第32話:秋の祭りと幽霊屋敷

 極寒のクラート帝国での依頼を終えた俺達。

 報酬も貰ったが、サミダレさんの酒代と装備代で儲けにはならなかった。


 「ふう、このお酒熱いですわ~♪」

 「サミダレさん、口から火が漏れてるっす!」

 「サミダレさん、その火で芋を焼いて下さい」

 「焼き芋ですの、お任せあれ♪」


 妖怪屋敷の縁側、サミダレさんはクラートの火炎酒かえんざけを飲んでいた。

 俺とチカゲは落ち葉を集めて芋でも焼こうかとしていた。


 「甘くて美味しいですわ♪ 芋のお酒も懐かしい♪」

 「この芋、マンドラポテトって魔物なんすよね?」

 「ああ、俺達で言う甘芋あまいもと同じらしいがな?」


 西洋では魔物化した野菜が騒動を起こす。

 冒険者をして驚いた事の一つだ。

 焼き芋を満喫しつつ、物思いに耽る。


 「ご主人、次はどんな仕事を受けるっすか?」

 「そうだな、寒くない所でどうだろう?」

 「ええ、冬の温泉旅行の資金稼ぎもしたいですわね♪」


 次の仕事について語り合う、赤字ではないが稼ぎは欲しい。

 相談した結果、初心に戻るつもりでルーキーズポートに皆で向かった。


 「久しぶりっすね、この街も♪」

 「何やら賑わっておりますわね?」

 「ああ、祭りでもあるのかな?」


 石畳の通りを見回しながら、ギルドへと向かう。


 「いらっしゃいませ、お久しぶりです♪」

 「どうもです、その帽子は?」

 「錬金術師の仕事っすか?」

 「何やら飾りがちらほらと?」


 久しぶりに会ったミカンさん、黒い魔女のとんがり帽子をかぶっていた。

 ギルド内も魚とカボチャの飾りがされており、何処か浮かれていた。


 「はい、お祭りです♪ 豊漁祭りと収穫祭です♪」


 意味がわからなかった。


 「つまり、海と山のお祭りの同時開催っすね♪」

 「チカゲの納得力が凄いな」

 「お二人共、パンフレットがありますわ♪」


 サミダレさんがパンフレットを見せてくれる。


 「大地と海の夫婦神から賜る一大イベントねえ?」


 俺は記載された祭りの由緒を読む。


 「市場には山の幸と海の幸が集うっすね♪」


 チカゲは食欲の秋だ。


 「魚の仮面と野菜の仮面を被って踊るダンスパーティー♪」


 サミダレさんは、シュールな宴に思いを馳せてる。


 「そういうわけで、ギルドもお祭りしようで関連依頼が大量です♪」


 ミカンさんが壁を指し示せば、依頼書が大量に掲示されていた。


 「ご主人、依頼が選び放題っすよ♪」

 「いや、多すぎだよ! 他の人達も受けていてこの量か?」

 「ですわねえ、ご指名依頼とかございませんの?」


 俺が呆れる中、サミダレさんが告げる。


 「はい、皆様なら幽霊屋敷の討伐依頼がございますよ♪」


 久しぶりにミカンさんが俺達に指名して来る。

 いや、ギルドはどういう理由で指名してるんだろ?

 以前の護衛依頼はマホロバ人だからとか、依頼人が知り合いとかだったが?


