空白
まめ電球
空白
最近の傘は本当に可愛く魅力的なものが多いと思う。わんぱくな少年はよく傘を振り回したり風に耐えられなかったりしてすぐに壊している。特に小さな子供たちは傘をさせることが特別で楽しく感じていたのだろう。ただ、すぐに壊してしまうから母のおさがりや少し地味なものを買ってもらうようになる。それで段々と傘にも雨にも興味を失っていくのだ。
生暖かく気持ちの悪い雨の日。みんなと同じようにダルがって、傘をさしながら下を向いて歩いていた。濡れた靴と真っ黒な地面、小石が足にあたり軽い音を立てて暗闇に落っこちていった。とにかく早く家に帰ろうと前を向き直してみれば遠くにまだ新しいランドセルとたくさんの荷物を抱えて鮮やかな黄色の傘をさした子どもが見えた。ぶかぶかの長靴を履き水たまりに入ってみたり、灰色の空を見上げて雨の雫を食べようとしていたり。その子たちの周りだけ雲の日差しから漏れた日差しに優しく包まれていた。無垢で柔らかそうな頬を赤らめて、瞳はキラキラと輝いているように見える。
久しぶりに見た子供たちに感化されて、ふと思い出した。
どくどくと心臓が早鐘を打つ。
さっき転んだ傷から血が、全身から汗が噴き出て止まらない。
息を吸うたびに土と草と湿気と人の匂いが入り混じってくさい。
灰色の街が同じ色に染め上げようとこちらをにらんでいるよう。
大きな建物の間を縫うように走り抜ける。
ゴミも人も区別がつかないほどにはやく、はやく 消えてしまう前に
何を追っかけていて、なにがそんなに楽しかったのかは思い出せない。でも確かなのは必死だったこと。ガキだった頃はこんな街クソ喰らえだと思ってたし、こんななんでもない記憶大したことじゃないはず。大したことじゃないはずなのにどこが胸騒ぎがする。忘れてはいけないような、もう少しかけがいのないものだったような気がする。淀みきったこのこころから消えてしまった空白を見つけてみたくなった。
空白 まめ電球 @usagi-1191
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