第8話【マゴノリア。】
【マゴノリア国検問所前】
運転手
「お、遅いです…ね。大丈夫でしょうか…」ドキドキハラハラ
「大丈夫ですよ。あ、ほら、帰って来ました」
運転手
「ほんとにっ…本当によくご無事でっ!!」。°(°`ω´ °)°。
「戻りました。なんでこの人は泣いてるんですか」
袮雪
「あなたが無事に帰って来て嬉しいのよ」
吹雪
「はぁ…そうですか。ユキさん、後でお話したい事があります。落ち着いたらまた呼んでください」
袮雪
「話?わかりました。では後ほど」
吹雪は一礼をして筒に戻った。
運転手
「?あれ、従者様は…」(。•́ωก̀。)…グス
袮雪
「あぁ、戻りました。彼は呼んだ時以外は姿を隠しているのです」
運転手
「そうなのですね。それでは私も皆さまを無事送り届けましたので帰ります」
袮雪
「気を付けて帰ってくださいね」
「ありがとうございました」
カティリア
「とても助かりました。ありがとうございます」
「有難う御座います」
運転手
「こんなに美しい方たちにこうもお礼を言われると照れますね/// では失礼します」
引き返して行く馬車を手を振って見送る。そして検問所を見る。長蛇の列。物凄い混んでる。難民が多く見て取れた。マゴノリアは多くの魔法兵団員を率いる大国。
カティリア
「凄い数の人ですね。ボクたちも並びましょう」
袮雪
「私もう限界…変身解けそうです…」:( ˘ᾥ˘ ):
天花
「気合い入れなさい。いい男捕まえるまでは許しませんよ」
カティリア
「いい男って言った」
銀鈴
「本音が出ましたね。では参りましょう」
警備員①
「…お次の方。では、入国の目的と理由を」
袮雪
「まずはこちらを。私たちは旅の一座で芸の腕を披露しに来た
カティリア
(おぉ…ふつうにしていらっしゃる…すごい…さっきまであんなにイヤイヤしてたのに…)(; ・`д・´)
警備員①
「…ふむ。確かにファージャ様の直筆のサインと魔法印のようですね。失礼ですが、志願者の方で?」
袮雪
「えぇ。そのようなものです」
警備員①
「そうですか。では次に荷物のチェックをします。こちらの台に全てお出しください」
袮雪は吹雪達の筒を、銀鈴は
警備員①
「これだけ、ですか?旅の一座なんですよね」
袮雪
「これだけです」ニコ
警備員①
「!こ、こちらの筒はどういった物で?確かめさせていただいても?」
袮雪
「これは私の使い魔が入っています。お出ししますか?」
警備員①
「念の為お願いします」
袮雪
「はい。では、レイ」
銀鈴
「はい」
6本の筒の栓を抜く。出て来た6匹に警備員はビビった。まさか人型のモノが出て来るとは思わなかった。
警備員①
「つ、使い魔なんですよね…」
袮雪
「えぇ、確かに。証拠、と言ってはあれですが、獣耳と尻尾を出しましょうか?」
警備員①
「い、いえ大丈夫です。では、使い魔を含めた皆さんの名前をこちらに記入お願いします」
袮雪
「カティ、頼んでも?こちらの文字はまだ書けなくて」
カティリア
「もちろんです。こちらに書けばいいですか?」
警備員①
「はい。お願いします。お嬢さんはお手伝いかい?偉いねぇ」
カティリア
「え?はい」
お嬢さん…お嬢さん?
ちゃんと女性に見えてるのかな?
まぁ、元々よく女性に見られてたからな…。
カティリア
「…はい!全員書けました」
警備員①
「ありがとうございます。ではこちらの紹介状はお返ししますね。ようこそマゴノリアへ。皆さんは難民ではないようですのでこのまま門を通ってください。
袮雪
「ありがとうございます。では」ニコ
警備員①
「い、いえ///」ドキドキ…
カティリア
「ユキさん、行く先々で男性を惑わせないでください;;;」
袮雪
「あら、ちょっと笑顔を向けてるだけじゃない」クスクス
カティリア
「もう…。ほら、行きますよ。えっとまずはファブリアという料理屋さんを探しましょう」
天花
「私お腹すいたわぁ」
カティリア
「もうですか!?えぇどうしましょう…」
銀鈴
「財布の紐の緩そうな男性を探しに行きましょう」デデドン
カティリア
「もう〜レイさぁん…」
銀鈴
「腹が満たされたら芸でも披露して稼ぎましょう。でも其れにはテンのやる気が必要です。分かって下さい」
カティリア
「わかりました」
袮雪
「じゃあ町の中心まで行ってみましょ!」
ぼちぼち歩き出す1人と3匹。町の中心部が近くなるにつれて声を掛けてくる男が増えてきた。
「お嬢さんたち一緒に食事でもどうかな?」
天花
「んー3点。ケチそう」
袮雪
「厳しいなぁ」クスクス
恰幅のいい男
「え?3点?」
天花
「次」
袮雪
「じゃあねぇ」
恰幅のいい男
「3点…」
天花
「5点。うるさい」
よくしゃべる男
「え?」
天花
「2点。歯が黄色い」
袮雪
「もう財布どうのって関係なくなってるじゃない」
天花
「私を持て成すのよ?それなりの男じゃなきゃ…」
―くん。
天花
(このにおい…微かにだが王気を感じる…)
袮雪
「…その顔はお眼鏡に適う殿方が居たのかしら」
天花
「…強い
そう言って天花はさっさと歩き始めてしまった。袮雪は声を掛けてきた男たちに笑顔で手を振り別れを告げて天花の後を追う。
◈◈◈
食事処
【アマノリス】
「コウ、コウ。ちょっと飲み過ぎですよ」
コウ
「んー?こんなの飲んだうちにはいらねぇよ。だいたい休みの日なんだからいいだろ?」
「今日はバリバリ仕事の日ですよ!!!!この後王宮の方と商談ですよ!!!!」キィィ
青く艶のある長い髪を三つ編みにした若い男はコウと呼ばれた漆黒の長い髪を三つ編みにした若い男の服の襟元を両手で掴んで激しく前後に揺する。
コウ
「∑あぁ、ちょ、やめろバカたれ!!出る!!出ちゃう!!」
―くん。
コウ
「…?」スンスン
青い髪の男
「?どうしました」
コウは突然そそくさと身嗜みを整え始めた。
「またいつものアレじゃないすか?」モッモッモッ
青い髪の男
「や、やめてくださいよガルシア…縁起でもない…」
コウ
「さて!この爆裂美女の気配はどこからかな♪」
ガルシア
「ほら」モッモッモッ
青い髪の男
「( ˘ᾥ˘ )」グゥ…
コウは酒を飲んでいたテラス席を離れて行ってしまう。
天花
「この辺なんだが…」(・ω・三・ω・)
―バチッ。
天花・コウ
「「あ」」
天花
(この男か…ふーん?仕立ての良い服、質のいいアクセサリー。身綺麗で身分はそこそこ高そうだ。チョロそうで金も持ってるだろう)
コウ
(おっとひとりじゃない。ラッキー♡ 金髪美女は、たぶん今俺を値踏みしてる。チョロそう。白髪美女は本心読めないタイプの難しい子だな。銀髪美女はガードが固そうだ。こっちのちっちゃい子は…ガルネアより下か?でも可愛いからヨシ!)
