読者モデルの妹と人気グラビアアイドルの姉
ゆきいろ
母さんが亡くなり妹と姉の三人で暮らす事になる
俺には妹と姉がいる。
妹の名前は
そして姉の名前は
「ゆーめくーん」
朝からベッドの上で寝ぼけた姉に密着されて、強く体を抱かれて姉の大きな胸に顔をうずめていて息ができなくなっていた。
このままでは息をする事ができず窒息で死んでしまうだろ、数年前死んでしまった祖父の顔が浮かんで走馬灯のような物をみている最中に扉が開く音がした。
「朝からおにぃの部屋で何してるんだ、この馬鹿姉は……!!」
「いったー……!!」
「ぷはぁ……!!助かったよ星」
間一髪、妹が部屋に入ってきて、ベッドの上で寝ぼけた姉を丸めた雑誌で叩き起こしてくれたおかげで窒息死せずにすんだみたいだ。
「おにぃも、なんで鍵をかけてないわけ。お姉ちゃんが入ってくるってわかってるよね」
「いや、昨日の夜ちゃんと鍵をかけてたはずなんだが」
「ふふふ……それは私が夢君の気付かない間に合鍵を作っておいたから、鍵を閉められても簡単に部屋に潜り込めるわけ――あー何するの星……!!」
「全く……この馬鹿姉はなんて羨ま……ごほん……なんて物を作っているんですか……!!」
見せびらかすように鍵を指でくるくる回していた姉だったが、すぐに妹が鍵を奪う。
「いいですか、その駄肉のような体と頭でも簡単にわかるように説明しますけど。おにぃは今日から高校生なんです。姉弟とはいえ、もう大人なんですし今後そういった事は控える――」
「もう朝から星のそんな小言聞きたくない!!それに星だって、本音ではゆめ君の部屋の鍵欲しいんでしょ……!!星は私と一緒でゆめ君の事が大好きだもんね」
「……っ……そんな事あるわけ!!」
「あっ……!!今一瞬考えたよね、少し間があったもん」
「私はこんな鍵いらないです……!!それにおにぃの事なんて別に好きとか思っていませんし」
鍵を握りしめて部屋の扉を強く閉めて出ていった妹の星。部屋に残っていた姉と俺は支度を済ませて部屋を後にする。
「ねぇ……さっき大きな音がして星が降りてきたけど、夢、あんたまた星を怒らせたんじゃないでしょうね」
「俺じゃないって……!!姉さんが勝手に部屋に入っていて、俺のベッドで寝ぼけながら密着していて、部屋に星がやってきて」
「あぁ……もういいわ。それより夢、朝ごはん食べて行くの?」
「いやいいよ、もう出ないと遅刻するし。コンビニで菓子パンでも買うよ」
「そう……それじゃパン代だけ渡しておくわね」
「おかーさーん、私、今日の講義は午後からだから朝ごはんはジャムパンと目玉焼き用意してー」
母さんからパン代をもらっていたら、上から姉の声が響いてくる。
「全くあの子はもう少し星を見習ってほしいわ」
「俺もそう思うよ、行ってきます」
「そうだ夢、今日の夜少し話したい事があるんだけど時間空けておいてくれる?」
玄関の扉を開けて出ようとした所で母さんに呼び止められた。
「別にいいけど、今話すとかじゃ駄目なの……?」
「今話してもきっと驚くから、今日の夜に話したいの」
「今日はバイトの予定も入っていないし、大丈夫だよ」
「ありがとう夢、いってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
家を出る前の母さんは笑顔で俺を見送ってくれた。少し様子がおかしかったけど、夜の話でわかるだろう、そう思っていた。その日、母さんは買い物帰りの途中飲酒運転をしていた車と交通事故にあって亡くなってしまった。
母さんが亡くなって一週間が経った。姉と妹が有名人だった事もあって、少しニュースになり話題になったが、もう落ち着き始めていた。
「あっ……おにぃ」
リビングに入るとソファに座り母さんの写真を見ながら泣いている星がいた。
「星、今日姉さんが親戚達を連れてくるって」
「うん、昨日の夜に私も聞いたよ」
「姉さんはともかく、俺達はまだ高校生と中学生だ。多分このまま別々の親戚の所に住むかもしれない」
