第6話:ポンコツで可愛らしい監視役(正)

「うぅ〜……!」


 ……えっと。

 僕を睨むこの子は、一体誰なんだろう?

 小柄な身体に対して大きめな……猫耳? をぴょこぴょこと動かす青髪の少女を前に、僕は若干声をかけたことを後悔した。


 僕のを知りたいみたいだけど……それに、国王様に遣わされた監視役って……?

 えっ、僕監視されてたの?


 それにしても……。


「むむむ……」

「な、なんですか……!?」


 ――こんな可憐で可愛い女の子が、国の諜報員とは……。


「か、可愛いって――!?」


 ……んや。年齢も性別も関係なく、能力さえあれば起用される。

 それがこの世界の常識か、はたまたルーくん監督の采配か……。

 まっ、僕が考えても仕方ないことかなぁ~。


 ……――って、ん? 今なんか違和感が……。

 僕、


 


「――私をただの子供と思ったら、後悔しますよ」



 

「……え」


 突然強く言われて、思わず首を傾げる。


 んん? そんなつもりなかったけど、顔に出てたかな……?

 ……だとしたら、勘違いさせてしまってるみたいだ。

 とりあえず、一旦謝って――


「とりあえずの謝罪は必要ありません。顔なんて見ずともアナタの思考はお見通しです」

「えっ!?」


 見透かされた――!?


 やっぱりそうだ。さっきから感じてる違和感の正体。

 僕に、彼女のような悪癖はない。だというのに、口にしていない言葉まで全て、

 考えられる可能性として、一番可能性が高いのは――

 


 彼女は恐らく――読心術が使える!



「ふっふっふ、そうです。それが――」


 い、一体どれ程の研鑽を積んで、ここまでの卓越した技術を――!?




「――――それが、私の、“心象透見ミンドグレア”!」

「いや魔法なんかーい」

「属性は“特殊”です!」

「属性なんですかそれ?」





 

「えっと、とりあえずこれまでの話をまとめると……貴方は僕の“監視役”で、心を読む魔法を使って僕について調べ回ってたってことでいいんでしょうか?」

「な、何故そこまでバレてっ!?」

「全部口から漏れてましたよ」


 まあでも確かに、『嘘が吐けない特殊能力者』と思えば、あのルーくんさんなら側に置きそ〜……。

 あの人ならこの子、いくらでも手玉に取れそうだもん。


 それに……さっきはついツッコんじゃったけど、『心を読める魔法』なんてすごい才能だ。敬意を持って接さなきゃ。

 

 監視云々についてはまだ疑問が残るけど……。


「……ところで、お名前を伺っても……?」

「へっ、な、名前ですか……?」


 耳がぴーんと立ち、目が泳ぐ彼女。

 分かりやすく動揺する彼女が落ち着くまで、ゆっくり待つ。

 彼女は少し考え込んだかと思うと、パッと顔を輝かせ、すぐに平静を装って答えた。


「……ミア」

「ミアさんですか」


(ふん……監視対象に名前を知られるわけにはいかない。ふふ……咄嗟に思いついたにしては、なかなかいい


「あ、偽名だったんですね。諜報員っぽ〜い」

「はぅ!? また口が勝手に!?」

「あはは……」


 本当に難儀な癖をお持ちだなぁ……。

 んまあ、それはそれとして……――


「――それで、本当のお名前は?」

「…………ルゥナ、です……」


 観念したように呟く彼女。

 ぐぬぬ、と睨む彼女に、どこか親しみを覚えた。


「ルゥナさんですか。お名前も可愛らしい」

「やめてください、!」


 おっとっと……怒らせてしまったみたい。顔が真っ赤だ。

 褒め言葉のつもりだったけど、見知らぬ男から言われたって嬉しくないよね……。


 

 ……『見知らぬ男』? そういえば……。


 

「えーと……ルゥナさんは、僕の監視役なんですよね? これからも僕の側で見張ってないといけないんですか?」

「当たり前です。……気を抜かないことですね。少しでも怪しい素振りを見せれば――!」

「わぁ、ルゥナさん大変ですねぇ……」

「……んえ?」


 どういうわけか、僕の見張り役なんかを任せられて。

 なかなか難しそうだけど、ちゃんと休憩は取りながら、無理はしないでほしいなぁ。

 

「頑張ってください! は、ちょっと変かな……えっと……これからも、よろしくお願いいたします」

「えっあっはい。よろしくお願いします……?」

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甘いようで甘くない、ちょっぴり甘い異世界転生 御音夢セルハ @nemuo_celha

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