これを見たら判るかもしれない『彼』の物語

……果たして、そうだろうか?




 人間というものは2つの種類の嘘を使い分けるらしい。過ぎ去った過去に対する事実の嘘というものは、自らが行ったことと反する事実を述べることだ。

 人間というものは外観というものを真に受けてそれをそのものとして印象付けるらしい。外観というものは現代では簡単にいじることができてしまうのだ。


 では、彼は嘘をついているのだろうか?

 答えは『否』。彼は一切の嘘をついていない。なぜならばこの物語において、彼は一切の口を開いていないからだ。

 この物語は彼の物語ではない。彼の物語を見た『筆者自身の』物語だ。


 この奇怪な物語にはいくつかの不整合な点が見受けられる。


 この物語を見たあなたは思っただろう。「なんの面白みもないただの文字の集合体だ」と。

 まことのにそのとおり、これはただの「文字の集合体」である。


 それでは聞きたい。

 あなたはこの文字の集合体という『外観』を見てどう思ったのか、と。

 しかし勘違いはしないでもらいたい、「すべてを疑え」と言っているわけではない。

 アンリ・ポアンカレは言った。すべてを疑うも、すべてを信じるも、共に思考を放棄するに等しい、と。


 ではあなたはこの奇怪な文字の連なりを見て何を思うだろうか?


 この物語にて、『嘘』を主題にしているのに一箇所だけしかその単語が出てこなかった。逆に言えばそこが最も重要だと言える。

 そう、おわかりだろうか?




この物語には―――――断定をしていない箇所がいくつか見受けられる。




 日本語で断定をしないということはつまり他の可能性が存在することを示唆している。

 『嘘』というのは自身のコンプレックスの隠蔽、故に『嘘』を断定することは私にはできないのである。

 なぜならば、私は「彼」という外観しか見ていないからだ。

 つまりは『嘘』とはそういうことである。


 もちろん、これが判っただけでこの物語を完璧に理解することはできない。

 そのためには必ずこの「文字の連なり」を熟読することが必要である。

 それでもわからないかもしれない。


 なので私は皆さんの考えを教えてほしい。




 あなたは何を『嘘』だと断定できたのだろうか

 それによってどのように物語を解釈したのだろうか?

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ライアーテイル 冰灯純怜@WGS所属 @Su3Le3006

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