チコリ

青城澄

チコリ



わかっていても

言わぬがよい


あなたの

やわらかな心のひだは

時にむきだしになって突き出される

刃のような人の悲しみを

やさしく包むためにあるのだ


だから

時に暗がりに伏せこまれ

風と光を無情に断たれ

奴婢のように言葉を奪われ

花咲くことを拒まれようとも

魂の芯が折れぬ限りは

言わぬがよい


泥のような悲しみの日々を

魂の凍るような絶望の仕打ちさえを

耐え抜き 耐え抜いて

いつしか

あなたの心は

真珠のバネのように強く

美しくなる


だから

わかっていても

今は言わぬがよい

星々の歌う切ない愛の悲しみのために

あなたがこらえた涙は

やがて魂の深い彼方の宮で

清らかな香りの珠をつくるのだ





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チコリ 青城澄 @sumuaoki

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