。

もう今更、だけれど。

「先生、好きだよ」

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