『俺達のグレートなキャンプ151 ひたすら黙々と筑前煮を作るか…』
海山純平
第151話 ひたすら黙々と筑前煮を作るか…
俺達のグレートなキャンプ151 ひたすら黙々と筑前煮を作るか…
「じゃあ、筑前煮を作るか」
石川がポツリと呟いた。
いつもの「よーし!今日のグレートなキャンプは――ッ!」という雄叫びはない。拳を天に突き上げることもない。ただ淡々と、まるで「今日の天気は曇りだな」とでも言うような平坦なトーンで、石川は段ボール箱から野菜を取り出し始めた。
「...うん」
千葉が短く返事をする。いつもなら「すっげー!筑前煮!どんなグレートな筑前煮になるんですか!?」と目をキラキラさせて食いつくはずなのに。今日の千葉は段ボール箱から人参を取り出し、黙々と並べ始めた。
富山の脳内に警報が鳴り響いた。
ビービービー、異常事態発生、異常事態発生。
(え...?ちょっと待って...何これ...?)
富山は二人を交互に見た。石川は包丁を取り出し、まな板の上に人参を置いている。千葉はゴボウをタワシで洗い始めている。二人とも無言。完全なる無言。そして表情も普段とは違う。真剣というより...無表情?
(嘘でしょ...?石川くんが、あの石川くんが雄叫びなしで料理始めた...?しかも千葉くんまで!?千葉くんいつもなら「楽しそう!」「面白そう!」「ワクワクしますね!」ってうるさいくらい喋るのに...!)
富山の心臓がドクドクと早鐘を打つ。手のひらがじっとりと汗ばんできた。
石川はトン、トン、トンと規則正しく人参を乱切りにしていく。その手つきは完璧だ。でも、いつもなら「見ろ富山!この完璧な45度カット!まさに芸術!グレートぉぉぉ!」とか叫んでいるはずなのに。今日は完全無言。ただ黙々と、機械のように切り続けている。
千葉はゴボウの泥を丁寧に落とし、包丁の背でこそいでいる。その動作も無言。いつもなら「わぁ、ゴボウの香りってこんなに良いんですね!土の香り!自然!」とか感動しているのに。
シーン...
静寂が支配するテントサイト。聞こえるのは包丁がまな板を叩く音と、タワシがゴボウを擦る音だけ。あとは遠くで他のキャンパーたちが楽しそうに笑う声。それがまた、この異様な静けさを際立たせる。
(何...?何なの、これ...?二人とも様子がおかしすぎる...!)
富山の思考が暴走を始める。
(もしかして...喧嘩した...?石川くんと千葉くん...?でも二人とも仲良しだし...じゃあ何...?二人とも失恋...?同時に...?それとも...何か悪いものでも食べた...?いや、それなら具合悪いはずだし...)
「あの...」
富山が恐る恐る声をかける。声が震えている。
「ん」
石川が一瞬だけ顔を上げた。でもすぐにまた人参に視線を戻す。返事は一音節。
千葉は反応すらしない。黙々とゴボウを斜め切りにしている。
(ひぃぃぃ!何これ怖い!二人とも完全にロボットじゃん!感情がない!いつもの陽気さが微塵もない!)
富山の額に冷や汗が浮かぶ。手が震えてきた。どうしよう、どうしよう、と心の中で繰り返す。
「あ、あの、石川くん、千葉くん...コーヒー淹れようか...?」
富山が明るい声を作って言った。いつもならこれで場が和むはず。
「ああ」
石川が短く答える。
「うん」
千葉も短く答える。
そして二人とも作業を続ける。まるで富山の言葉が耳を素通りしたかのように。
(嘘ぉぉぉぉ!?普通ここで「富山ぃ!いつもありがとな!お前のコーヒーは最高だぜ!」とか「富山さんのコーヒー楽しみです!」とか言うでしょ!?「ああ」「うん」って何!?AI!?二人ともAIになっちゃったの!?)
