背中で語れ
名言とは、世の真髄を表した言葉。
一言で読む者・聞く者の魂を揺さぶり歓喜させる事ができる言葉。
あぁ、どうも。申し遅れました。私、名言収集家のコレクターモズと申します。
今日は皆様に私が集めた素晴らしい名言…とは言っても世に出る事の無い、普段の生活から出た名言をご紹介しましょう。
時は2012年。世間はザワついていた…。
そう…エヴァンゲリオン新劇場版:Qが公開されたのである。
エヴァQを観たことがある人はわかるだろうが、まぁザワつく訳である。
観たことない人に簡単に説明すると、観た人の多くが「テメェふざけんな!」と監督にブチギレていた。ブチギレていない人は「これがエヴァだよね」とニチャニチャドュフドュフしていた。
そんな時代が2012年だった。
かく言う僕も、フザケンナ族の一員ではあったが、折角だしネットで色々な考察を読み漁っていた。
まぁ読み漁っても意味不明。何となく説明出来るようになったが、これもう一回観なきゃ分かんねーぞとなった。(結論を言うと2回目観てもよく分からなかった。)
そんな折、友人のSから「エヴァ観に行かね?」とお誘いが。僕は二つ返事でオッケーし、絶対混乱すること、映画終わりに僕に考察させて欲しいことを伝え、Sも「そうしてくれるとありがたい」と了承してくれた。
地元のシネコンのレイトショーで観た僕達。
仕事そっちのけで考察サイトを見漁り、知識だけはつけてきた頭でっかちな僕と、初見のS。
映画終了後にSが言った言葉は「モズいてなかったらブチギレてたと思う」だった。
劇場から出た時から僕の説明&考察が始まった。
このシネコン、地元のソコソコ大きな商業施設内にあり、バカでかいTSUTAYAが24時間で営業していた。
流石にレイトショー後はどの飲食店も閉まっていた為、自ずとTSUTAYA内をウロウロ歩き回りながら僕の見解を話していた。
ただ、僕は気付いていた。
劇場から出て、僕の見解を語りだした瞬間から、知らないオジサンが付いてきていることを!
多分オジサンも全く意味が分からなかったのだろう…わかる!わかるよオジサン!
熱く見解を話す僕、リアクションたっぷりに聞いてくれるS、その向こう側で静かにウンウンと頷き時折納得したかの様に天井を見上げるオジサン…。
何だこの構図www
小一時間くらい歩き回った所で僕の考察はクライマックスを迎えていた。
時間は0時をとうに回っている。まばらな客、レジにしかいない店員。
そう、確実に僕達の周辺が、その日のその時間で日本で一番熱い場所であった。
考察終了後、僕はオジサンに友情すら感じていた。
一声かけて、この楽しかった考察も終わりにしよう…そう思い僕はオジサンに声をかけた。
「っっって事なんですよー」と。
超笑顔の僕、目が点のS、声を上げてびっくりしているオジサン…。そうここが日本で一番熱い場所。
びっくりしすぎて足を止めるSとオジサン。動きがリンクしてんじゃねーか。
僕とSの視線がオジサンに注がれる。
5秒程の沈黙の後、オジサンが口を開いた。
「な…なるほどね!」
シンプル!すごくシンプルな返し!
超笑顔の僕、呆気にとられるS。
オジサンは僕達と離れ颯爽と去っていった。
去り際に右手を高く上げ、人差し指をクルクルさせながら去っていった。
あれはオジサンなりのア・リ・ガ・ト・ウのサインだったのだろう。
オジサンの背中が「楽しかったぜ」と言っているようだった。
オジサンが去った後にSが「幽霊かと思った」と物凄い名言をはいた。
もし幽霊だったら、急に話しかけてる僕がヤバい奴になるだろうが!と思ったが、今はオジサンの背中を見守りたい気持ちでいっぱいだった。
今回の名言
「な…なるほどね!」
心の底から納得し、心の底からびっくりしたオジサンが放った名言
「幽霊かと思った」
そう言えばコイツ天然だったと思い出させてくれた名言
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