コウ
「やぁ、そこ行くお嬢さん方。一緒に食事でもどうですか?」ニコ
天花
「あら、ちょうどよかったわ。私たちも食事しようと思ってお店を探していたの」ニコ
恰幅のいい男
「おい!ねぇちゃん!さっきの3点たぁどういうことだ!それにお前!このねぇちゃんは俺が先に唾つけたんだぞ!!」
コウ
「唾?ばっちぃですねぇ。あなたはこのお嬢さん方のお眼鏡に適わなかった、それだけの話ですよ」╮(´・ᴗ・` )╭
恰幅のいい男
「てんめぇ!!!俺をバカにしてんのか!!!」
コウ
「おっと!ここは
恰幅のいい男
「知ったことか!!!勝負しろ!!!ヒョロガリ野郎!!!」
コウ
「失敬な。これでも毎日トレーニングしてるんですよ?ほら」
恰幅のいい男
「!?」
殴りかかって来た恰幅のいい男の拳を受け流して流れるように腕を捻りあげてしまうコウ。
コウ
「警備の方が来る前にやめましょ?あなたじゃ私には敵わない。ね?」ニコ
恰幅のいい男
「ぐっ!!!諦められるかよぉ!!!」
コウ
「あらら」
青い髪の男
「コウ!何をしているのですか!?」
コウ
「ん?殴り掛かられたから取り押さえただけだ」
恰幅のいい男
「コウ?…っコウって言ったのか!?」
コウ
「そう。私はコウといいます」ニコ
恰幅のいい男
「す、すまなかった!!知らなかったんだ!!許してくれ!!い、いや、許してください!!」
コウ
「別に怒ってないですよ。さ、お嬢さん方行きましょう」
急に態度を変えて
コウ
「今座るところを用意しますね。店員さんここの席くっつけてもいいですか?」
店員
「あ、はい。私の方でやらせていただきます。少々お待ちください」
隣の空いてるテーブルをくっつけて椅子を引っ張って来て全員が座る。
天花
「んー!美味しそうな匂いがしてるわ!」
コウ
「どうぞ。お好きな物を頼んでくださいね」
袮雪
「カティ、頼んでくれる?私たち何が何なのかわからなくて」
カティリア
「はい!えっと、お魚よりお肉がいいですかね?」
銀鈴
「あ、私は魚がいいです」
カティリア
「はい!」
コウ
「皆さんマゴノリアは初めてですか?」
袮雪
「えぇ。最近こちらに来て」ニコ
コウ
「そうですか。では私がここのお店のオススメとマゴノリアの名物を頼みましょう。お酒は葡萄酒とエール、米酒がありますが、どちらにしますか?」
天花
「あら、米酒がありますの?でも葡萄酒もエールも飲んでみたいわ!」
袮雪
「私も全部飲んでみたいわぁ」
銀鈴
「私は御酒以外の物を御願いします」
カティリア
「お酒以外はなにがありますか?」
コウ
「お酒以外は葡萄ジュースと甘酒かな」
銀鈴
「では私は甘酒を」
カティリア
「酒と付くのにお酒ではないのですか?」
銀鈴
「東国では、ですが、昔はこういった物を全て酒と呼んでいたのです。其の名残りですね」
カティリア
「へぇ?それってボクも飲めますか?」
銀鈴
「えぇ。大丈夫ですよ。東国の物と同じならば」
コウ
「大丈夫ですよ。ここの甘酒はルクスースから仕入れているもの。ルクスースの甘酒や米酒はトルグスメニアから技術を持ち出したもので、トルグスメニアも元々東国から技術を得ています。同じ物だと思います」
カティリア
「ではボクも甘酒飲んでみたいです!」
飲み物が決まったところでコウが適当にメニューを端から端まで頼んだ。
コウ
「さぁどうぞ召し上がってください」
天花
「いただきます!…んーっ美味しい!///」
袮雪
「そうね。テン、お肉ばっかり食べないで魚も食べなさい」
天花
「はぁい」
コウ
「ふふ。皆さんは東国のご出身で?」
袮雪
「えぇ。旅芸人をしています。風の噂でこちらに大きな芸を披露する場があると聞きまして。果たして異国で通じるのかと腕試しに参ったのです」
コウ
「へぇ!それは見てみたいです」
袮雪
「ところで、そちらの青い髪の方は名はなんと?」
アスカ
「!あ、失礼しました。アスカと申します」
袮雪
「アスカさん。そうですか」ニコ
アスカ
「?」ニコ
コウ
「ガルシア、お前も自己紹介しなさい」
ガルシア
「す。ガルシアす」
天花
「こちらは私はテン、彼女がユキ、その隣がレイ、そしてその子がカティです」
コウ
「テンさん、ユキさん、レイさん、カティちゃん。素敵なお名前ですね。皆さんこの後の予定は?」
天花
「この後ですか?そうですね。演芸場を見に行こうかと」
コウ
「
天花
「
コウ
「まぁ、そう言わず」アハハ
天花
「いえいえ申し訳ないですわ」ウフフ
アスカ
「ダメですよコウ。無理を言っては」
袮雪
「いえいえ。無理だなんて。私はぜひ案内して欲しいです」ニコ
天花
「
コウ
「
天花
「そういえば、お兄さんはお名前なんていうの?」
コウ
「コウです。あちこちで商売をしています」
天花
「あら、じゃあルクスースという国に行ったコトあるかしら?」
コウ
「もちろんありますよ。ルクスースに興味がおありで?」
天花
「えぇ」
銀鈴
「…」
食事をしながら横目に天花を見る銀鈴。
銀鈴
「…テン、御酒はあと一杯で終わりですよ」
天花
「なんでよぅ〜」(⑉・̆-・̆⑉)ムゥ
銀鈴
「貴女、少しは御自分の酒癖の悪さを自覚したら如何ですか」
天花
:「ぐぬぬ…」::( •ᾥ•):
コウ
「あはは!テンさんも私と同じだ」クスクス
アスカ
「笑い事ではありませんよ」( ・᷅-・᷄ )
コウ
「∑うん!?」
銀鈴
「貴女は酔うと必ず男性と問題を起こすのですから。毎度毎度問題の後処理をする私の身にもなってください」
アスカ
「コウは酔うと必ず女性と問題を起こすんですから!毎回毎回後処理をする私の身にもなってください!」
ガルシア
「ハモりましたね」
天花
「仕方ないだろう!?そこに好い男が居るんだから!!居る方が悪い!!」カッ!!
コウ
「仕方ないだろう!!そこに綺麗な女性が居るんだから!!」カッ!!
ガルシア
「すごいシンクロ率すね」モッモッモッ
カティリア
「あははは…」
袮雪
「レイも大変よねぇ」╮(´・ᴗ・` )╭
コウ
「ところでルクスースのどこに興味がおありで?」
天花
「え?そうねぇ。王様に会ってみたいわね」
コウ
「王様に?どうして?」
天花
「最強の王様で好い男と聞いたら会ってみたくなるものじゃない?」クスクス
コウ
「なるほど」
アスカ
「…普段はとても良い王なのですけどねぇ」ポソ…
天花
「え?」
アスカ
「いえ、なんでもありません」ニッコリ
食事を終えて食後のデザートが運ばれ、雑談をしながらのんびりと過ごす。
銀鈴
「テン」
天花
「ん?」モグモグ
袮雪
「あら、こんな所にまで居るのね」
カティリア
「!