富山は震える手でコーヒーセットを取り出した。ドリッパー、サーバー、フィルター、豆。いつもの手順。でも今日は全然落ち着かない。お湯を沸かしながら、チラチラと二人を盗み見る。
石川は人参を切り終え、ゴボウに取り掛かっている。千葉は切り終えたゴボウをボウルに移し、次はレンコンの皮を剥き始めた。
二人とも黙々と。ひたすら黙々と。
(やだやだやだ!これ絶対何かある!石川くん、何かあったんだよ!何か深刻なことが!それで千葉くんも気を遣って静かにしてるんだよ!そうに決まってる!)
富山の想像がどんどん暗い方向へ転がっていく。
(もしかして...石川くん、会社クビになった...?それか...親が倒れた...?いや、もっと深刻...?実は余命宣告...?だから最後のキャンプとして、静かに筑前煮を...?)
「ひっ!」
富山が小さく悲鳴を上げた。自分の想像に自分で驚いた。
「どうした」
石川が顔を上げた。でも表情は変わらない。心配そうでもない。ただ事務的に確認しただけ。
「な、何でもない!何でもないよ!」
富山が慌てて首を振る。お湯がぐつぐつ沸いている。慌ててドリップの準備をする。
石川はまた作業に戻った。レンコンを輪切りにし、酢水にさらす。その動作は完璧だ。無駄がない。でも温かみがない。
千葉は里芋の下茹で準備を始めた。鍋に水を入れ、火にかける。その横顔も真剣だ。いや、真剣というより...無機質?
トントントン。包丁の音。
コトコト。お湯が沸く音。
それだけ。会話はゼロ。笑い声もゼロ。いつもの賑やかさが嘘のように消えている。
(耐えられない...この沈黙...息が詰まる...!)
富山はコーヒーをドリップしながら、必死に話題を探す。
「あ、あの...今日、天気いいね...!」
「そうだな」
石川が答える。でも作業の手は止まらない。こんにゃくを包丁で格子状に切り込みを入れている。
「うん、いい天気」
千葉も答える。でも視線は里芋に向いている。アク抜きのために米のとぎ汁で下茹でする準備をしている。
(会話が続かない!全然続かない!いつもなら「天気最高ォォォ!グレートウェザー!」「キャンプ日和ですね!」って盛り上がるのに!)
富山は完成したコーヒーを二人に渡した。
「はい...コーヒー...」
「ありがとう」
石川がカップを受け取る。一口飲む。「うまい」と一言。そして、またすぐに作業に戻る。
「ありがとう」
千葉もカップを受け取る。一口飲む。小さく頷く。そして、作業に戻る。
(ちょっと、ちょっとぉぉぉぉ!?普通もっと何か言うでしょ!?「富山の淹れるコーヒーは世界一だぜ!」とか「このコーヒーで今日も頑張れます!」とか!味の感想は!?何も!?)
富山は自分のコーヒーを飲んだ。熱い。苦い。でもそれどころじゃない。心臓がバクバクしている。
「あの...石川くん...」
富山が意を決して声をかけた。もう我慢できない。はっきり聞かなきゃ。
「ん」
石川がチラリと顔を上げる。
「その...何か、あった...?」
富山の声が震える。怖い。答えが怖い。でも聞かなきゃいけない。
「...別に」
石川は視線を戻し、こんにゃくを一口大に切り始めた。
(「別に」!?「別に」って言った!?石川くんが!?あの何でもベラベラ喋る石川くんが「別に」って!?これ絶対何かあるじゃん!絶対!)
「千葉くんは...?何か知らない...?」
富山が千葉に視線を向ける。すがるような目だ。
「...別に」
千葉も素っ気なく答える。干し椎茸を水で戻す作業に集中している。
(千葉くんまで!?「別に」!?二人とも「別に」!?これ完全に何かある!口裏合わせてる!何を隠してるの!?教えてよ!)
富山の心が悲鳴を上げる。でも二人は何も言わない。ただ黙々と、ひたすら黙々と、筑前煮の準備を進めている。
石川はダッチオーブンを火にかけた。ごま油を垂らす。ジュワーッと音を立てて、香ばしい香りが立ち上る。
千葉は切った野菜を種類ごとに分けてボウルに入れている。人参、ゴボウ、レンコン、こんにゃく、里芋、戻した干し椎茸。手際がいい。でも無言。
(何これ...?夢...?悪夢...?いつもの騒がしいキャンプはどこ行ったの...?)
