山道にて

山道にて

夜、友人と山に繰り出しまして。

当然車ですよ。

月が煌々としてそれはそれで不気味な感じで。

目標は山向こうの街まで行って、朝方まで車中泊してそれから戻ること。

結構山の奥まで上がってって「あ、キツネだ」「シカもいたぞ」なんてはしゃいで。

「本当は女子と来たかったよなぁ」

「こっちだって同じだ」

とか言いながら。

そんなことしてたら突然友人が「あ」って。

「どうした？」って訊いたら

「子供の足が見えた」

「見間違いだろ、この場所でこの時間だぞ」

「いや、だって」

少しスピード上げたら確かに子供が歩いてる。

小学校に入るか入らないかくらいの身長でしたかね。

どう考えても場違いなんで保護しようと思ってもう少し近づこうとスピード上げたんです。

なんだけど、ちっとも追い付かない。

こちらから後ろ姿が視界に入るかどうかの距離から変化しない。

少しずつ加速して60km/hくらい出してたと思います。

今思うと危険ですよね、山中の一本道でその速度、しかも子供が歩いてるの認識してるわけだから。

そしたら、突然その子が消えたんですよ。

と言うか「飛び降りた？」と思ったんです。

友人が「ブレーキ！」って叫んだんで急ブレーキ。車外に出てみたら目の前は崖っぷち。

停まれてないと転落死です。

二人して黙ってゆっくり下山して駐車場で寝ました。

帰宅して

「あれ何だったんだろうな」

「知るかい」

とか言って。

後日調べても変な因縁もなかったらしくて。

…後日譚がありましてね。

自分らがその体験して以来、その場所での転落事故が続発するようになったんです。

もしかして自分たちをやり損じて他人が巻き添えになってるのかと。