銀鈴の
コウ
「…アイツらに追われてるの?」
天花
「追われてる。そうね。追われてるわね」ペロ…
食べ終えて口を拭った天花が席を立つと、他の2匹と1人も立ち上がった。しかしコウが天花の手首を掴んで引き止める。
天花
「…なに」
コウ
「大丈夫ですよ。マゴノリアは中立国ですから、この国に居る間はいくら
天花
「そう。でも行くわ。早くルクスースという国を見てみたいのよ」
コウ
「残念ですが、今日はもうルクスース行きの船便は終わっていますよ」
天花
「…残念ね。じゃあ宿を探しに行くわ」
コウ
「宿、ご用意しましょうか」
天花
「…」
しつけぇ男だな…。
空気読めよ…。
天花
「ご馳走になってしまったのに宿までなんて悪いわ」
コウ
「ご馳走してあげたのだから宿まで付き合ってよ」ニッコリ
逃がすかよ。
ここの店のメシマジで高ぇんだぞ。
天花
「あら、せっかく隠してた下心が丸見えですよ?」
コウ
「もういいさ。それよりも
『―ね、予言の使者様?―』
天花
「!」
コイツ…。
コウは天花の目を見てそう口ぱくで言うと笑った。
天花
「…まぁ、視界にあの黒づくめがチラつくと落ち着かないし…。じゃあお願いしようかしら」ハァ…
祢雪
「やった!///」
コウ
「そうこなくっちゃ♡」( ´罒`*)✧"
アスカ
「その、とりあえず先に謝っておきます…ごめんなさい|||」
銀鈴
「いえ、
アスカが涙目になって謝ると、銀鈴もまた謝った。
ガルシア
「…追い掛けないと見失いますよ」
アスカ
「∑な!?支払いをして来ますので、ガルシア追ってください!」
ガルシア
「す」
銀鈴
「…全く。テンは相変わらず見境が無いですね」ポツリ
袮雪
「そうね」クスクス
アスカ
「!?」(; ・`д・´)
◈◈◈
ホテル
【アルドラル】
コウが天花達を連れて来たのはマゴノリアで1、2を争う超優良高級ホテルだった。天花達を待たせてコウは受付に向かう。数分後―
コウ
「今日はもう満室なんだって。おんなじ部屋でいいよねぇ〜!」アハハ
天花
「それは構わないけれど…。アスカさんが大変なコトになってますよ?」
アスカ
「……はぁ||| 同じ部屋?もう役満じゃないですか…|||」ズゥゥン…
コウ
「アスカ…。わかったよ。今日は大人しくしてるよ」
アスカ
「信用できると思ってるんですか!?」。°(°`ω´ °)°。ビェェ
コウ
「泣くなよ」
天花
「ふぁぁ…食ったし酒飲んだし、眠ぃな…」クァァ…
銀鈴
「テン。はしたないですよ」
コウ
「あはは!それが素?本能に忠実なお姉さんだねぇ!俺そういうの好きだよ!じゃ、部屋はこっちね」
天花
「もう作ってる必要ねぇもん」
コウは天花の手を引いて移動用の魔法陣に載る。全員が魔法陣に載ったのを確認してコウが魔法陣を発動させた。
天花
「…場所が変わった」オー
コウ
「このホテルはね、客室を魔法で創ってるんだよ。広さも装飾も窓からの景色も色んな部屋があるんだ」
天花
「へぇ?便利だな魔法」
【LandLord's room】
天花
「なんて書いてるんだ?」
コウ
「ランドロードルーム。オーナーの部屋だね」
天花
「おーなー?」
コウ
「そう。さっきの魔法陣も俺専用の特別な場所。意味、わかる?」クスッ
―ガチャリ…。
天花
「コウ専用の特別な部屋なのか」
コウ
「そう!このホテルは俺のホテルだからね!」
ドアの向こうは広々として豪奢な装飾の部屋があった。奥にもまだ部屋がありそうだ。
カティリア
「わぁ!立派なお部屋ですね!」
コウ
「じゃあゆっくりしててね。俺はこれからお仕事だから」
天花
「仕事?」
コウ
「そ。ちょっと偉い人と商談をね。ガルシアを置いて行くから何かあったら言ってね。じゃアスカ行くぞ」
アスカ
「では、ごゆっくり」
祢雪
「えーアスカさんも行ってしまうの?」
アスカ
「?え、えぇ。すみません」
祢雪
「つまんなーい」(⑉・̆-・̆⑉)
コウ
「ついにモテ期が来たかアスカ」(⸝⸝◜𖥦◝⸝⸝)ニヤニヤ
アスカ
「も、もうっ!!からかわないでください!!行きますよ!!」(⑉・̆-・̆⑉)
銀鈴
「連れが申し訳有りません」
アスカ
「い、いえいえ。では、日暮れには戻りますので」
銀鈴
「行ってらっしゃいませ」
ガルシア
「いってらっしゃいす」
銀鈴とガルシアに見送られてコウとアスカは出て行った。
天花
「なぁ、アンタガルシアだっけ?」
ガルシア
「うす」
天花
「眠ぃんだけど、寝所ってどこにあるんだ?」
ガルシア
「ベッドのことすか?いっぱいあるす」
天花
「いっぱい?それ使っていいのか?」
ガルシア
「どれでも好きなのを使ってください」
天花
「お?マジで!じゃ、オレ寝てくるわ」
ルンルンで部屋を見に行く天花。その背中でガルシアが「あ」と声を出したが行ってしまったのでもういい事にする。
ガルシア
(コウさんやアスカさんの部屋にはきっと鍵が掛かってるはず)ウン
袮雪
「私も少し寝てくるわぁ」ファァ…
カティリア
「もうおふたりとも…」
銀鈴
「カティは眠くないのですか」
カティリア
「はい。ボクは大丈夫です」
銀鈴
「
ガルシア
「いえ。このコウさんの紋章が刻まれたキーカードを持ってれば魔法陣は発動できるす」
銀鈴
「
ガルシア
「うーん…まぁ、いいすよ。あんた悪いことしなそうですし」
銀鈴
「有難う御座います」
ガルシア
「街に行くんすか?ならこれも持って行くといいす」
銀鈴
「此方は?」
ガルシア
「財布の代わりす。店主に金の代わりにこれを出してください」
銀鈴
「
ガルシア
「前払いす」
銀鈴
「前払い、とは」
ガルシア
「旅芸人なんすよね。あんた達の芸がどんなものか見てみたいす」
銀鈴
「嗚呼、前払いとはそう言う。畏まりました。では、折を見て芸を披露致しましょう。此方は有難く御借り致します」
カティリア
「あ、ありがとうございます!」
ガルシア
「す」
まぁ、コウさんの金だし。
銀鈴とカティリアを見送ってガルシアはリビングのソファにごろりと横になった。
◈◈◈
一方の天花は片っ端から部屋のドアを開けて寝所を吟味している。コウ専用の部屋には寝室だけでも10部屋はあり、ベッドも様々な色形の物があった。
―ガチャ!
天花
「!わっはぁ!/// ここで寝よう!すげぇな!/// 昔を思い出すわぁ///」
天花が見つけたのはキングサイズの大きなベッドで、ふかふかの大きな枕とふわふわの布団に
―ぼふん…っ!!
