違いがわかる男

違いがわかる男でありたい。


眉間にシワを寄せ、口角のみ上げニヒルに笑う。


勿論、着るのは襟を立てたトレンチコート。

深くハットを被るのは、男の優しい目元を隠すため。


居酒屋で、タオルで顔を拭きながらビールなんて頼まないぜ。静かなBARでウイスキーを葉巻と共に楽しむ。


朝は朝食の代わりに、深煎したお気に入りのコーヒー豆を丁寧に挽き、ゆっくりとコーヒーを入れる。コーヒーの苦味が目を覚まさせてくれる。


くぅ〜!カッコいい〜!!ダンディ〜!!


こういう生き方に憧れる!


が現実は厳しい!


お酒苦手だし、ブラックコーヒーを飲んではいるがぶっちゃけ雪印の紙パックコーヒーが一番好き。


ムカつくもんはムカつくし、本当は家でゲームして過ごしたい。


多分僕は大人になりきれてないアダルトチルドレン。だから「大人」に憧れる。


違いがわかる男になりたい!それが僕の大人の理想像!


でも何の違いがわかれば大人なのだろうか…そう考えた時、やはりコーヒーなのか?


数年前、某有名オシャレカフェで特別なコーヒーを頼んだことがある。


物凄くうる覚えなのだが、当時で一杯2000円くらいするプレミアムなコーヒー。


特別な豆を専用のコーヒーミルで挽くらしく、凄く美味しいと笑顔がキュートな店員さんがオススメしてきた。


基本的にカッコつけな僕は


「じゃぁそれ貰おうかな」といつもの3割増しで声を低くし答えた。めちゃくちゃチョロい客である。


何やら特別席的な所に案内され、目の前で豆や挽き方の説明をしてくれるが、既に店員さんが先程のキュートな店員さんから、爽やかイケメンな店員さんにチェンジしていたため、僕の興味はぶっ飛んでいってしまった。


挽いた豆を僕の目の前に差し出し、香りを楽しめと指令が!


確かにいい香りがするが、慢性鼻炎なんでよくわからん!


とりあえず「凄くフルーティーな香り」と答えておいた。店員さん、嬉しそうだったんで正解っぽいな。


ゆっくりゆっくり淹れてくれたプレミアムなコーヒーを飲む…。


猫舌だからフーフーしたいけど、そんなのダンディじゃねーから熱いのを我慢して飲む!


熱い!マジ熱い淹れたてコーヒーだもんね!熱すぎて味わからん!


ただ、目の前で目をキラキラさせながら、爽やかイケメンが感想を待っている。


「鼻から抜けるフルーティーな甘みと嫌味のない苦味が合いますね」と感想を言うと、「そうなんですよ、ありがとうございます」と超笑顔で返答が!よし!合ってた!


ぶっちゃけ全く違いがわからなかった…。


違いのわかるダンディなジェントルマンになれる日はまだまだ遠い。


終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まぁまぁ無情 モズ @mozurock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