第2話

「サクラメント・インクラメント! 魔族第二位の上級サキュバスがなぜここにいる!!」

「その魔力……、貴様まさか勇者シュロ……!?」

 サクラが本気で驚愕した相手は、学級委員長として朝の校門あいさつ運動に励んでいた私のクラスメイト、矢代勇やしろゆうさんだった。

 小動物系のほんわか癒しキャラなはずの矢代さんは、その柔和な顔を精一杯険しくしてこちらを、正確にはサクラを睨み付けていた。

「え、ちょっと、や、矢代さん……?」

 私は激しく困惑する。

 変態の認識阻害が破られた、のはまあもういいとして、サクラのことを知っていたことが衝撃だった。サクラと矢代さんなんて、この世で一番真逆の存在なのに。

 っていうか勇者ってなんだ……?

「久しぶりね勇者シュロ。まさか貴女、そんな可愛らしい姿になっちゃって」

 挑発的なサクラに、矢代さんは『楽しい馬飼野高校を作ろう!』と書かれたのぼりを剣のように構えた

「姿形は変われども、正義の心は失われない!」

 『あいさつ委員会』と書かれたたすきが風に揺れ、なんかすごく鬼気迫る顔でサクラと対峙する。明るい校門は、他生徒による奇異の視線とともに、謎の決戦場へと早変わりだ。

 矢代さんが仰々しく告げる。

「サクラメント・インクラメント。世界平和のため、今ここでお前を討つ!」

「あの、校門で止めなよそういうの……」

 はたから見れば矢代さんは突然虚空に向かって叫びだした狂……、変人だ。内容も内容なので本当に不味い。現に校門には人だかりが出来ている。

 矢代さんの明るいボブカットも、なんだか謎のオーラ的なもので揺らめいている気がしてきた。

「……間さん。いや、魔王オーガ」

 だが矢代さんは気にしない。私にも厳しい視線を向けてくる。まるで魔王を見ているようだ。いや私は断固魔王ではないけど。

「矢代さん置いてかないで」

「お前が復活しないように現世でもそばで見守っていたが……、ついにこの時が来てしまった……」

「来てない来てないそんな時来てないから一旦落ち着こ、ね?」

 私のことガン無視である。

 無念そうに俯き、こちらに近づく矢代さん。傍観者でいようと思っていた私は、否応なしに関係者へとランクアップしてしまう。

「え、あれって矢代さんと間さんだよね?」

「何してるの? お芝居?」

「朝から校門で? やば」

「矢代さんほら見られてる見られてる止めて止めて巻き込まないで巻き込まないで」

 小柄な矢代さんをどうにか私の身体で覆って隠すが、そうすると今度はサクラが調子に乗る。

「おっほっほ! 情けないわね勇者シュロ! 所詮人間体の魔王様にすら叶わない脆弱な存在!」

「何を! 勇者をなめるなー!」

「暴れないて矢代さん! 校門! ここ校門だから!!」

 結局私は、全校生徒の前で10分以上恥をさらす羽目になったのだった。

 転校の手続きってどうやってするんだろ。



「はっきりさせたいんだけど」

 私は2人を見て言った。

 本当なら一時間目の授業が始まっている時間。私と矢代さん、そしてサクラは保健室にいた。

 本来なら養護教諭がいるはずだが、サクラが掛けた人払いの魔法とやらで留守にしている。だから、この空間には私たち三人だけだ。

「矢代さん、あなたは何者? この変態とどんな関係なの?」

 私の問いに、矢代さんは真剣な表情でこちらを見つめた。

「私は勇者シュロの生まれ変わり。前世であなたを、魔王を討ったんです」

 サクラが横から口を出す。

「このにっくき女勇者のせいで魔王様は亡くなり、我らの世界征服も目前で瓦解してしまったのです……!」