天花
「おおおお…/// ふっかふかだ///」フォォォ…///
たっぷりの羽毛で作られた布団は天花の身体をふんわりと包み込んだ。
―ふわ…。
天花
(あ…この匂い…)ウトウト…
アイツの匂いか…。
なんか…落ち着くな…。
天花
「……すぅ…」スヤァ…
……………
…………
………
……
…
◈◈◈
―ガチャ。
袮雪
「お、ここがアスカくんの部屋かな?お邪魔しまーす」
お構い無しに入り込みベッドに腰掛ける。部屋には飾り気の無いベッドと机にイス、本棚という質素な部屋だった。一通り部屋を見渡した後、袮雪は吹雪の筒の栓を抜いた。
袮雪
「…で、話って何?」
吹雪
「
袮雪
「と、言うと?」
吹雪
「先程足止めを命じられた五名の
袮雪
「なまじ力を持ってるばかりに死ぬか従うかを迫られて、仕方なく従ってる…か」
吹雪
「天花さんは気を付けないと」
袮雪
「呪いに触れるね。困ったな」
吹雪
「組織に心酔している者は良いでしょう。ですが」
袮雪
「仕方なく従ってる人間はわからない。さっき言ってた自ら飛び込んで来た人間も恐らく最後の一人になってそういう心理になったんだと思う。形はどうあれ、組織には背いたという情報を管理するものがあるはずだ」
吹雪
「話はそれだけです。戻ります」
袮雪
「ん。ありがとう」
向こうも一枚岩じゃない訳だ。
袮雪
「んーどうするかなぁ。影法師様も大変な指令をくれたもんだ」
「はぁ…」とため息をこぼしながら祢雪はベッドに倒れ込んだ。そのままうとうとし始めると寝てしまう。苦手な変化の術を長時間行使し続けて疲れていたのもあったが、カティアレイスを再誕させるのに負担の掛かる術を何日も発動させて維持していた疲れがまだ残っていた。
◈◈◈
夕暮れ時。
コウとアスカ、それから魔法陣が上手く使えず部屋に戻れずに居た銀鈴とカティリアが一緒に帰って来た。
コウ
「ただいまー」
ガルシア
「おかえりなさいす」
コウ
「つっかれたぁー…俺ちょっと寝てくるから、アスカ、夕飯の時に起こしてくれ」
アスカ
「わかりました」
コウはよろよろと自分の寝室へと向かって行った。
―ガチャ…。
コウ
「あーマジで疲れた…全くラミリアの奴……寝よ寝よ。………ん?あれ?」
俺のベッドで誰か寝てる?
起こさないようにそっと天蓋の薄絹をまくると枕を抱きかかえて天花が気持ち良さそうに眠っている。
天花
「…」スー…スー…
コウ
「なぜ俺のベッドに…。∑はっ!!そうか!!俺のこと待っててくれてるうちに寝ちゃったんだね!!///」(ノ*°▽°)ノワーイ
(過労ハイ)
コウ
「据え膳食わぬはなんとやら!」
コウは満面の笑みでベッドに載ると、天花の上に覆いかぶさった。
コウ
「ではでは♡ ご希望にお応えしましょう♡」モゾモゾ…
アスカ
「んなわけあるかぁッ!!!ちょっと待てぇッ!!!」バンッ
―スパァァァンッ!!!!
部屋に慌てて飛び込んで来たアスカ。手に持っていたハリセンを振り抜いてコウの頭を叩いた。
コウ
「いったァ――――!!!;;;」
アスカ
「なんか、イヤな気配がして来てみれば!!あんた何してるんですか!!;;;」
コウ
「なにって…ナニだよ?だって!!これは!!どう考えたってそういうことじゃん!!」
―ブチッ。
アスカ
「…何か、言い残すことは?」ゴゴゴゴゴ…
ガルシア
「…とりあえず、早めに謝ったほうがいいすよ」
コウ
「…ご、ごめんなさい(小声)」
天花
「…ん…んん…うるせぇなぁ…」クァ…
コウ
「あ、おはよう」ニッコリ
天花
「ん〜?おぉ…仕事終わったのか?」
コウ
「終わったよ。というかテンはどうして俺のベッドで寝てるの?」
天花
「あぁ?あーここ、オマエのべっどだったのか。なんかイチバン寝心地良さそうだったし、なんかいい匂いすんだよな」
コウ
「匂い?俺の香水そんなにキツい?」クンクン
アスカ
「よく仕事終わりに入浴もせず横になる事が多いですから。それで移ったんじゃないですか」
ガルシア
「コウさんの香水別にキツくないす」
―コンコン。
アスカ
「はい?」
銀鈴
「失礼致します。アスカ殿、何やら式、の様なものが訪ねて来ているのですが」
アスカ
「しき?」キョトン
部屋の入り口には指先に淡い碧色の蝶を乗せた銀鈴が居た。
アスカ
「あぁ、伝令用の使い魔ですね。ご存知ないですか?」
銀鈴
「いえ、似た様なものは。私の国ではこう言った物を式神と言って、略称として式と呼んだりします」
アスカ
「へぇ。シキ、ですか。そういえば極東のご出身と言っていましたね」
銀鈴
「えぇ」
アスカ
「東国ではこの辺りには無い魔法術を使うと聞きます。良ければ今度詳しく教えてください」
銀鈴
「私で宜しければ」
アスカ
「はい!ぜひ!」
ガルシア
「…夕食の準備ができたようすね」
銀鈴
「では、私も御手伝い致します」
アスカ
「いえいえ。お気になさらず。使用人の方がやってくださいますから。蝶をお借りしても?」
銀鈴
「はい」
アスカの手に蝶を渡すと、呪文を唱える。すると蝶は鮮やかな赤色に変わって飛んで行った。
アスカ
「これでOKです」
銀鈴
「便利ですね」
コウ
「んじゃまぁ、とりあえず戻ってくれる?俺ちょっとマジで寝たい」
アスカ
「あぁ、はい。わかりました」
コウ
「あ、あれ?テンも行っちゃうの?一緒に寝よーよ」
天花
「なんで?オレ喉乾いたし」
コウ
「えー…わかったよぉ…ひとりで寝るよぉ…」(⑉・̆-・̆⑉)
ざわざわと皆がリビングへと出て行くの見送ってコウはベッドに倒れ込んだ。
コウ
「ちぇー…つまんないのー…」
あ、テンの匂いかな…花の匂いがする…。
コウ
(いい匂い…)ウトウト…
◈◈◈
しばらくして沢山の使用人が食事の支度をして料理を運んで来た。
アスカ
「では食事にしましょう。コウを呼んで来ますね」
銀鈴
「私もユキを呼んで参ります」
アスカ
「それでしたら、私が一緒に呼んできますよ」
銀鈴
「然うですか?では、宜しく御願い致します」
アスカ
「はい!お任せください」
ガルシア
「どこ行ったかわからないですし、一緒に探すすよ」
アスカ
「あぁ、大丈夫ですよ」
ガルシア
「そうすか」
―数分後。
アスカ
『∑わぁぁぁ!?えぇ!?だ、誰ですか!?あなた!!』
リビングに戻って来たコウとアスカ。と、うっかり男に戻ってしまった袮雪。
袮雪
「あはは…。面目ない。昼寝して気が緩んだら術が解けちゃった☆」(๑>•̀๑)テヘ
天花
「ばかやろう」
アスカ
「ど、どういうことですか!?」
天花
「あーなんつーか…ユキ」
袮雪
「旅をする時によくやるんだ。俺とそこに居るレイが女性に変身して、男性に奢っ…ンッン助けてもらう」
コウ
「ふーん?レイも男なのか」
術を解いて男の姿に戻る銀鈴。
銀鈴
「左様に御座います」
コウ
「おぉ、男だ。テンは?」
天花
「オレは元から
コウ
「ならばヨシ!」
アスカ
「おい」(ꐦ°д°)
コウ
「ようは俺は上手く釣られたわけだ」
袮雪
「そうだね」アハハ
コウ
「ま、いいさ。夕飯にしようぜ」
アスカ
「い、いいんですか!?」
コウ
「いいんだ。
袮雪
「今度は俺達を利用しようって事ね」
コウ
「そういう事」
銀鈴
「あのコウ殿、ファブリアという食事処を知っていますか」
コウ
