下の上か、中の下か。ステップアップにおける、自分の位置。
ぶん
「下になる勇気」──ステップアップの途中でプライドが邪魔をする話
1.小6から中1──“下になる”という感覚の衝撃
小学校6年生から中学1年生へというのは、多くの人が経験する過程のひとつだ。
これは単なる進級ではない。
立場も、環境も、評価も、すべてが大きく変わる“ステージの移行”とも言える。
小6では最上級生。
学校の中では一番上の存在で、後輩に教えたり、先生からも頼られる。
運動会や卒業式では中心になって動き、周囲からの信頼も厚い。
自分の居場所があり、上の立場ということもあり、ある程度の自信と安心感を持てていたはずだ。
しかし中学に入ると、状況は一変する。
中1は最下級生。
先輩たちに囲まれ、部活でも授業でも“初心者”として扱われる。
小学校での自信は通用せず、また一から欠片を集めて自信を再構築する必要がある。
それが「下の上」から「中の下」へ移り変わる瞬間だ。
このとき、多くの人は戸惑うことはないと思う。
なぜならそれは子供だったからだ。
大人になると、なぜ戸惑うか。
自分はもう“下”じゃないと思っていたのに、また“下”から始めなければならない。
そのギャップに苦しむのは、プライドが邪魔をしているからだ。
「できない自分を認めたくない」「前はもっとできていたのに」──そんな気持ちが、素直に学ぶ姿勢を妨げる。
周囲の目が気になり、わからないことを聞けずに空回りする。
自分の中の“上だった記憶”が、今の“下の現実”を受け入れられなくしてしまう。
でも実は、この“下になる感覚”こそが、次のステージへの入り口なのだ。
新しい環境で“できない自分”を受け入れられる人ほど、成長のスピードは速い。
プライドを手放し、謙虚に学ぶことが、未来の“上”への第一歩になる。
2.大人になっても“下”から始まる──プライドとの静かな戦い
先に少し触れたが、この“下になる感覚”は、子ども時代だけのものではない。
むしろ大人になってからのほうが、より複雑で、より痛みを伴う。
社会に出れば、誰もが一度は“下”になる経験をする。
新卒で入社したとき、学生時代の自信は通用せず、仕事の基本から学ばなければならない。
電話の取り方、報告の仕方、メールの書き方──すべてが新しく、すべてが難しい。
同期と比べて落ち込む日々。後輩に追い抜かれてため息が増える日々。
自分が“できない側”にいることを認めるのが、こんなにも苦しいとは思わなかった。
そんな経験は誰しもがある。
部署異動もそうだ。 前の部署では頼られる存在だったのに、新しい部署では専門外の業務に戸惑い、年下の後輩に教わる立場になる。プライドが邪魔をして、素直に「教えてください」と言えない。わからないことを隠して、余計に空回りする。
転職すれば、また一から信頼を築かなければならない。 「前の会社では評価されていたのに」という思いが、今の環境に馴染むのを遅らせる。
自分の過去を盾にしてしまうと、今の自分が“学ぶ人”であることを受け入れられなくなる。“教える人でいたくなってしまうのだ”
そして、親になるとき。
忘れがちだが、子育ては誰もが初心者。
正解がない中で、試行錯誤を繰り返す。
周囲のアドバイスに耳を傾けることができるかどうかは、プライドとの向き合い方にかかっている。
大人になると、誰も「あなたは今“下”です」もっと簡単に言えば「上級生の言うことはよく聞きましょう」とは言ってくれない。
だからこそ、自分で気付いて認めるしかない。
今の自分は新しいステージに立っていて、そこではまだ“下”の立場なのだと。
それを認めることができれば、学びは加速する。
できないことを認める勇気が、できる自分を育てていく。
出来ない=空洞。つまり新たに出来るを詰めることが出来るのだ。
3.“下”になることは、恥じゃない──それは挑戦の始まり
“下”にいることは、恥ずかしいことじゃない。
それは、何か新しいことに挑戦している証だ。
むしろ、ずっと“上”にいる人なんていない。
本当に成長している人は、何度も“下”に戻って、そこからまた上がっていく。
これは趣味においても同じ話だ。
趣味だからこそ素直に下に戻れる人もいれば、趣味だからこそ上にいることに固執する人もいる。
だが、趣味こそだ。趣味こそ、1段2段降りて、同じ目線から話してくれる。
趣味や雑学系のインフルエンサーや動画投稿者を見ていている人は、皆感じていることはあると思う。
上からよりも、下からの人のほうが人気があり、自分たちもそういう人を見ていると。
“下”になることを恐れて、挑戦しない人もいる。
今のポジションを守ることに必死で、新しいことに手を出さない。
でもそれは、成長を止める選択でもある。
一方で、“下”になることを受け入れた人は強い。
知らないことを認め、できないことを学び、周囲に頭を下げる。
その姿勢が、周囲の信頼を生み、自分の力を育てていく。
プライドは時に自分を守ってくれる。
でも、成長の場面では邪魔になることもある。
だからこそ、“誇り”と“プライド”を分けて考えたい。
誇りは、自分の努力や過去の成果を肯定する力。
プライドは、今の自分を過大評価してしまう壁。
“誇り”を持ちながら、“プライド”を手放す。
あえて日本語英語に分けて、わかりやすくしたが、別に誇りとプライドに拘る必要がない。
あなたのフィールドには、あなたにあった名前がある。
それが、次のステージへ進むためのドレスコードになるのだろう。
下の上か、中の下か。ステップアップにおける、自分の位置。 ぶん @bun3bun3bun3
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