おまけ

黒崎の誕生日

 今日は十一月九日で日曜日。

 そう、実は今日は黒崎の誕生日なのだ。


 ―――正直に言います。さっき、思い出しました・・・。


 なんも、プレゼント買ってないよ…。思い出しただけいい方なんだろうけどなんか用意するべきだよね?でも急に行ったりしたら迷惑だよね。どうしよ・・・。と、とりあえずプレゼント買いに行こう!


 赤城さんは、急いで靴を履いて外に出た。最近急に寒くなってきたので厚着をして外に出る。夏がバカみたいに熱いと、冬になった瞬間急に寒くなるのは間違いじゃないはずだ。


 とりあえず、近くの百貨店に来ていろいろ見て回る。でも、黒崎の好きなものとかあまりわからない。付き合ってからまだ全然時間が経ってないうえ、黒崎と出会ったのが高校生になってからだからマジで黒崎のことを知らない。


「…こういうのは、つけなそ」


 ネックレスとか、ピアスはたぶん好みじゃない。身に着けるならもう少しキラキラしてない地味目で実用的なのが良いはずだ。時計とか・・・って適当に思いついたけど結構ありかもしれないっ!


 赤城さんはすぐに同じ百貨店内にあるはずの時計店に足を運んだ。

 でもすぐに壁にぶち当たった。そう、時計全く知らない。


 スマホを見れば時計があるし、時間を知りたくて腕時計を見ることなんて本当に少ない赤城さんは、腕時計どころか時計の何がいいのかわからない。

 強いて上げるなら、デジタルの数字が出るだけの時計よりもアナログの方が本能的な感じで時間が分かりやすいということくらいだ。


 お店に入って十分くらいが経過した。

 それでもなおこれだ!っていうようなものが見つからなくて悩んでたらお店の店員に話しかけられた。


「どのようなものをお探しですか?」


 赤城さんは、服屋でよくあるような感じで店員に話しかけられてもなんとも思わない。どちらかと言うと聞かれたら答えるし、なんならそのまま一緒に服を見る。だから今店員に話しかけられてちょうどよかった。一緒に探してもらえばいい。


「派手じゃなく、実用的な腕時計を探してます。」

「わかりました。いくつか候補がありますのでご覧になられますか?」

「いいですか?お願いします。」


 時計に関しては間違いなく私よりも店員の方が詳しいはずだ。


 赤城さんは店員の案内に従ってついて行ったら、いくつか時計を出してきて候補を見せてくれた。

 どれもいい感じの値段がついてるけど手を出せない金額というほどではなく、黒崎へのプレゼントにはちょうどいいだろう。


「恋人へのプレゼントですか?」

「そうなんです」

「いいですね~!やはりプレゼントはみんな派手だったり新しい何かを選ばれることが多いですが、手首で小さく輝く腕時計や仕事や学業で使うペンなどの小さい道具こそ、誰かへの贈り物にふさわしいと思うんですよね・・・残念ながら理解されないんですがね?」

「――わかる気がします」

「本当ですか?嬉しいですね!」


 少しだけわかる気がする。私はどちらかというとプレゼントは化粧品だとか、アクセサリーだとかキラキラしてるものをもらうことが多いけど、実際に黒崎がそうだけど、黒崎といるとそれよりももっと実用的なものを持ってた方がいいと感じる。


 私が贈った時計を黒崎が付けてくれたら絶対に私はうれしい。束縛するわけじゃないけど、私のものだって証明になるから・・・。


「これにします」

「はい、ありがとうございます!」


 黒色のバンドの装飾が少ない、大きくもなく小さくもない、本当に時間を知るためだけに作られたであろう時計。

 久しぶりにした大きな買い物は小さくて地味な時計。でも赤城さんは良いものを見つけられて、とても満足していた。



 時計を買った後すぐに赤城さんにラインをして家に行くことを伝えた。

 家の前の呼び鈴を鳴らすと、黒崎ではなく黒崎姉が勢いよく歓迎してくれたが、後ろから黒崎がやってきて黒崎姉を家から追い出すと代わりに私を家に案内した。


「急にどうしたの?嬉しいけど…」

「その、忘れてたわけじゃないんだけどね?」

「うん。え、別れる?」

「わ、別れないよ!ちがくてさ、今日、黒崎の誕生日だったのを思い出しまして・・・。」

「ん、確かに今日だね・・・。忘れてた。」

「プレゼント買ってきた。気に入ってくれるかわからないけど、なるべくかっこいいの選んだから、絶対に似合うはずです。」


 そう言いながら慎重にプレゼントの時計が入った箱を渡す。丁寧にラッピングしてくれたその箱を受け取った黒崎は、予想通り丁寧にラッピングを解き箱のふたを開けた。


「おお、時計だ~。かっこい。」


 箱からゆっくりと腕時計を手に取った黒崎は左手首に腕時計を身に着けて私に見せてきた。


「どう、似合う?ふふっ、めっちゃかっこいいんだけど…ありがと~赤城さん。」

「似合ってるよ」


 こんなに喜んで、こんなにしゃべってる黒崎を久しぶりに見た。たぶん黒崎は今興奮してるんだと思う。それにしても、喜んでくれて本当に良かった。


「ね、これからさ買い物行くんだけど一緒にいく?デート、最近行けてなかったし」

「いいよ」

「やった。早速この腕時計付けてこ」


 黒崎は、いつも見せないニコニコの笑顔で腕時計を見つめながら私と一緒に買い物に出かけた。途中でプレゼントの腕時計を買った店の前を通り、私に話しかけて来た店員とぱっと目が合ったので手を振ったら笑顔で手を振り返してくれた。



=======


このエピソードで登場した腕時計はシチズンのBV1120-15Lという時計をモデルにしました。

なぜって?私が父の日に贈った初めてのプレゼントだからだっ!


なお公開日である今日11月9日は私の誕生日でもある。おめでとう!ありがとう!

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ただイチャイチャするだけの二人 しずく @tokishizu

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