「?知ってるよ」
銀鈴
「場所を教えて頂けないでしょうか」
コウ
「ん?ここの食事は口に合わなかった?」
銀鈴
「いえ、御食事はとても美味しいです。ファブリアの隣に
コウ
「あぁ、そっちか。じゃあ食事が終わったらガルシア、案内してあげてくれ。俺はまだ仕事が残ってるから」
ガルシア
「うす」モッシャ…モッシャ…
銀鈴
「有難う御座います」
食事を終えて簡単に身支度を整えて
ガルシア
「ここす。ジブンはここで待ってますね」
ディバインドラゴンナイト
「おや、ガルシアさん。何かご用ですか?」
ガルシア
「ジブンじゃなくてこっちの人達が用っす」
銀鈴
「初めまして。
ディバインドラゴンナイト
「紹介状ですね。お預かりします…なるほど、ファージャ・ノリントンの物ですね。どうぞこちらへ、ご案内します」
銀鈴
「有難う御座います」
建物の中に入り、そのまま1階の奥の部屋へと案内される。そこには身綺麗な長身の男が居た。優しく笑んで迎え入れてくれる。
シュレッダ
「ようこそ
天花
「率直に言います。私たちは極東の地よりあるお方からの命令でこの世界を正しに参りました。その途中カンナギという方からシュレッダ様という方にぜひ会うようにと言われてこちらを訪ねて参りました」
シュレッダ
「!あなた方が予言の使者様なのですか。まさか。こんな所でお会いできるとは」
天花
「状況が似てるというだけで私たちのことかどうかはわかりませんが。それで、簡単にこの世界について教えていただけませんか」
シュレッダ
「そうですね。まずこの世界は9体の神竜が創り管理しています。ただ
天花
「
シュレッダ
「力を持つ者、魔法術師だけの世界を創ろうとしている集団です。神から特別な力を授かった神に近しい存在だと主張して、魔力を持たない者を差別し蹂躙し捕え奴隷とし、時には殺す…。そういう集団です」
天花
「…そうですか」
シュレッダ
「皆さんよろしければこの
天花
「残念ですが」
シュレッダ
「…そう、ですか。仲間になっていただければ心強かったのですが」
天花
「そういえばカンナギがあなたに会いたがっていたようですが」
シュレッダ
「あぁ、私もAランク魔法術師として誘われているのですよ」
天花
「そうだったのですか」
シュレッダ
「……私の妻と娘がカンナギの部隊に奴隷として捕まっているのです」
天花
「それを脅しに強引に仲間にしようとしているのですね」
シュレッダ
「はい。…もうどうしていいのかわからなくて…。私の力では特S級、いや、それ以上のランクと噂されているカンナギにはとても太刀打ちできない…」
天花
「申し訳ありませんが、私たちもあなたの為だけに動く事はできません。ですが、あなたの家族がそういう状況にある事は覚えておきましょう」
シュレッダ
「いえ、やっぱり忘れてください。家族が人質に取られているのは皆同じ。この世界に生きる魔力を持たない者は誰しもが今まさにそういう状況なのです。私だけが特別扱いされる訳にはいきません」
天花
「私たちもなるべく早く解決するように尽力はして参ります」
シュレッダ
「よろしくお願いします」
天花
「では、私たちはこれで失礼します」
シュレッダ
「お会いできてよかったです。共に平和な世界を取り戻す為に頑張りましょう」
天花
「えぇお互いに」
握手をして
アスカ
「おかえりなさい。
天花
「いや?どうもせん」
アスカ
「?そう、ですか。志願をしに行った訳ではないのですか?」
天花
「あぁ。ちょっと話聞きに行っただけだからな」
アスカ
「そうなんですね。では、私は明日の準備がありますので部屋に戻りますね。おやすみなさい」
天花
「ん。おやすみ」
袮雪
「おやすみー!アスカくん!」バイバーイ
アスカ
「は、はい…」
ガルシア
「ジブンはもう寝ます。じゃおやすみなさいす」
銀鈴
「道案内有難う御座いました」
ガルシア
「いえ」
アスカもガルシアも自室に戻って行ったリビング。誰も何も言わずにソファに腰掛ける。
袮雪
「…
銀鈴
「内外共に被害者が居る訳ですね。外の被害者はよいですが」
袮雪
「内の被害者が厄介だね」
天花
「オレ達は世界を救いに来たんだ。人助けをしに来たわけじゃねぇ」
袮雪
「お姐ぇ」
カティリア
「…わかって、います」ギュ…
天花
「細かい人助けを続けていたら作戦が長引く。オレ達は少数だ。長期戦になったら不利になる」
カティリア
「はい…」
天花
「まぁ、スメラギとやらと協力出来たらもう少し色んな事が出来るだろうが」
カティリア
「…」
袮雪
「…カティリアくん。慣れない旅で疲れたでしょ。先に休んでおいで」
カティリア
「すみません…」
袮雪
「おいで。一緒に寝よう」
袮雪が優しくカティリアの手を引き抱き寄せて頭をそっと撫でるとすすり泣く声が微かに聞こえた。そのまま支えて部屋へと連れて行く。
天花
「…アイツは優し過ぎるな」
銀鈴
「左様で御座いますね。
天花
「レイ。オマエも休め。ここに居る間は襲撃の心配も無い」
銀鈴
「承知致しました。其れでは御先に休まさせて頂きます」
天花
「おう」
銀鈴
「失礼致します」
一礼をして銀鈴も貸し与えられた部屋に向かう。残った天花は頬杖ついて怠そうに窓の外の月明かりに照らされている海を眺めた。一体どれだけそうしていたのだろうか。月はだいぶ昇っていて空を明るく照らしている。
コウ
「うぁーつっかれたぁ…あれ?まだ起きてたの?枕合わないと寝れないタイプ…な、訳ないか。昼間寝てたもんね」
天花
「オマエはまだ仕事してんのか?」
コウ
「今終わったところ。あ、お酒飲む?ちょうど今極東の珍しいお酒があるんだよ」
天花
「極東の?ふーん?」
コウ
「ちょっと待ってね。今持ってくる」
部屋を一旦出て行ったコウは5分程で戻って来た。
コウ
「お待たせー。これね、今マゴノリアに1本、ルクスースに1本しかない貴重品なんだよ。…はい、どうぞ」
天花
「いいのか?そんな貴重な酒」
コウ
「いいのいいの。また手に入れれば良いだけだから。それに!ルクスースまでの船旅を守ってもらう前払いってことで」
天花
「ん…美味いな」ペロ
コウ
「でしょ?口に合って良かった。テンはさ、ルクスースに行って何するの?」
天花
「あー…んー…まぁ、いいか。オマエ、オレ達が予言の使者だって知ってたもんな」
↑めんどくさくなった
コウ
「あら、当たってた?かなぁ?と思って言ってみたんだけど」クスクス
天花
「カマかけただけだったか」チッ
コウ
「実際はどうなの?」
天花
「予言の使者がどんなもんかは知らんが、オレ達は極東のある奴の命令でこの世界を調律しに来たのは事実だ」
コウ
「へぇ?ねぇ、使者は異世界からの旅人ってホント?」
天花
「本当だ。…オマエ、何でそんなことまで知ってる」
コウ
「噂では
天花
「わざと?」
コウ
「そう。ある日天帝であるメラルクの夢に深い闇が現れた。その闇はメラルクにこう言った。"いずれ来るその時にこちらの世界からそちらの世界に向けて使者を送る。その使者は光に毒されたそちらの世界を正す者。救世主たる存在。覚悟して待てよ"ってね」
天花
「ふーん?」
夢に現れた闇は恐らく影法師。
この計画が始動したのは30年以上前…。
そんなにも長い間待ち続たのか?
