怪異とは、まさにそういうモノであろうか。
- ★★★ Excellent!!!
とても端正な本格怪異譚を目にして、実は
驚いている。こんな話に出会えるとは
思っていなかったからだ。
短い掌編に怪異の本質がぎっしりと
詰まっている。
いつも茶飲みがてらに集まる仲間が、或る
時、一人の老爺を連れて来た。
見掛けない顔だったが、穏やかな彼の
参入を誰もが快く認めていたが。
あんな人、この近所にいただろうか?
そんな一点の疑問が更なる謎を、そして
不穏な空気を齎してゆく。
彼が来て以来、いつの間にか見た事のない
人が混じる様になる。年嵩であったり
若かったり、男であったり女であったり。
杳として素性の知れない者達が混じっては
橋の向こうへと帰って行く。
そして物語は終幕へと。
様々な憶測が、読み手の心の中に去来
するだろう。
そこに怪異は在ったのか。それすらも
分からない。けれども間違いなくソレは。
怪異とは、本来こういうものをいう。