富山は自分の頬をつねった。痛い。夢じゃない。現実だ。この異様な静けさは現実なのだ。
「おーい、石川ー!」
その時、隣のサイトから声がかかった。常連キャンパーの田中さんだ。50代の陽気なおじさん。いつも石川の奇抜キャンプを楽しみにしている。
(田中さん!助けて!何か様子がおかしいの!)
富山は心の中で叫んだ。
「よう、田中さん」
石川が手を上げる。でも顔は向けない。ダッチオーブンに鶏肉を投入している。ジュワジュワと音を立てる。
「今日はどんなグレートなキャンプなんだ?いつも楽しみにしてるんだぜ!」
田中さんが笑顔で近づいてくる。
「筑前煮作る」
石川が短く答える。鶏肉を菜箸で返している。
「...え?それだけ?」
田中さんが首を傾げる。明らかに拍子抜けした様子だ。
「それだけ」
石川は淡々と答える。鶏肉に焼き色がついたら、野菜を投入し始めた。人参、ゴボウ、レンコン。
「あ、あはは...そっか...じゃあ、頑張ってな...」
田中さんが苦笑いしながら離れていく。その背中が「何だ、つまんねー」と言っているようだ。
(田中さんまで困惑してる!やっぱりおかしいよ、これ!絶対おかしい!)
富山は田中さんの背中を見送りながら、絶望的な気持ちになる。
それから三十分。
ひたすら無言の調理が続いた。
石川はダッチオーブンに調味料を加えている。醤油、みりん、砂糖、酒、だし汁。ジュジュジュと音を立てて、甘辛い香りが広がる。落し蓋をして、コトコト煮込み始めた。
千葉は二つ目のダッチオーブン用に野菜を切り始めている。また人参、ゴボウ、レンコン。黙々と、機械のように。
富山は...何をしていいかわからず、ただオロオロしている。コーヒーのおかわりを淹れてみたり、テーブルを拭いてみたり。でも二人は「ありがとう」と一言だけで、作業を続ける。
(もう無理...この空気...重すぎる...息苦しい...!)
キャンプ場の他のサイトからは、楽しそうな笑い声や話し声が聞こえてくる。バーベキューの匂い。子供たちの歓声。それなのに、このサイトだけが異様に静かだ。まるで葬式のような雰囲気。
「あれ...?石川さんたち、今日は静かですね...」
少し離れたサイトの若いカップルが、ヒソヒソと話している。
「いつもうるさいくらい騒いでるのにね...何かあったのかな...」
「喧嘩...?」
「かもね...」
その声が富山の耳に入る。
(やっぱり!周りも気づいてる!異常だって思ってる!)
富山は二人を見た。石川は落し蓋を少しずらして、煮込み具合を確認している。千葉は三つ目のダッチオーブン用の野菜を準備している。
二人とも、まるで修行僧のように黙々と作業している。
(これ...もしかして...お題が『黙々と筑前煮を作る』...?いや、でも、それなら最初に発表するはずだし...石川くんいつも最初に「今日のお題はー!」って叫ぶし...)
富山の頭が混乱する。理由がわからない。何も理解できない。
一時間が経過した。
一つ目のダッチオーブンから湯気が立ち上る。いい匂いだ。完璧に煮込まれた筑前煮の香り。
石川が落し蓋を取った。艶やかに煮えた野菜と鶏肉。美味しそうだ。でも、石川の表情は相変わらず無表情。いつもなら「見ろォォォ!完璧な出来だァァァ!」って叫んでるのに。
「できた」
ボソリと呟き、大きな保存容器に移し始める。
千葉は二つ目のダッチオーブンの仕込みを始めた。鶏肉を炒めている。やっぱり無言。
(もう...もう耐えられない...!)