母さんの親戚はずっと星に興味があった、人気読者モデルの星は有名人で話題性もある。今日の話で、きっと星を養子として迎える話があると確信している。
だが俺にはそんな話題性なんてない、多分親戚の目的は星を養子として迎えるそんな所だろう。
「おにぃ……」
「ごめんな星」
抱きつく妹の頭を撫でてやる事しかできず、時間が迫っていき、インターホンが鳴り響いた。
「やぁやぁ、月ちゃん。この間は挨拶しかできなくて申し訳なかったね」
「いえ、叔父様も経営者として忙しいでしょう」
姉がリビングに母さんの親戚である叔父さんをリビングに連れてくる。叔父さんは母さんの仏壇の前で線香をあげて手を合わせる。
「それでここからが本題なんだが星ちゃん、この間話した事を覚えているかい」
「叔父さんの養子になる話ですよね、覚えています」
「あぁ……沙都子も亡くなって、父親も失踪して以来行方をくらませている。君達三人の中で一番上で長女の月ちゃんはまだ大学生に通っている途中、二人の面倒を見ながら家を支えるのも大変だろう。だから星ちゃん僕の家に」
「お断りします」
「は……?星ちゃん、僕の話を聞いていなかったのかな」
「いえ、全部聞かせていただきました。それとこの間も話しましたが、叔父さんは姉さんとおにぃを養子として迎えいれるつもりはありますか?」
「あはは……そういえば星ちゃんは月ちゃんと夢君も一緒がいいと言っていたね。けどごめんね、いくら経営者の私でも二人の子供の世話もあるしいきなり三人の世話をみるのは……」
「だったら叔父さんの養子に行く意味なんてありません、私はおにぃと二人……ごほん……姉さんの三人で暮らしていくつもりです」
「星ー。今、私の事完全に忘れてたよね」
「何の事でしょうか、ちゃんと覚えていましたよ」
「本当に僕の話を断っていいのかね星ちゃん……?家はここよりも断然広いしお風呂も」
「ご心配なさらず。こう見えて私は月に百万稼ぐ人気の読者モデルですから、誰かに面倒をみられなくても生きていく自信はありますから」
「ぐぬぬ……わかった、僕はこれで失礼するよ」
星を養子に迎えたかった叔父さんは悔しそうな顔を浮かべて月姉さんが玄関まで見送ると言って、リビングから去っていく。
「なぁ星……今のどういう事なんだ?俺は三人で暮らすなんて話、全く聞いてなかったんだが」
「だっておにぃに話しても絶対反対するでしょ。だから私と姉さんで話し合って、おにぃの面倒を見る事に決めたの」
「そういう事、ゆめ君は一切お金を出さなくていいから安心して」
叔父さんを見送って姉さんがリビングに戻ってきた。
「いやいや、そんな訳にはいかないよ。三人で暮らすな事になるなら俺もバイトを探してお金ださないと」
「バイトなんて駄目……!!」
「星、でも二人にお金を出させておいて俺だけ何もしないのは」
「だったら、ゆめ君は家事担当でどう……?私と星がお金を稼ぐから。ゆめ君は料理、洗濯、掃除をするの」
姉さんが提案をする。主夫のような役割、母さんがやっていた事を俺が引き継ぐ形となる。
「でも……」
「姉さんにしてはまともな提案を出しましたね、私もその提案には賛成です」
「私と星は賛成みたいだけど。ゆめ君は何か言いたい事でもある……?」
反対しようにも、二人が納得してしまったら俺の意見なんて言っても通らないのは明白だ。
「もう何を言っても無駄か……わかった、姉さんの提案に賛成するよ」
諦めて姉さんの提案にのる。その日から三人で暮らしていく事になり、夜は二人に初めて料理を振る舞うが、味は母さんに到底及ばないと自分でも実感してしまった。
最後までお読みくださりありがとうございます。今回は短編でしたが、もし面白くて続きが読みたいと思っていただけたら凄く嬉しいです。
読者モデルの妹と人気グラビアアイドルの姉 ゆきいろ @nineyuki
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