 そう言って苦々しく矢代さんを睨みつけた。

「転生先にも付きまとうなんて。お前みたいなやつをこの世界ではストーカーと呼ぶのですよ」

「うるさい! お前たちの野望は、今生でも私が打ち破る!」

 なんか火花が散っている。私を差し置いて散らさないでほしい。

 私は深いため息をついた。

 つまり矢代さんとサクラ、そして二人によると私の三人は、前世でバチバチに殺り合っていた仲らしい。

「……矢代さんさ」

 私は彼女に告げる。

「一応、私は間央華であって、魔王とかではないから。だから、世界征服とかにも興味ないし、するつもりもない。平穏な高校生活を送れれば十分なんだけど」

「それは……。そうです、ね……」

 矢代さんの威勢がそがれる。

「そこの変態、サクラはなんか私を覚醒させたいらしいんだけど、私は嫌なんだよね。だからそのあたりは矢代さんと利害が一致するんだと思う。だからそんなにピリつく必要は……」

「…………」

 なぜか矢代さんの顔が苦悩に歪む。

「なんか引っかかる?」

「いえ……。サクラメントがそばにいる時点で、貴女の存在は魔界に知られたも同然……。そうなれば彼女を退けても他の魔族が来るかもしれないので」

「え、こんなのが他に来るの?」

 嫌すぎる。

「はい……。それに、そもそもサクラメントが間さんを探知出来たということは、間さんの魔力が覚醒間近とみることも出来るので……」

「つまり、私はほっといても魔王になりかねないというわけか……」

 嫌すぎる運命だ。仮にも善良な女子高生の私が、街とか人を破壊しまくる? そのうえ世界征服? 冗談じゃない。

「……いえ、それは必ず私が防ぎます。勇者の名に懸けて……!」

「ありがと」

 私はふと微笑む。いつも真面目で、だけど少し幼い雰囲気の矢代さんだが、今はすごく頼りがいのある存在に思えた。

 いい雰囲気だったのに、そこへサクラが挟まりにきた。

「ふっふっふ。勇者シュロ。貴様に出来ることなぞ何もないわ! 私が明日にでも魔王様を」

「いいところなんだから黙っとけ!」

「いて」

 私はサクラを叩くと、ふと矢代さんに聞きたいことを思い付いた。

「そうだ。魔王にならないために、私はどうすればいい? 矢代さんに何か協力できることはある?」

「協力……?」

 矢代さんがぽかんとした表情で口を開けた。

「えっと、その……。そうですね……」

 それから視線を反らして口を開いた。

「間さんは、あまり私たちのことを気にせずに、楽しく過ごしていてください。むしろ考えない方がいいかも、です。サクラメントの干渉はじめ、面倒なことは、私が勇者としてすべて対処するので」

「それって大変じゃない? こいつしつこいよ?」

「そうですわ! わたくししつこいんですのよ! ちびっこ勇者に出る幕などないわ!」

「うるさい!! 勇者なんで大丈夫だ!!」

 矢代さんが顔を真っ赤にして怒鳴った。

 そして私に真剣なまなざしを向けた。

「私は、間さんが今度こそ、一人の女の子として幸せに過ごしてほしいんです。そのためにこの命を燃やす覚悟が出来てます! 任せてください!」

「覚悟の重たさがヤバすぎる」

 激重感情じゃん。アフリカゾウ何頭分の重量だその覚悟。さっきまでただのクラスメイトだった女子からもらうにはさすがに容量オーバーだ。

「ふっふっふ。さすがは勇者。甘言だらけのいい子ちゃんね」

 サクラがバカにしたように笑う。

「世界征服こそ魔王様の本望! それを叶えてこその忠臣、サクラメント・インクラメントなのよ! 間央華様は魔王様の器と魂を持つのだから、それを覚醒させるのは義務!!」