天花
「…」
コウ
「テン?」
天花
「なんでもねぇ」
コウ
「でさ、話戻るけどさ?ルクスースに行ったら何するの?」
天花
「何とかしてスメラギに会う。それがこの計画を主導している奴からの指示だからな。スメラギというはっきりとした指定は無かったが恐らくスメラギが影法師の指定した種だ」
コウ
「種?」
天花
「そうだ。この計画に必要な種。秘密兵器ってやつだな。それが芽吹くのがスタートの合図だったんだが、それを待たずに世界が崩壊を始めた。だからオレ達は調律を始めざるを得なかった」
コウ
「つまり調律しながら種であるスメラギ王の覚醒を待つ。という事はルクスースにしばらく滞在する事になるんだね」
天花
「まぁ、そうなるかな。だがまぁ、王サマが嫌がるかもしんねーし?わかんねぇな」
コウ
「そうかな?誰もが待ち望んだ使者様だし、ルクスースの王様は来る者拒まずだから平気じゃない?人種どころか種族だって気にしない」
天花
「ふーん」
コウ
「ルクスースってね、この辺りの言葉で"無"って意味の言葉なんだよ」
天花
「無ねぇ」
コウ
「あぁそうそう。俺達明日そのルクスースに発つんだけどいっしょに船乗ってく?」
天花
「乗る」
コウ
「じゃあ決まりね。予定では明日の昼頃出発だから。で、ここで問題がひとつ」
天花
「問題?」
コウはカップを持った手で海を指さした。
天花
「海がどうかしたのか?」
コウ
「この辺りの海域はマゴノリアが統治している。だから海の上でもマゴノリアの法律が適用されるのね」
天花
「んーうん」
コウ
「んーとね。マゴノリアは中立国だって知ってる?つまりはそのマゴノリアが統治する海域も中立なのさ。だからこの辺りの海域でもいかなる戦闘行為も許されないの」
天花
「ふん」
コウ
「でも、その海域以外ではマゴノリアの法律は当然適用されない。ということは?」
天花
「ということは、マゴノリアの海域を出たら
コウ
「そういうこと。だからルクスースに着くまで船をテン達に守ってもらいたい」
天花はカップの酒を一気に煽った。そして唇をぺろりと舐めながら窓の外を横目に見遣った。
天花
「…だから。アイツらオレ達のこと監視してんのか。つーかあれは監視のつもりなのか?バレバレだぞ」
天花の視線の先を追うと、そこここの建物の陰に黒いローブが見えた。
コウ
「あーあれは
天花
「……。コウは、
天花の問に黒いローブを見つめるコウの瞳が細くなる。
コウ
「…敵の情報が無いと上手く対応出来ないだろ。
天花
「…」
コウ
「俺の母国もあいつらにめちゃくちゃにされたんだ」
天花
「なぁ、オマエが知ってるアイツらのことを教えてくれ。実は送り込まれたのは良いんだがオレは呪いが掛けられててな。やたらと攻撃することができねぇんだ」
コウ
「呪い?呪いって?」
天花
「オレに掛けられた呪いのひとつ。無闇にオレの持つ力で人間を傷付けた時にオレの命を喰い破るようになってるんだ」
コウ
「ひとつって…ひとつだけじゃないのか?」
天花
「ん。まぁな」
コウ
「なんで、呪われてるの?」
天花
「…あー昔、必要以上の力を手に入れてやりたい放題してたことがあるんだ。詳しくは話す気ねぇんだけど…。そんでオレに呪いを掛けた奴が反省しなさい、そして正しい力の使い方を学びなさいってよ。もしまたいたずらに力を使えばオマエは死にますってね」
コウ
「ふん?で、その力が奴らの目に止まったわけだ」
天花
「というよりかは予言の使者だからだな。で、
コウ
「
天花
「異端狩り?」
コウ
「そ。魔力による
天花
「ふーん」
コウ
「ふーんて」
天花
「…」
やっぱりそうか。
当時の人間も当時の想いを引継いでる人間も30年以上経ってるからどれだけ残ってるかはわからねぇ。
その内真に悪意のある人間がどれだけ居るか…。
天花
(つまり、慎重にいかねぇと呪いに触れる)
コウ
「…」
天花
「?なんだ」
コウ
「いや?考え事してる顔綺麗だなぁと思って」ニッコリ
天花
「当然。オレは何をしても綺麗にしか見えねぇよ」フフン
コウ
「お?凄い自信だね」アハハ
天花
「だってオレ好い女だろ?」ドヤァ
そう言ってコウと天花は談笑しながら明け方まで酒を飲んだ。
翌朝―。
―コンコン。
アスカ
「おはようございます。コウ、朝ですよ。出立の準備をしてください」
………ん?
ん〜〜〜〜〜〜〜〜???
―コンコン。
銀鈴
「御早う御座います。アスカさん。テンを見ませんでしたでしょうか。
アスカ
「…」
ベッドのそばで立ち尽くすアスカ。天蓋の薄絹を握り締めている。銀鈴の鼻を掠める微かな酒の匂いと天花とコウの匂い。
銀鈴
「…申し訳有りません。アスカさん」
アスカ
「…の」
銀鈴
「?」
両手で思い切り勢い良く薄絹をまくる。ベッドにはやはりコウと天花が寝ていた。ビッタリくっついて。
アスカ
「この!!!色惚けダメ主人がぁ!!!!起きろぉ!!!!!」
コウ
「…ん…るせー…」モゾ…
アスカはどこからかハリセンを取り出すと大きく振りかぶってコウの頭を叩いた。
銀鈴
「…アスカさん。アスカさん」
アスカ
「止めないでくださいっ!!!」
銀鈴
「いえ、其方私にも貸して頂けますか」
アスカ
「きちんとしつけないとっ!!!…えぇ!?貸してほしいんですか!?」(; ・`д・´)
銀鈴
「はい」コクリ
袮雪
「おはよーアスカくん。なにしてるの?」ファァ…
アスカ
「!お、おはようございます。ユキさん」
コウ
「…イテェ…なんだよ……∑!?」ビクッ
銀鈴
「…」スッ…
コウが痛みで目を覚ますと、ハリセンを構えて静かに殺気立つ銀鈴と目が合った…。
コウ
「…|||」ゾア…
そして、銀鈴はハリセンを握り締め直すと全力で振り抜いた。
ーバッチィィィィンッ!!!!!
