第3話 ワタクシ遂に出かけますわ
ハーヴァー公爵はどうやらミトーク公爵領で騒ぎを起こし、領民の不安も守れぬ不甲斐ない領主というレッテルをお父様に貼るおつもりらしいですわ!
そんな事は例え天が許したとしてもワタクシが許しませんわっ!!
ワタクシはスケサブロウとカクベエ、オギンを連れてハーヴァー公爵領に乗り込む事に致しました。
供連れが三人だけでは心許ないとお祖父様、お祖母様に言われましたけど、ワタクシは
「心配要らなくてよ、タリスにナミエ。ワタクシは自分の身は自分で守れるし、スケサブロウ、カクベエ、オギンがいれば怖いものなんて何も無いわ!」
そう笑って言って旅に出ましたの。世直し旅の始まりが公爵領なのは幸先が良いですわ。お父様と同じ爵位でありながら悪意ある者にワタクシの杖が閃きますわよ!
ハーヴァー公爵領までは徒歩で十八日ほど…… けれどもそれは大人の足の場合ですわ。ワタクシの足だと三十日ほどかかると見ておりますわ。急ぐ旅ではありますけれども、仕方がないと諦めましたわ。
何故馬車を使わないのかですって!? 偉大なる
そうして歩き始めて五日目に泊まった村にて遂にワタクシは見つけましたの! ヤシチが居ましたやーっ!!
ヤシチはつまらない小悪党のような真似をしておりましたのでワタクシが直々に懲らしめてやりましたわ。そして、仲間になりなさいと伝えましたの。
最初は「俺の名前はヤシチじゃねぇっ!!」なんて強がりを言ってましたけれども、どうやらオギンの色香に参ったようで、仲間になる事を了承してくれましたわ。けれどもヤシチは遊軍ですので、私たちと離れて先にハーヴァー公爵領に入って下調べを頼みましたわ。
「へへっ、お嬢、任せておきなっ!」
うーん、颯爽と消えたヤシチは中々のものですわね…… 後はトビザルとオキヌを見つけなければ。まあ、今回の旅で見つけられなくても何処かで必ず出会う筈ですわ。
そうしてまた旅を再開したのですけど…… マズイですわ。この村にはハチベエが居りますの。私はスケサブロウに言って直ぐに出立しましたわ。今夜は野宿になりそうですけどここでハチベエを仲間にしてしまえば要らぬ苦労を強いられてしまいますわ。
けれども…… 出立しようとしたその時に間が悪い事に役人に連れていかれそうな美しい女性が周りに助けを求めておりましたの。
「ど、どなたかお助け下さい! 私は夫がいる身です。このお役人は私を無理矢理!!」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ! お前はクレル街の街長様に見初められたんだ! 黙ってついてくれば良い目が見れるんだからよっ!!」
「嫌です!! 私を離して下さい!!」
そこにハチベエが突っ込んでいきます。
「おいおい、娘さんは嫌がってるじゃないか! やめねぇ!」
と言って前に出た途端に他の役人に打ち据えられて地面に押さえつけられるハチベエ。
全く、正義感だけは強いのですから…… 私はスケサブロウとカクベエ、オギンに目配せ致します。
「少し待つのだ、クレル街の街長と言えばガーダン殿であったな。ガーダン殿がそちらの娘さんを本当に連れて来いと申したのか?」
庶民の身なりをしていても言葉遣いで貴族である事を分からせるスケサブロウ。さすがですわ。
「何だ、あんたは? そうだよ、ガーダン様がこの女に目を付けたんだよ! 何処の誰か知らないが余計な首を突っ込んでくるなよ!」
全く、なんという事でしょう。ここはミトーク公爵家の寄子であるキッシュウ伯爵領ですわ。その伯爵領の村でこのような事がまかり通っているなんて。
「お待ちなさい! いくら街長の命令とはいえ既に婚姻されてる方を連れて行くなんて無体な真似は法で禁じられている筈よ! そんな事は許されませんわっ!!」
スケサブロウの前に出てワタクシがそう宣言致しますと役人は鼻で笑ってきました。
「ああ、そうかい、そうかい。よく見りゃ嬢ちゃんも可愛らしい顔をしてるな。こりゃガーダン様のご子息に喜ばれそうだ。ついでに嬢ちゃんも連れて行くとしよう!」
「下がれ下郎!! スケさん、カクさん、懲らしめてやりなさい!!」
「ハッ!」「ハハッ!」
そして木っ端役人など三分もかからずに無力化したスケサブロウとカクベエは懐から印籠を取り出して、決め台詞の「控えおろう!」を言いましたわ。
さすがにここでは皆がハハァーッって頭を下げてくれましたわ。
最後まで問題を解決する為にワタクシは寄り道をしてクレル街とキッシュウ伯爵領都まで行き悪を完全に懲らしめてから旅を再開致しました。
その後の村の子供たちの間では「下がれ下郎!」が流行っていると風の噂が流れて聞こえて来ましたけれどもきっとタダの噂話ですわね。
そしてやはりというか何というか…… 最大の懸案事項が人の身となってやって来ましたの。
「ご公女様の正義に俺は惚れた!! どうか供の一人として連れて行って下だせぇ!!」
「ハチベエ、あなたはうっかりさんだからちゃんとスケサブロウやカクベエの言うことを聞くのよ!」
(旅は危険ですよ。あなたは弱いのですからこの村で大人しく過ごされては?)
「ハッ、ハチベエ? いや、俺の名前はロックスだけど……」
「あなたの名はハチベエよ」
(ロックスなんてかっこいい名前ですわね)
「えっ、いや、あの、ええい、分かった! 俺は今日からハチベエだ!!」
ハチベエの正義感は悪いものじゃ無いから無下には断れずについて来ることになりましたの……
これで苦労するのは決まりですわね。けれども
それにしても…… 世界が変わってもハチベエは饅頭が好きなのね。
「ささ、公女様もお一つ。ここの饅頭は中の餡がすごいんですぜ。何せ砂糖がたっぷりと使われてますからね!」
こんな調子ですわ。賑やかになって良いんですけどね。
こうしてハチベエも供連れとなり、ワタクシたちは各地の小さな悪も懲らしめながら進みましたの。
その所為か三十日ほどでハーヴァー公爵領に着くと思ってましたけど、着いたのはミトーク公爵領を出て四十八日後でしたわ。
「やっと着きやしたかいお嬢。まあ旅先での出来事は耳に入ってやすから心配はしてなかったですがね。それよりもハーヴァー公爵はお嬢が来ると知って待ち構えていやすぜ。どう致しやすんで?」
「ヤシチ、この書状を持って王都にいる陛下の元に忍び込んでちょうだい。ちゃんと返事を貰って来るのですよ」
(この手紙を陛下に届けて下さい。門衛に渡せばミトーク公爵の封蝋がしてあるので必ず陛下に渡されます。返事を下さいと書いてますから返事を受取って戻ってきてちょうだいね)
「へへっ、お嬢も無理難題を言いやがるって言いてぇとこだが。分かりやした! 三日後には戻ってきやすぜ」
爵位がお父様と同じではワタクシの言う事など聞きはしないでしょう。なのでこのような時は
さあ、首を洗って待っていなさいっ!!
転生公女の諸領漫遊記 しょうわな人 @Chou03
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