 煽られた矢代さんもなにぞとばかりにいきり立つ。

「勝手なことを! こうなれば今ここでお前を切り捨てる……!」

 ぴかりと何かが光った。気が付くと、矢代さんの両手に神々しい光を放つ剣が握られている。

 なんだか身体がピリピリして、お腹のなかに重たいものが落ちる。この剣のせいだろうか。

 聖剣を目の当たりにしたサクラは、みっともなく狼狽える。

「げえええ聖剣!? なんでここに聖剣!? 勇者貴様なぜそれを!?」

 よほどヤバい物らしい。私でもただものでないオーラを感じるのだから、相当だ。

「聖剣は私の魂に刻まれている! 討とうと決意すれば、いつだってこの手に顕現させられるんだ!」

「なななななな何を言ってるのか勇者シュロ!! ここここ怖くなんてないわそんなもの!!」

 バイブレーション機能でもついたのかというぐらい震えるサクラ。このままほっといてもいい気はしたが、さすがに校内で流血沙汰はいただけない。

「はいストップー!」

 私はパンと手を叩いた。不意を突かれたのか、聖剣が光の粉となって霧散する。

「二人とも私のこと考えてくれるのは嬉しいけど、さすがにヒートアップしすぎ! 目の前でケンカとか止めてよね」

 二人は呆気に取られたように私を見た。

 サクラが先に反論する。

「魔王様、これは喧嘩ではありません! 魔族と勇者の因縁の戦い! 聖剣なんて怖くないもんね!!」

「保健室でするなそんなの! 死ぬほどビビってたくせに」

 私はサクラにチョップした。

 壮大な戦いならもっと荒野とか岩山とか、そういう誰もいないところでやってほしい。少なくとも授業中の保健室は勘弁だ。

「魔王様のチョップ…。でへへへへへ」

 なんかサクラが気持ち悪い声で変な顔になってるうちに、私は矢代さんと向かい合う。

「矢代さん」

「な、何…ですか…?」

 私と矢代さんは本来敬語で喋り合う程度の距離感。さっきまでのおっかない顔から、元のほんわかした矢代さんの面影が戻ってきて、私は自然と笑顔になる。

 っと、そうじゃない。伝えるべきことを言わなくては。

「まず、ありがとう」

「え…?」

「なんか話聞く感じ、矢代さんって私のことずっと気に掛けてくれてたんでしょ?」

 矢代さんは言っていた。

 私が、魔王オーガが、今生では普通の女の子として生きられるようにするのが目標だと。

「なんか、私のことすごい大切にしてくれてたんだなって。だから、ありがとう! 気づかずのほほんとしててごめんね」

「……っ!!」

 お礼を言っただけなのに、矢代さんは顔を真っ赤にする。

「魔王様わたくしは? わたくしは!?」

「お前は不法変態侵入者でしかないだろ今んとこ」

 なんかサクラが入り込んできたので私は強引に押し退けた。

「矢代さん!……っていうのもちょっと距離あるか。せっかくだし勇って呼ぶね! 勇も私のこと、間さんじゃなくて好きに呼んでいいよ」

 秘密を共有する仲間だ。これから色々とお世話になるかもしれないので、仲良くなるに越したことはないだろう。

「あ、えっと、じゃあ、央華ちゃん……」

「いいね、なんか超仲良しって感じ」

 恥じらいながら名前を呼ぶ矢代さん、もとい勇。モジモジしてて愛らしい。

「っは!! わ、私と間さ……、お、央華ちゃんは勇者と魔王なんです、だから! て、敵対関係なんですからね!! こんなんで懐柔した気になったらダメだ!! です!! だよ!!」

「はあ……」

 別に懐柔したつもりはないけど。その割に勇の顔はなんかだらしなく緩んでいる。まあ喜んでくれているのなら何よりだ。

 そこに、サクラが馬鹿にしたように言った。

「ふふふ。勇者と言っても、今は所詮ただの小娘のようですわねえ。魔王様の策略にすでにハマってるようでして」

「黙れサクラ」

 良い雰囲気に5Lぐらい水を刺される。

 変態は止まらない。そのまま私を引っ張って抱きしめてきやがった。

「央華様とラブラブしてれば、魔王様復活はすぐ! いくら聖剣を出せるとは言え、現代日本で貴様が出来ることは限られるでしょうに! この勝負、わたくしが有利ですわ!!」

「な、なにを!」

 挑発された勇が、私の腕に引っ付いて引きはがそうとする。結局無理だったけど、私は二人に挟まれる格好になった。

「央華ちゃんがお前にラブラブしなければ私の勝ちだから! 嫌がってる央華ちゃんに無理やりラブラブしても、そんなに意味はないはず!」

 それから上目遣いで言った。

「今のところ央華ちゃんは私の方が好きだと思う。だよね、央華ちゃん?」

「う」

 最初に言っとくけど、勇はクラスメイトだ。可愛いな、ちまこいな、妹にしたいなと遠巻きに見つめていた相手ではあれど、それほど特別な感情を持ったことはない。

 だけど至近距離での上目遣いはめちゃくちゃの破壊力があった。この子、私のこと大好きなんじゃ……?

