犬。人間にもっとも身近であるその獣は、ある時は良からぬものから人を護るべく牙をむき、そしてある時は、人の骸を食いあさり生者にも牙をむける存在である。人の宿業に染まった、この獣が食いやぶった白いものは何だったのか。あなたの住む土地のどこかにも、こんな幻がたゆたい、こんな獣が塵をあさっているかも知れない。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(71文字)
人生に行き詰まった男。幸せな家庭を築くはずだった過去。ゴミ捨て場に佇んでいた犬。自分の望んでいた夢を白い蝶が魅せる。表現が上手く素晴らしい作品でした。
淡々と綴られる夫婦の破綻の物語。そして夫が垣間見る幸福の幻影。それを切り裂くのは、野良犬の牙。彼は男に告げたのかも知れない。現実に生きよと。