世界を作る神様は

雨鋭 賢

創造したモノの失敗

 さあ、を開始するとしよう。

 まずは、どのような世界を作ろうか。

 うーん、前に完成した世界と同じようなものを作ろうか。それとも、もっと他の世界を作ろうか。

 そうだ! 今回はなるべく長く持たせたいな。前回はすぐ壊れてしまったし、どうせならずっと続くモノを作りたい。

 …ならば、そうするか。

 ええっと、初めにXXXの創作。

それによるビックバンを確認。

複数の元素を確認。よって、原子の性質を設定する。

また、原子の存在確認により、電子の存在を確認。電子の性質を設定する。

そして、原子と電子から重力の生成の開始。完成を確認。

重力の存在からできた惑星の誕生を確認。

惑星が増加により、元素の急速な増加を確認。

惑星の爆発を確認。

それによる衝撃でガスを圧縮させ、惑星『太陽』を生成する。

それとともに、惑星『地球』を生成する。

………できた。完成だ! 

 今回は上手くいったな。世界の原理がきちんと保たれている。何度も何度も、小さなミスや大きなミスで世界を壊してきたが、今回はミスをせずに作ることができた。

 大変なものだな。少しの間違いだけで、世界が壊れてしまうものだから、作っている間はずっと気を張る。といっても、設計して計算をするだけの作業なんだが、これだけの計算をすべてミスなくこなしていくというのはとても緊張感のある作業だ。

 そう、世界を作るのには多くの計算が必要なのだ。世界をどのように設計するかを決め、その設計に沿うように計算し、世界の原理を作り上げる。そして、世界を完成させるのだ。

 この過程で行う膨大な計算のすべては、一つ一つが世界の欠片だ。だから、欠片のどれにもミスがあってはならないのだ。少しでも計算ミスをすると、世界の欠片が世界の原理から外れて、そのまま世界が崩壊してしまう。

 これまで何度も計算ミスをして世界を壊したが、流石にここまで来たらミスはないだろう。だが、万が一のために確認はしておくか。

 ああ、やはり美しい。これが見たかったのだ。すべてが私の作った世界の原理に従って動いている。この高揚感はたまらない。この世界をずっと見ていたい。この世界の移り変わりを観察していたい。世界の動物がどうやって私の作った世界の原理とともに生きていくかを知りたい、考えたい。

 だが……ああ、まただ。またミスがあった。何度やっても、ミスは尽きない。今回は、長持ちしない世界を作ってしまったようだ。考えるたび、この先に出てくる環境問題が次々と浮かんでくる。私が作った世界の原理に従っている故に、このような問題が出てくるのか。この世界は計算ではなく設計を間違えたな。私は永遠に観察して、考えることのできる世界を創りたいのだが・・・。

 失敗ならこの世界はいらないし、壊してしまおう。だが、面倒だな。毎度毎度ミスするたびに世界を壊している。そろそろ勝手に壊してくれるモノがほしい。

 そういえば、アレがあったな。ちょうどいいから試すとするか。

 ……できた。ちゃんと世界を壊してくれるだろうか…。まあいい。このお試しが失敗したらまた計算しなおせばいいだろう。

 では、次の世界の創造にとりかかるとするか。次は永遠に見ていられる世界にしよう。ミスがないよう気を付けなければ。


 設計を間違えてしまった世界に落とされたモノ。それはやがて成長し、科学を発展させた社会を築き、自身のことを「人間」と呼ぶようになる。そう、創られたのは。つまり、なのだ。

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