 「幽霊屋敷っすか? 運が良いっすね依頼主さん♪」

 「霊の調伏、殿の得意分野ですわね♪」

 「まあ、呪術師の端くれだからな。 お受けいたします」


 俺は祭りの小遣い稼ぎの感覚で受ける事にした。


 「ありがとうございます、詳しい話は応接室で♪」


 ミカンさんについて行き、応接室で説明を受ける。

 ルミナス王国の貴族の別荘に幽霊が出るので退治して欲しいとの事。

 明日には依頼人の代理で執事の人が来るので、その人に従って欲しい。


 翌日、ギルドに現れたのは顔見知りだった。


 「おお、皆様でしたか♪ 宜しくお願いいたします♪」


 代理人は銀髪美青年のリチャードさんだった。

 俺達はリチャードさんについて行き、郊外の屋敷前に到着する。


 赤レンガの壁に囲われた大きめの御屋敷だ。


 「ふんふん、お屋敷全体が支配されてはなさそうっす」

 「原因は謎ですわね?」

 「まあ、まずは防護符だな。 リチャードさんもどうぞ」


 俺は呪符を生み出して配る。

 リチャードさんに解錠してもらうと、玄関に黒い魔力が溜まっていた。


 「邪鬼払いはお任せっす、ワオ~~ン♪」


 チカゲが鳴くと黒い魔力は弾けて消えた。


 「な、何と! 鳴き真似で魔力が消えた!」

 「犬族の鳴き声には霊や邪気を払う力があるっす♪」

 「西洋の相手にも通じましたわね♪」

 「うん、チカゲはありがとうな♪」

 「えへへ、でもヤバい悪霊級はご主人にお願いするっす♪」

 「ああ、任せろ♪」

 「殿、私のブレスも清められますわよ♪」

 「ああ、サミダレさんも頼りにしてます♪」


 犬の神の眷属と龍神、大抵の霊なら勝てる布陣だ。


 「うんじゃ、俺も浄化符っ!」


 銀色の呪符を生み出し、屋敷内の汚れを呪符の光で清めて消して行く。


 「ヨ、ヨウタロー様? その呪符はお幾らでお譲りいただけますか?」

 「すみません、売れるもんじゃないです」


 便利な術だが、色々と説明が面倒なのだ。

 掃除しながら探索をする中で出て来た黒い幽霊達。


 「行きますわよチカゲさん!」

 「お任せっす!」


 サミダレさんとチカゲが全身から発した光で、雑魚の霊達は消えていく。

 やがて最後に辿り着いた部屋は、ピアノが置いてあるダンスホールだった。


 「ここがボスの間ですね、サミダレさんとチカゲはリチャードさんを守って!」

 「「了解!」」


 俺達は、リチャードさんを囲むように戦闘態勢に入る。

 すると、ピアノがひとりでに鳴り響きホールの天井に黒い魔力が集まる。

 やがて、魔力は漆黒のドレスを纏った黒髪の少女の姿となった。


 「ここは私のお家よ! 出て行け!」

 「前の居住者か? 悪いがここはもうお前の家じゃない!」


 何でこの世に出て来たかはわからんが、敵である以上は倒す。

 少女の霊は黒い髑髏型の魔力を発射して来た。


 「甘いな、日吉丸ひよしまるっ!」


 俺が愛刀の名を叫び鞘から引き抜けば、刃が白く輝き魔力を霧散化させる。


 「……ひ、ひいっ! 何よその光、来ないで!」


 少女霊が怯えつつもこちらへ攻撃してくる。

 俺は、刀を振るい例の攻撃を霧散化させ続ける。


 「……終わりだ、天に帰れ! 浄化の一刀両断!」


 俺は刀を振るい、少女の幽霊を袈裟斬りにする。


 「……あ、ああ! 光が、光が見える♪」


 黒ドレスの少女は、白ドレスへと姿が変わり光の粒となって天に還った。


 「これにて一件落着、安らかに」

 「お安らかにっす」

 「お休みなさいませ」


 俺達は少女の霊を弔った。

 霊の消滅を確認した後、俺達は原因になりそうなものを探した。


 「原因は、このピアノではと思われます」


 俺は少女の魔力の残滓をピアノから感じ取り呪符で浄化した。


 「確かに、このピアノは購入時からあったとは聞いておりましたが」

 「ご心配でしたら改めて供養されることをお勧めします」


 俺の言葉にリチャードさんが頷く。

 かくして、秋の祭りの時期に起きた不思議な事件は解決したのであった。

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あやかしチャンバラセイバーズ~半妖怪の若殿様、自分を追放した勇者パーティーよりも楽しく冒険して成り上がる~ ムネミツ @yukinosita

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