さすが「金賞」

 街外れの細い路地にある喫茶店、すのうどろっぷ。
 客のいない店内で、マスター矢上は今日も静かに豆を挽く。
 いつも物腰柔らかな彼には、アルバイトの心春も知らない姿があって――――

 タイトルにあるように、「同じプロットで書いてみよう!」という企画で生まれた短編であり、金賞受賞作なのだとか。
 もちろん企画主様は作者様とは別。
 まったくの他人が考えた設定から書き上げられた作品ということなのですよ。

 いやぁ……こんな風に作れるのですね。

 おいしそうな賄い、お店の雰囲気、事件と戦闘、二人の語らい。
 地の文から場の空気が匂い立つのは言うまでもなく、時の経つ速度さえもがコントロール下におかれています。
 プロットを作るものの膨らませ方に頭を悩ませるレビュワーにとって、目からウロコの連続でした。

 本作の魅力はそこだけではなくて、矢上と心春のキャラクター性がツボでした。
 もっと会話を聞いてみたい、もっと過去を知りたい。

 オススメいたします。