天花
「い"ってぇ―――ッ!!?;;;」ギャアアアッ
コウ
「|||||」ゾッ…
銀鈴
「…目は、覚めましたか?」
袮雪
「あーあ。これはお
アスカ
「おねぇ?」
広いベッドの上を悶絶しながら転がる天花に冷めた視線を落とす銀鈴とあららと笑う袮雪。
銀鈴
「アスカさん。此方有難う御座います。便利な道具ですね。此方は何処で手に入りますか?」
天花
「欲しいのかよ!?|||」
アスカ
「これは私の手作りですが…欲しければお作りしましょうか?」
銀鈴
「是非」
天花
「即答すんのかよぉ…」
コウ
「すげぇ音したけど大丈夫…?;;; っていうか!!俺たち寝てただけだからね!?何もしてないからね!?(必死)」ナデナデ
アスカ
「信用できる訳ないじゃないですか」
銀鈴
「信用出来かねます」
日頃の行い。
ガルシア
「…朝食の支度できましたよ」
アスカ
「!あぁ、すみません。ひとりでやらせてしまいましたね」
ガルシア
「構わないすよ。その人の世話のが大変すからね」
アスカ
「あはは…はぁ…ふぅ…(遠い目)」
銀鈴
「テン。朝食ですので支度して下さいね」
天花
「はぁいはい」クァァ…
身支度を終えた天花とコウが揃って朝食を食べる。テーブルには魚介のスープと焼きたてのパンにスクランブルエッグとフルーツサラダが並んだ。
天花
「んーっ/// うまいっ/// この汁物うめぇなっ///」
コウ
「それもマゴノリアの名物だよ」
天花
「マゴノリアは美味いものがいっぱいだなっ!///」モシャモシャ
コウ
「うん。でもマゴノリアは肉系があんまり無いんだよね」
天花
「あぁ!あんかたりないとおもったらそれか!」モグモグ
アスカ
「ガルシアもよく物足りないって言ってますね」クスクス
ガルシア
「すんません。ジブン本来は肉食なもんで」モッシャモッシャ
コウ
「うん。ガルシアはしょうがないよね。ところで今日なんだけど、テン達も船に乗せて行くことにしたから」
アスカ
「あぁ、そうですね。今日はルクスースに発つ日ですから。一緒に行きましょう」
銀鈴
「宜しく御願い致します」
ガルシア
「一緒はいいすけど、大丈夫すか?」
コウ
「それなんだよねぇ」
天花
「なにが?」モグモグ
コウ
「昨日言ったでしょ?マゴノリアの海域を出たら
天花はフォークをくわえたまま「あー」と呟いて昨夜の事を思い出す。
天花
「だいじょぶだろ」
コウ
「ルクスースは目前だからね。スメラギ王との合流を妨害する為にそれなりの部隊が出て来ると思うよ?」
天花
「それは、まぁ、そうなんだろうが。オレ達を舐めてもらっちゃあ困る」
コウ
「凄い自信w」
天花
「まぁ、任せておけよ」
朝食を食べながら航海の日程の話なんかをした。
銀鈴
「あの少々御訊きしたいのですが」
アスカ
「なんでしょうか?」
◈◈◈
マゴノリアショーステージ村
【ラッタリア】
ガルシア
「東国の芸人が珍しいのはわかるすが、一番デカいステージ勧められるとは思わなかったす」
カティリア
「そうですね。この大きな客席を埋められるでしょうか…。ドキドキします」
ガルシア
「そうすね。どんな芸なんすか?」
カティリア
「それがボクもまだ見せていただいたことなくて」
ガルシア
「ふーん?楽しみすね」
カティリア
「はい!///」ワクワク
朝食まで時は戻る。
一足先に少食の銀鈴が食事を終えてコウ達に話を切り出す。
銀鈴
「皆様、此方の国の有名な演芸場の事は御存知ですか?」
コウ
「演芸場?ラッタリアだな。それがどうしたんだ?」
銀鈴
「ガルシアさんと約束していまして。芸を披露すると」
天花
「いつの間にそんな約束してたんだ」
銀鈴
「昨日貴女とユキが昼寝をしに行った後です。私とカティで旅の荷物を改めて準備をしようとしたところ金銭の援助をして頂きまして、代わりに芸を見せて欲しいと」
コウ
「ガルシア、そんなにお金持って来てたっけ?いつも必要最低限しか持ってこな………ガルシア?もしかしてだけど俺のカード渡した?」
ガルシア
「す」モグモグ
コウ
「んんんん素直!!まぁ、いいよ。しかし残念だなぁ。ラッタリアはそろそろオープンの時間だけど、俺は出立の準備で見に行けない」
銀鈴
「出立の準備を手伝わなければというのも有り、私も後日と考えたのですが、今を除いて他によい日が見当たらず。申し訳有りません」
天花
「なんだ。金出してもらったのか。じゃあ礼はしなくちゃな」
祢雪
「でも肝心のコウくんは見に来れないんでしょ」
コウ
「俺とアスカはルクスースに着いて落ち着いた頃に見さしてよ。ラッタリアってステージ借りるのも最初はいくらか掛かるでしょ?ガルシア俺のカードで払ってあげてよ」
ガルシア
「す」
コウ
「それじゃあごちそうさま!俺このまま先に港に行ってるからガルシア、戸締りよろしく」
ガルシア
「うす」
アスカ
「では、私もコウと一緒に出ますね。ごゆっくりどうぞ。ガルシア、あと頼みますね」
ガルシア
「うす」
祢雪
「いってらっしゃーい」
天花
「レイはともかく。カティ、昨日から全然食ってないだろ。どうした」
カティリア
「え?そうですか?うーん特に体調悪いとかではないのですが…」
天花
「ならいいんだがよ。食える時に食っとけよ。これから先何があるかわかんねぇんだ」
カティリア
「は、はい」
天花
「まぁ、無理に食えとは言わんが」
ガルシア
「食い終わりましたすか?もう使用人呼びますけど」
天花
「カティもう大丈夫か?」
カティリア
「あ、はい。すみません遅くて」
天花
「気にすんな」カカカ
カティリアはひと口がとても小さい。そしてよく噛む。なので食事はいつもゆっくりなのだ。ちなみに銀鈴もである。
ガルシア
「じゃあ使用人呼ぶっす。出かける準備でもしててください」
そう言ってガルシアは簡易魔法装置で連絡用の蝶を創り出して飛ばした。しばらくすると沢山の使用人がやって来て朝食の片付けをして行き、出かける準備を終えた天花達を部屋から出して魔法が使えるマネージャーと部屋の戸締りをしてホテルを後にした。
◈◈◈
マゴノリアショーステージ村
【ラッタリア】
ガルシア
「ここがラッタリアす。大小50近いステージがあって飛び込みでショーや芸をやって日銭を稼ぐ場所す。あそこが受付す」
天花
「ふーん?ずいぶん賑わってんなぁ。レイ、カティ受付頼む」
銀鈴
「承知致しました。カティ、御手伝い宜しく御願いします」
カティリア
「はい!」
【ラッタリア受付】
受付には日焼けしたちょっと強面のおじさんがひとり煙草を吹かしていた。
銀鈴
「済みません。舞台を一つ貸して頂きたいのですが」
受付のおじさん
「ん?飛び込みかい?見ねぇ顔だな。初めてか?なら一番安い…いや、待てよ。その格好、兄ちゃん東国の芸人か?」
銀鈴
「はい。然うで御座います」
受付のおじさん
「おぉ!こいつは珍しい!一番安いステージなんてケチな事言って悪かった!急いで宣伝して急いて準備するからよ!一番デカいステージ使ってくれ!ちと値は張るがな」
銀鈴
「御幾らでしょうか」
受付のおじさん
「20,000リラル(1リラル=1円)だ」
カティリア
「∑に!?」ギョッ
ガルシア
「どうしたんすか」
受付のおじさん
「お!?あんたァガルn」
ガルシア
「ガルシアす」
受付のおじさん
「お、おぉすまねぇ。そうだったな。で、どうするんだ?ま、安いステージでもいいけどよ。東国の芸人は珍しい。たぶん小せぇステージだと客が溢れちまう。ラッタリアの混雑を避ける為にもできればデカいステージ借りてもらえると助かる」
ガルシア
「金のことなら気にしなくていいす。あとは実際ステージを使うあんた達が決めてください」
銀鈴
「…其れでは一番大きな舞台を御借りしましょう」
カティリア
「れ、レイさん?大丈夫でしょうか…」
ガルシア
「一番大きなステージっていうと500人は入るす」
カティリア
「ご、500人!?そんなに大きなステージを…だっ、大丈夫でしょうか!?;;;」ドキドキハラハラ
銀鈴
「客寄せ次第ですね。
カティリア
「ガルシアさんに見てもらうだけなら安いステージでも…あぁ、でもお客さんが集まり過ぎると困るんでしたね…しかし500人ですか…」ムムム…
天花
「場所は取れたのか?」
銀鈴
「はい。此処で一番大きな舞台を貸して頂けるそうです」
袮雪
「へぇ?そりゃあ頑張らないとね。あーあ、アスカくんに見てもらえないの残念だなぁ」
天花
「オマエずいぶんアイツのこと気に入ってんな」
袮雪
「え?あぁそうだね。なんでだろうね」アハハ!
