種を植えよう

蠱毒 暦

無題 課題は計画的に。黒歴史は胸の中に。

「平和だねぇ。」


「平和〜…ロンだよ。カプちゃん。」


「のぁ、やられたぁ!?!?」


「抹茶味のポッキーは貰うねー。」


「ああぅっ…最後の一本。」


「ねえ…いつ見ても思うけど、その2人麻雀…楽しいの?」


箒で部室の掃除をする手を止めて、疑問符を浮かべるヒーに私は不敵に笑う。


「ただの2人麻雀じゃない。これは私達の体の約8割を構成してるお菓子を賭けた立派なデスゲームなんだよ?勝てば官軍、負ければ賊軍。楽しくない訳がない!」


「ヒーちゃんもやる?棒状のお菓子があれば、参加できるよ。」


「はぁ〜〜…聞いて損した。」


そう口で言ってる癖に、もしこの場にティーがいたら、参加するのは知ってるぜ?


その場合…ティーの高価なお菓子を賭けた、本校の麻雀部顔負けの、ガチ麻雀が始まるけど。


「2人麻雀してるくらいだし、課題は順調に進んでそうで、羨ましいわ。」


ザザッ……あれは3週間前のこと。


美術の先生から『夜明けの空にまいた種』というテーマで、どんな形でもいいから自由に何かしらやってクラスの前で発表すると告げられたのを思い出した。


その期限は明日まで。どうやらスイも気づいたようだった。


このままだと良くて、クラスの笑い者…最悪、美術の成績で1を取ってしまうかもしれない!?


ガタガタッ!!!


「え、2人して…立ち上がってどうしたの?鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして。まさか…」


ウイと顔を見合わせて…同時に頭を下げた。


「ヒー…いや、ヒー様。1つ…おっ、お願いが」


「嫌よ。どうせ、課題の内容をパクらせろとかでしょ……ん?」


「即答!?大体合ってるけど…参考にしたいというかぁ。」


「抹茶味のポッキー…あげるよ?」


「「!?」」


えっ。ものすっごく純粋な瞳をしてる…ある意味、尊敬するよ…って、そんな場合じゃない!!!


「ねえ…食べかけで人を買収出来るって本気で思ってるの?」


「うんっ。」


沈黙


「ひ、ヒー様ぁ…後生ですから、あなただけが頼りなんですぅ〜〜!!」


「ヒーちゃん…っ。」


このままだと良くて、クラスの笑い者…最悪、美術の成績で1を取ってしまうかもしれない。内申に響くし…間違いなく親に殺される。


右足にスイが、左足に私が縋り付いていると…盛大にため息をつき、ヒーが口を開いた。


「つまり、課題を何とかしたいってこと?」


「「…うん。」」


「だそうですよ…爛々先生。後、いい加減、スカートの中から出ていって貰えませんか?セクハラで訴えますよ。」


「うふふ…全て話は聞かせて貰いました♪」


ウイと私が反射的にヒーから離れると、『キラキラふわふわ部』の顧問。


生徒に悟られずにスカートの中に潜伏し、突然現れることで有名な保健体育の教師である爛々らんらん いん先生がにこやかに現れた。


……



「『夜明けの空にまいた種』がテーマなら、実際にやって感想を言えばいいのです。深夜に『情熱の丘』前に集合しましょう?」そう言われて目を擦りながら、やって来ると…


「遅いっ!!!」


私が最後だったようで、仁王立ちしてた制服姿のヒーに怒られた。


「ってか、爛々先生いないじゃん。怒られ損じゃ…」


「とっくにいますよ。」


「わっ。」


パジャマ姿のスイのスカートの中から、ひょっこり現れて、「こほんっ。」と咳払いをした。


「ティーさんにも声をかけたのですが、お家の都合で無理らしいので、3人でやりましょう。それぞれ種は持ってきましたか?」


「うん。」


ウイは自慢げに、お菓子袋を取り出した。


「お…お菓子を植えるの?」


「まさか。ウイでもそれくらいの分別はつくっしょ。」


「うん…中身は種籾だから。毎日、水をあげて沢山生えたら、収穫して食べるんだ〜。」


「「……」」


(私有地で)本気で育てようとしている姿に、私とヒーが戦慄する中…爛々先生が拍手を送っていた。


「素晴らしい心意気です。挽國さんは?」


「えっ!?えーと…私はもう課題は完成してるので、」


「えいやっ。」


油断したな…取り上げてやったぜ。


「あ、あっ…待ってお願い見ないで一生のお願いだからぁ!?!?」


「見せて見せて。」


「どれどれ…」



『ダーティプリンセス❤︎ココアちゃん』

作者 ✝️漆黒無敗のコーヒー✝️



「はぅ!?」


パラッ…パラッ……


「「………」」


「あらまあ。意外に…ふふふ。」


パタン


「返すね。よし、後はアタシかぁ〜」


「ひゃ、ひゃっ…100回死ねっ!!!!」


冊子を丸めて、体中を叩かれるが非力だからかそんなに痛くない。あっ…すっぽ抜けた。


「落ち着いてヒーちゃん。今は多様性の世の中…?だから平気だよ!」


「うがぁぁぁぁぁぁぁ————!!!!」


ものすごい速度で、『情熱ノ丘』を降りて行った。


「ちなみに私はスイカの種。今日の晩御飯だったからね!」


「じゅるり…」


「食べないでよ!?」


「もうじき、夜明けですし…そろそろ土に埋めましょう。」


土に埋めて満足して丘を降り、美術の授業で2人はそれぞれの感想を発表し事なきを得た。


その一方で…丘に残された冊子はとある界隈で、物議を醸したという。

 

                   了





























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種を植えよう 蠱毒 暦 @yamayama18

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