第3話 掴み取れ!両親の了承

「今日は何でこんなにも


辛いものばかりなの~?」


夏休み前、ある日の夢野家の朝食。


エビチリ、麻婆豆腐、キムチ…


苦手ではないが辛いものばかりが、並んでい


る光景に驚いてる私は夢野愛。


広川レッドフィッシュズのチアガールを


目指す夢野三姉妹の長女だ。


「あら~愛ちゃん。おはよう~」


「今日も早起きさんね~♪」


この人は私達三姉妹の母。夢野美咲(ゆめの


みさき)だ。


「今日はこんなにも辛いものばかりどうした


の?」


私が母に聞く。


「今日は真夏日らしいから、暑い日には辛い


ものが良いと思って~」


おっとりした口調で微笑みながら答える。


「ははは…なるほど…」


おっとりしているけど、母は時に情熱的だ。


昔していたアイドル活動の片鱗なのかも知れ


ない。


そしてふと恋のことが気になった。


恋は辛いのが苦手だ。


「お母さん、恋の分は?」


心配になって母に聞いてみた。


「恋ちゃんのはこれよ~」


満面の笑みで冷蔵庫から持ってきたのは、


エビマヨだ。


最近「EBI-CHAN(えびちゃん)」というサン


リニーが作ったキャラが流行っていて、恋が


好きだからナイスチョイスだ♪


さすがお母さん。



このような会話をしながら、朝食の手伝いを


する。



「愛ちゃん~。


皆そろそろ夏休みだと思うけど~


私からの『宿題』は、進んでる?


健一さんと家族で出かける話とかも出てるん


だけど~?」


健一さんは父のこと。


そして私とお母さんは約束をしている。



オーディションに出るために


『ある程度の形になれば見せる』


『その時の内容と残り期間次第で、オーディ


ション参加の可否相談を父にするか決める』


この2つである。



「…うん…私もそろそろ良いかなって思って


た…」


全て通して形にはなっているし、悪くないと


思う。


でも不安や不満はいつもどこかにあった。


それでも見てもらって結果を貰わないといけ


ない。


「それじゃあ、明日はどうかしら~?」


少し煮え切らない私の返答に対して、期日を


求められた。


私は決意と覚悟を固めた。


「解った!明日!


よろしくお願いします!」


お母さんとはいえオーディションに出るため


の家庭内オーディション。


その審査員にぺこりと頭を下げた。



「お母さん、あい姉、おはよう…」


目を擦りながら心がやってきた。


「愛ちゃん、私が見るのは明日ね~。


かしこまったりしなくて良いからね~。」


母がウインクして厨房に向かう。



「あ、恋をそろそろ起こして来ないと…」



明日。


母とはいえ初めて審査を受ける。


このあと恋と心に、このことを伝えたのだっ


た。



ーーーーーーーー



次の日の夜


「いいこと~?私が合格出したのだから胸を


張ってお願いするのよ~」


そう。お母さんが言うように、見てもらった


審査は合格だった。


だから今からお父さんにオーディション参加


の了承をお願いする。


「私の予想通りだったら、


『あれ』を主張しちゃうのよ~」


お母さんが言う『あれ』とは広川レッドフィ


ッシュズである。


お父さんと私は、レッドフィッシュズの


大ファン。


お母さんはこれを主張すれば大丈夫と言って


いる。


他のチアガールではなく、広川レッドフィッ


シュズで本当に良かった。




「母さん。俺は反対だ~


こんなにも可愛い娘たちが歌って踊る


なんて、そんなの世の男達が好きにならない


はずがない~!」


お母さんの予想通りだった。チラリとお母さ


んを見ると、小さくウインクをしてきた。


だから自信を持ってお願いできた。


「聞いてお父さん。このオーディション、


広川レッドフィッシュズの来期チアガール


オーディションなの!」


写真に撮ってきたポスターを見せる。


「何?広川レッドフィッシュズだと?!」


私に確認したあと、お父さんの顔が笑顔に


変わる。


「よく見つけた!


流石はレッドフィッシュズを愛する仲間!


愛にこそ、いやお前達こそ、広川レッドフィ


ッシュズのチアガールがふさわしい!」


このお父さんの変わりよう(笑)


聞いてた予想通りすぎて、お母さんと一緒に


軽く笑ってしまう。



このあと私は、チアガールになれたら選手の


サインを貰ってきて欲しいとか、もし審査員


が選手や監督だったら誰にアピールするとい


いとか、お父さんから長々と話を聞かされる


のだった。



お母さんと恋、心は「オーディションに通る


かが大問題なのに、その後のことまで話して


~」って、呆れて解散してしまっていた。



ーーーーーーーー



私達の夏。


今年の夏は両親全面協力の元、オーディショ


ンに向けて猛練習する暑い熱い夏となる。




ダンスの練習以外にも、広川レッドフィッシ


ュズの『内部調査』とか言って、父に何回も


家族全員揃って球場に連行されたことがあっ


たりした。


私と父だけは毎回満喫していたけど、この話


は機会があれば話したいと思う。

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チア落ちアイドル三姉妹♡ えむいちまるろくHC @M106

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