転生者、帰還を目指して旅に出ます。
四句八句
第1話
「へへっ……」
苦笑いを浮かべ自分の背丈ほどの草むらに身を潜める。
この場所に来て2日目、やっとここが異世界ということに確証が持てた。
馬鹿みたいに巨大なジャングルの木を見ても、空想上のドラゴンや魔法について書いてある本を見ても異世界だなんて一ミリも思わなかったが、これを見ては流石に異世界としか言いようがない。
なにせ自分の眼の前には本にも書かれていた3メートルくらいのグリフォンのようななにかがいたからだ。
鷲のような頭に白色の羽根を生やし、ライオンのような足と体つきをしている。
これは間違いなくグリフォンだ。
距離は20メートルほど、グリフォンはこちらに気づいていない。
クロスボウを取り出し、矢を装填する。
例の本によると、矢や剣などに魔法をかけ、強化することができるらしい。
何でも人によって使える魔法が限られてくるらしいが、そんなものは使ってみないとわからない。
グリフォンに魔法のお試しをするのはどうかとは思うが、まあ仕方ない。
とりあえず使ってみることにした。
「世の神聖なる炎よ、今この矢に力を宿さん。」
初めてにしては噛まずにうまく詠唱できた。
クロスボウが少し赤くなり、矢の先が赤褐色になりに炎がまとわる。
「おお……」
まさか本当に成功するとは思っていなかった。
クロスボウを構え、引き金に指を当てる。
グリフォンの頭を狙い、矢を放つ。
発射された矢は、炎をまとい、グリフォンの羽根に突き刺さる。
矢が当たった部分から炎が燃え広がり、グリフォンの白色の羽根を赤く染めていく。
迷わず二本目を装填する。
装填している間、グリフォンはこちらに気づき、炎を羽根を動かし消していた。
グリフォンの炎が収まると、羽根が片方だけ茶黒く焦げていた。
グリフォンがこちらを向き、今にも突進しようと構えている。
「人間様を舐めるなよ」
クロスボウを構え、引き金に指を当てる。
今度は氷の呪文を唱える。
「世の冷徹なる大地の氷よ、今この矢に力を宿さん」
流れのまま、矢を放つ。
矢は先程より速く、周りに氷の小さい氷柱のようなものをまといながら飛んでいく。
グリフォンも地面を強く蹴り、こちらに向かって突進してくる。
グリフォンは矢に反応し避けようとしたが、そんな間もなく脳天のど真ん中に突き刺さった。
矢が刺さった部分が凍結し始める。
グリフォンは足を止め、パタリと地面に倒れる。
「ふぅ……」
安堵したように息をつき、グリフォンの矢を抜く。
「当分はグリフォンづくしだな。」
グリフォンの腹の前に座り、腰の短剣を抜き、グリフォンの腹を裂く。
たまに鹿のような馬のような動物もいたため、動物のさばき方ならわかる。
慣れた手つきでグリフォンを解体していく。
肉と毛皮に分け、待ち望んだように火を起こし、肉を焼き始める。
帰還生活は、まだ始まったばかりだ。
転生者、帰還を目指して旅に出ます。 四句八句 @finis7hingt5ouchx
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生者、帰還を目指して旅に出ます。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます