生きたかった話
片山大雅byまちゃかり
末期癌
「俺はもう長くない」
掠れた声でばあさんにそう告げた。俺は余命いくばくもない末期癌である。数ヶ月生死の境を彷徨い、今日は意識がはっきりしている。
これはおそらく中治り現象だ。数時間〜数日で再び意識を失って、永遠に目を覚ますことは無いだろう。
「三十五年だったか。ばあさん。俺は幸せ者だった」
ばあさんは、私も貴方と居れて幸せでしたとか言ってきやがった。健康な結婚生活を営んでいる時には聞かなかった言葉だった。
「ばあさん、みんなを呼んできてくれ。最期に、喋れるうちに話しておきたい」
無意識にそんな言葉が出ていた。ばあさんはそそくさと病室を離れていく。
俺は子にも、孫にも恵まれた。六十手前で逝くのは早過ぎると言われるだろうが、幸せ者だった。
「……死にたくねぇなぁ。ばあさんの前ではカッコつけちゃったけど、まだまだ生きたかった」
生きたかった話 片山大雅byまちゃかり @macyakari
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