富山の心が限界に達しようとしていた、その時。
「おい、ちょっと!」
隣のサイトから、今度は別の声がした。中年の女性、佐藤さんだ。
「何よ、石川さん!いつもなら昼頃から騒がしいのに、今日は全然声が聞こえないじゃない!心配したわよ!」
佐藤さんが心配そうに近づいてくる。
「すみません」
石川が謝る。でも作業の手は止めない。二つ目のダッチオーブンに野菜を投入している。
「体調でも悪いの?」
「大丈夫です」
「千葉くんも元気ない わね...富山さん、二人とも具合悪いの?」
佐藤さんが富山に視線を向ける。
「あ、あの...わ、私にも...わかんなくて...」
富山が泣きそうな声で答える。本当に泣きそうだ。もう限界だ。
「まあ、そう...大丈夫?みんな...?」
佐藤さんが心配そうに三人を見る。でも、石川と千葉は「大丈夫です」「大丈夫です」と短く答えるだけ。
佐藤さんは困ったように首を傾げて、自分のサイトに戻っていった。
(あああああ!もう!何なの!?教えてよ!二人とも!)
富山は心の中で絶叫する。
二時間が経過した。
二つ目の筑前煮も完成した。保存容器に移される。いい匂いがキャンプ場全体に広がっている。
三つ目の仕込みが始まる。
石川と千葉は、まるで工場のラインのように、黙々と作業を続ける。
(もう...もう...どうしたらいいの...)
富山は完全に途方に暮れている。コーヒーカップを握りしめ、ただ二人を見守ることしかできない。
周りのキャンパーたちも、チラチラとこちらを見ている。「おかしいよね」「何かあったのかな」「喧嘩?」「病気?」そんな囁きが聞こえる。
富山の心臓はずっとバクバクしている。不安と心配で押しつぶされそうだ。
三時間が経過した頃。
三つ目の筑前煮も完成した。テーブルの上には、大きな保存容器が三つ並んでいる。どれもたっぷりとした筑前煮で満たされている。
石川が火を止めた。
千葉が調理器具を片付け始めた。
二人とも、まだ無言。
(終わり...?これで終わり...?何の説明もなく...?)
富山が呆然と二人を見ている、その時。
石川が突然、大きく深呼吸した。
そして――
「よぉぉぉぉぉし!!!!」
雄叫びが響き渡った。
いつもの、あの、石川の雄叫びが。
「今日のグレートなキャンプのお題発表だァァァァァ!!!」
石川が両手を天に突き上げる。その顔は、いつもの快活な笑顔に戻っている。
「え...?え...?」
富山が目を白黒させる。
「今日のお題はァァァァ!『ひたすら黙々と筑前煮を作る』だァァァァァ!!!」
石川が叫ぶ。
「そして今ァァァ!完成したァァァァァ!!!」
「やったァァァァ!!!」
千葉も突然叫んだ。満面の笑みだ。
「最高にグレートォォォォ!!!」
二人がハイタッチする。パァン!という音が響く。
「...え...?」
富山の脳が処理を停止した。
「富山ァァァ!見てくれよォォォ!この大量の筑前煮!三つのダッチオーブンで作り上げた超大作だぜェェェ!」
「富山さん!すごいですよね!黙々と作るって、こんなに達成感があるなんて!」
二人がキラキラした目で富山を見る。
「...は?」
富山の口から、間の抜けた声が漏れた。
「『ひたすら黙々と』がポイントなんだよ!普段俺たち騒がしいだろ?だから今日は真逆!完全無言で筑前煮作り!これぞ禅の境地!グレートだろォォォ!」
「そうなんです!最初から最後まで無言!これが今日のお題だったんです!」
二人が興奮気味に説明する。
富山の中で、何かがプツンと切れた。
「ふざけんなァァァァァァァ!!!!」
富山の絶叫が、キャンプ場中に響き渡った。
「わああああ!?富山が怒った!?」
「え、何で!?グレートなお題だったでしょ!?」
石川と千葉が驚いて後ずさる。
「グレートじゃないわよ!!!私がどれだけ心配したと思ってるの!!!二人とも病気かと思ったじゃない!!!余命宣告されたのかと!!!」
富山が涙目で叫ぶ。三時間分の不安とストレスが一気に爆発する。
「え、余命宣告!?そんな深刻に捉えてたの!?」
「だって!あんたたち完全に感情死んでたじゃない!『別に』って!『別に』って何よ!!!」
