怪異とは、まさにそういうモノであろうか。

とても端正な本格怪異譚を目にして、実は
驚いている。こんな話に出会えるとは
思っていなかったからだ。
 短い掌編に怪異の本質がぎっしりと
詰まっている。

いつも茶飲みがてらに集まる仲間が、或る
時、一人の老爺を連れて来た。
見掛けない顔だったが、穏やかな彼の
参入を誰もが快く認めていたが。

 あんな人、この近所にいただろうか?

そんな一点の疑問が更なる謎を、そして
不穏な空気を齎してゆく。
彼が来て以来、いつの間にか見た事のない
人が混じる様になる。年嵩であったり
若かったり、男であったり女であったり。
杳として素性の知れない者達が混じっては

橋の向こうへと帰って行く。

   そして物語は終幕へと。

様々な憶測が、読み手の心の中に去来
するだろう。
 そこに怪異は在ったのか。それすらも
分からない。けれども間違いなくソレは。



 怪異とは、本来こういうものをいう。