天花
「自分でわかんねぇのかよw」ダッハッハッ
袮雪
「でもなんか構いたくなる空気出してない?」
天花
「あぁ?そうか?んじゃま、準備すっか。大した準備ねぇけど」
袮雪
「衣装着替えて化粧っても術で出来るしね」
受付のおじさん
「よぉ!準備はできたかい?なんだまだなのか。もし準備てきたら受付に声掛けてくれ。呼び込みを手伝って欲しいんだ!」
袮雪
「呼び込みを?じゃあ少し派手な方がいいかな」
袮雪は言いながら、5本の筒の栓を抜いて呼び出し、変化の術の応用で衣装を替え、弦楽器や鳴り物を創り出した。銀鈴も駿麗を呼び出している。袮雪は真っ白な漢服を、
客席―。
カティリア
「すごいですね!人が集まり始めました!」
ガルシア
「先に席取っておいてよかったす。この分だとたぶん立ち見客も出てくるすね」
カティリア
「わぁ!ボクまで緊張しちゃいます!」ドキドキワクワク
ガルシア
「すね」
それからまたしばらくして客席は超満員になり、ガルシアの言う通りに立ち見客も溢れた。そうして薄暗かった小屋の中に魔法照明が灯りショーは始まった。まずは大人組6匹が深緑の着物を着て、弦楽器や鳴り物で愉快な曲を演奏しちび達3匹が簡単な術を使った見世物を始める。そして次に華やかな衣装に替えた銀鈴と吹雪がこちらも華やかな帯状の飾りが付いた剣で舞を舞いながら迫力ある組手をして見せる。続いては袮雪が1匹で見せる用の派手な飾りの付いた純白の大刀で舞いながら型を魅せていく。手の空いた者から弦楽器や鳴り物を担当するシステムで回す。芸事は旅の途中で日銭を稼ぐのに便利なので全員が慣れっこだ。そして今度は宣伝の時に着ていた華やかな衣装に着替えた牡丹と駿麗が幾重もの色とりどりな帯状の飾りが付いた扇を持って左右対称の舞を舞う。そして最後は天花。まるで天女の様な美しい衣装や髪飾りと細やかな装飾のされた金の扇を持って息を飲む美しい舞を舞いながら鈴の
天花
「なんだぁ?なんかもう1回やればいいのか?」
袮雪
「っぽいねぇ」
天花
「んーじゃ、袮雪、相手してくれ」
袮雪
「はぁい」
袮雪は天花と同じ衣装を来た女性に化けた。それだけでも歓声と拍手が起る。そしてそれ以外のメンバーは楽器を担当する。弦楽器や笛が主で鳴り物は無かった。静かに始まる曲。天花と袮雪は左右対称の舞を舞いながら歌を歌った。鈴の音の様な透き通る声の天花と懐かしい母の子守唄のような優しい声の袮雪。交互に歌ったり、天花の歌を袮雪が追っかけたり、ハモったり。綺麗な歌声が小屋いっぱいに広がっていく。そして歌は終わり、ステージ貸出の時間もいっぱいいっぱいになったのでこれで本当に終わった。ラッタリアは観覧は無料だが芸やショーが良かったと思った時には好きな金額を支払うというシステムになっている。そして今回の天花達のステージはというと大盛況でチップを回収するスタッフの手元には溢れんばかりのお金が集まっていた。ガルシアとカティリアも出口でチップを払ったが、カティリアはお金を持っていなかったのでガルシアが2人分を支払った。小屋の裏口に回って天花達を待つ。
ガルシア
「そういえばなんか人数増えてたすけど誰すか」
カティリア
「あぁ、ユキさんの使い魔とレイさんのお弟子さんですね。普段は、あの、筒の中に入っていらっしゃって…」
ガルシア
「使い魔すか…いや、でも人型でしたよ。そんなデカい筒なんか持ってなかったすよね」
カティリア
「あの、ボクもそんなに詳しくないので、ユキさんやレイさんに訊いてみてください。すみません」
ガルシア
「そすか。あ、来ましたね」
天花
「うぃーおつかれー」
カティリア
「おつかれさまです!皆さんとっても良かったです!凄い!芸達者ですね!///」
ガルシア
「さっきの女神みたいな雰囲気どこいったんすか」
天花
「あれすげぇ疲れんだよ。特別な時にしかやらん」
カティリア
「ふふふ。テンさんらしいですね」
ガルシア
「という訳でこれがあんた達の芸に付けられた値段す。軽く1,000,000リラル以上はあるすね。誰が持つすか?」
銀鈴
「私が」
袮雪
「俺も持つよ」
ガルシア
「はいす。重いすよ」
銀鈴
「有難う御座います。此方の御金はルクスースでも使えるのでしょうか」
ガルシア
「使えるすよ。この辺りはみんなリラルす」
銀鈴
「然うなんですね。では、コウさんの元へ参りましょう。待って居るでしょうから」
カティリア
「はい!でもコウさんとアスカさん見れなかったの残念ですね」
袮雪
「ねー」
天花
「またいつかな」
ラッタリアのショーステージ村はもちろん街の中までも出待ちのファンが待ち構えていた。人混みに揉みくちゃにされながら進み、なんとかコウとの待ち合わせ場所の港にたどり着いた。
コウ
「あー来た来た。こっちこっちー!」
天花
「おう。待たせたな」
コウ
「ガルシア、どうだった?テン達のショーは」
ガルシア
「よかったすよ。テンさんとかもう女神でした。アンコールの女性に変身したユキさんとの歌もよかったですし」
コウ
「え、なにそれ超気になるんだけど」
ガルシア
「島の妹にも見せてやりたいす。アンコールもそうでしたけど、出待ちもすごくて」
コウ
「そんなに凄かったのか。見たかったなぁ」
アスカ
「コウ。出航の準備総て終わりましたよ。全員乗り込んで待機してます。おや、皆さんおかえりなさい。…?」
天花
「なんだ?」
アスカ
「あの、それ…お金が入った革袋ですよね?なんでそんなにパンパンに?」
袮雪
「なんと同じ物がもうひとつあるよ!」ジャジャーン!
アスカ
「ん"っ!?」
コウ
「おいおい…軽く1,000,000リラルはないか?よほど凄いショーだったんだな。まぁ、東国の芸人は珍しいしそれもあったんだろうけど。にしても稼ぎ過ぎじゃない?」
天花
「オレらが本気出せばこんなもんよ!」カカカ
コウ
「今度時間がある時にでも見せてね」
天花
「ん。オマエには世話になってるからな」
コウ
「うん!はい!という訳でこれから皆さんが乗る船はコチラです!」ジャーン!!
天花
「でけぇな」
リヨーテ港、商船専用船着場。コウがジャーン!!と紹介した船は港で一番立派な船だった。
コウ
「そこそこ長旅になるからね。それなりの船にはしてあるよ」
天花
(…コイツやっぱりただの金持ちじゃねぇな)フム
コウ
「こっち来て部屋案内するよ。その後は船の中を案内してあげるね」
天花
「!あぁ。頼む」
コウ
「なんか嬉しそうだね」
天花
「オレ初めてなんだよ」
コウ
「船旅?」
天花
「ここまででけぇ船は初めてだし、オレちゃんと海を見るのも初めてなんだ」
天花は目を輝かせて少し興奮気味に話した。
コウ
「……ふふ」
はしゃいでると可愛いな…。
コウ
「そっかぁ〜!じゃあ荷物置いたら一番海が見える場所に行こう!」
天花
「!おぉっ/// 一番海が見える場所かっ///」
興奮を抑えきれない天花は小さな女の子のようにコウの周りをぴょんぴょん跳ねて回った。そんな天花の手を引いてコウは船へと乗り込んだ。
◈◈◈
サイキョウのお稲荷さま。 雪白@おっさん @yukishiro_ossan8369
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