「いや、お題だから!無言がお題だから!」
「最初に言いなさいよォォォ!!!」
富山の怒号が続く。
「あー...確かに...富山には言っておくべきだったかも...」
石川が頭をかく。千葉も「ごめんなさい...」と小さくなっている。
「もう!もう!あんたたち!次からはちゃんと説明してよ!」
富山がテーブルをバンバン叩く。
その騒ぎを聞きつけて、周りのキャンパーたちが集まってきた。
「どうしたどうした!?」
「喧嘩か!?」
「石川さんたち、大丈夫!?」
田中さん、佐藤さん、若いカップル、家族連れ。みんな心配そうに覗き込む。
「あ、みなさん!すみません!今日のお題が『ひたすら黙々と筑前煮を作る』だったんです!だから無言で!」
石川が説明する。
「...は?」
全員が困惑した顔になる。
「いや、だから、黙々と作るのがお題で...」
「意味わかんねえよ!」
田中さんがツッコむ。
「普通に作ればいいじゃん!」
若いカップルの男性もツッコむ。
「つーか、心配したんだからね!」
佐藤さんが怒る。
「すみませーん!でも、ほら!めっちゃ美味しそうな筑前煮ができたんですよ!」
千葉が保存容器を指さす。
確かに、三つの容器には、美味しそうな筑前煮がたっぷりと入っている。艶やかで、いい匂いだ。
「...ま、まあ、美味しそうだけど...」
「つーか、これ、多すぎない?」
「三人で食べきれないでしょ、これ」
キャンパーたちが容器を覗き込む。
「そうなんですよォォォ!だから!みなさんに配りまァァァす!!!」
石川が叫ぶ。
「グレートな筑前煮、おすそ分けだァァァ!!!」
「やったァァァ!!!」
千葉も叫ぶ。
「え、マジで!?」
「もらっていいの!?」
キャンパーたちの目が輝く。
「もちろんです!どんどん持ってってください!」
石川が小皿を配り始める。千葉も筑前煮をよそい始める。
「わあ、ありがとう!」
「いただきまーす!」
キャンパーたちが次々と筑前煮を受け取る。
「...あ、美味い!」
田中さんが一口食べて目を見開いた。
「本当だ!めちゃくちゃ美味しい!」
佐藤さんも感動している。
「これ、何時間も煮込んだだけあるわ!味が染みてる!」
「鶏肉も柔らかい!」
「野菜もホクホク!」
あちこちから感嘆の声が上がる。
「でしょォォォ!?三時間かけて黙々と作った甲斐があったぜェェェ!!!」
石川が胸を張る。
「グレートな筑前煮、大成功です!」
千葉もガッツポーズ。
富山は...疲れ果てた表情で、テーブルに突っ伏していた。
「はぁ...もう...好きにして...」
「富山ー!お前も食べろよー!めっちゃ美味いぞ!」
「富山さん、コーヒーもおかわりお願いします!」
「...はいはい...」
富山が力なく立ち上がる。でも、その口元には、小さな笑みが浮かんでいた。
(まったく...毎回毎回...振り回されて...でも...)
富山は二人の楽しそうな顔を見る。キャンパーたちも笑顔で筑前煮を食べている。
(...これが、私たちのキャンプなのよね...)
富山は小さくため息をつきながら、コーヒーを淹れ始めた。
「富山ァァァ!やっぱりお前のコーヒーは最高だぜェェェ!!!」
「次のキャンプも楽しみですね!富山さん!」
「...ええ、まったくね...」
富山が苦笑いする。
秋の夕日が、賑やかなキャンプサイトを照らしていた。
筑前煮の香りと、コーヒーの香りと、笑い声。
今日もまた、石川たちの「グレートなキャンプ」は、ハチャメチャに、でも確かに、成功したのだった。
「ところでさァァァ!次回のキャンプのお題、もう決めてるんだけど!」
「え、もう!?何ですか!?」
「『ひたすら黙々とおでんを作る』!!!」
「またかよォォォォ!!!」
富山の叫びが、夕暮れのキャンプ場に響き渡った。
キャンプは続く。
石川たちの、グレートでハチャメチャなキャンプは、これからも続いていくのだ。
【完】
『俺達のグレートなキャンプ151 ひたすら黙々と筑前煮を作るか…』 海山純平 @umiyama117
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