イントゥ・ザ・サイレンス

吉城あやね

イントゥ・ザ・サイレンス

 「うるさい。うるさい。お前ら、全員、どっかに行っちまえ。」


 昨日放った、何気ない一言だった。まさか、本当にいなくなるとは。

 朝起きると、俺以外全員死んでいた。アオタも、マスキも、ケイも、ナホも。孤児院の仲間が、揃いも揃って、みんな仲良くお陀仏かよ。

 ざわざわ騒がしかった心が、一気に空っぽになってしまった。昨日、マスキと喧嘩したのが、最後になってしまうなんて。



 「全員、どっかに行っちまえ。」

 その言葉が口をついて出た瞬間、オレにツキが回ってきた。前々から気に食わなかった。お前と双子として生まれるはずだったオレがまさか、お前に吸収されちまうなんて。オレは、お前が、お前の意識が、精神が、のうのうと生きていることが悔しくって仕方がないのだ。時々、意識を奪って悪さをするくらいのことはした。だが、物足りなかった。これといった、何かがなかった。

 こうしてオレは、俺が大事にしているものを壊していった。順々に。ナホはか弱かったから、比較的殺りやすかったな。


 さあ、俺よ。せいぜいこう思うと良い。


 「俺のせいだ。」


 オレはもう、満足して眠ることができる。この永い静寂の中で。未だ生まれぬ魂のように、今度は1人の人間として目覚める瞬間を夢見て。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イントゥ・ザ・サイレンス 吉城あやね @ayanen0516

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説