神様の弔い

あるひ家鴨

序章

ノルドリア創世神話より -開闢-

永きとき、一なる神ソルド・マーチ、ただひとり在り給へり。

あな寂しや。

その孤独の深みに名の生ひ出でしとき、地の神トグルマル・エルシュナ、息吹き出でたり。

かくて、天と地とに二柱の立ち給へり。


はじめの年、トグルマル・エルシュナ、ソルド・マーチに眼差しを贈り給へり。

ソルド・マーチ、麗らかなる日差しを返し給ふ。

かくて、春の神アーシェ・エイヴァ生まれ出でたり。


明くる年、トグルマル・エルシュナ、ソルド・マーチに歌を贈り給へり。

ソルド・マーチ、一筋の風を返し給ふ。

かくて、夏の神ゾマラ・エイヴァ生まれ出でたり。


また明くる年、トグルマル・エルシュナ、ソルド・マーチに抱擁を贈り給へり。

ソルド・マーチ、一粒の雨を返し給ふ。

かくて、秋の神オクタル・エイヴァ生まれ出でたり。


また明くる年、トグルマル・エルシュナ、もはや何も贈り給はず。

ソルド・マーチ、嘆き悲しみ給ひ、その涙、つぶてとなりて地に降り注げり。

かくて、冬の神ヴァニル・エルシュナ生まれ出でたり。

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