 するとサクラが空気も読まず、この可愛い天使を押しのける。

「ふん! 勝手に言ってろチビ勇者! わたくしと魔王様には前世からの絆があるのだから、ラブラブなんて簡単に出来るわ!」

「ダメ! ラブラブするのは私だ!!」

「あ、あの、ちょっと待って欲しいんだけど」

「何ですか、魔王様」

「どうしたの、央華ちゃん」

 再び言い合いに発展しそうな2人を一旦止める。

 その隙に二人から抜け出した。

「ええと、そもそもの話なんだけどさ」

 そう言えばなんか勢いに流されていたけど、腑に落ちないことがあったのだ。

「私とラブラブってどういうこと? なんで私を魔王にするのにラブラブが必要なのさ」

 私の問いに、サクラが当然とばかりに答えた。

「簡単な話ですわ。魔法を産み出す魔力は欲望から生まれますの。一番簡単で協力なのが性欲ですわ。サキュバス族は性欲から魔力を生み出すのが得意ですのよ」

「せいよっ!?」

「サキュバスであるわたくしとラブラブして央華様をムラムラさせてれば、魔王様の中の闇の魔力が爆発して魔王様復活となるわけです!」

「絶対するかムラムラなんて!!」

 花も恥じらう女子高生に何を言ってるんだこいつ……!? バカじゃないのか!

 だいたいそんな話信じられるわけがない。と思って勇を見ると、恥ずかしそうに俯いていた。あんまり下ネタとか得意じゃないのだろう。可愛い。

 私に見つめられた勇は、言い訳のように早口で言う。

「魔力は人間世界だと『願いの力』から産まれるから……。誰かを守りたいとか、幸せになりたいとか愛されたいとか、そういう感じの……」

「一緒ですわ。言いつくろっても欲望こそ魔力の根源。そして性欲は強力で引き出しやすい、最高の欲望なのです!!」

 そう叫ぶと、サクラは私をぐるりと引き回し、向かい合う形で抱きしめる。

 豊満な胸部のクッションとか、ほっそいけど確かに柔らかなお腹とか、存在感をバチバチに主張してくるお尻とかがこれでもかと身体に押し当てられて、身体の奥の方から静かな熱が沸き上がるのを感じた。

 するとサクラがしてやったりとばかりにニヤつく。

「あ、今ムラっとしましたね。魔力の波動を感じましたわ」

「わかるの!?」

「サキュバスなので」

「さ、最悪能力すぎる……! 出せ! ここから出せぇ!!」

 私はサクラから抜け出そうともがく。が、サキュバスの力で微動だにしない。

「うふふ~。魔王様ってば初心なんだから」

「くっそ、こんなとこ! 抜け出してやる!!」

「可愛いですわねえ~。……それにしても魔王様、なんかめっちゃ弱っちくありませんこと? サキュバスは別に腕っぷしが強い種族ではありませんよ」

「うるせー!! 早く退いて!! はーなーせー!」

「おっほっほ。まあ力が弱いのは好都合! もっとムラムラしておくんなんし~!」

「ぬわあ!!!」

 ふかふかでもちもちでぬくぬく。駄目だ。どうしても強力な胸部脂肪の感触が脳髄に刻み込まれる。

 おっぱいを前にした人間のごく自然な反応なはずなのに、なんだか敗北感がある。っていうか普通に恥ずかしい。他人がムラついた瞬間を開示するの止めろ。

 このままでは危ない。

 本能の裏で理性がチカチカ危険信号を放った時、一応自由になっている私の左腕が何かに触れた。

「央華ちゃん! 気をしっかり持って!」

 勇だ。

 小さくて可愛い女の子。この子がいれば、あんな変態露出女の誘惑に勝てる!

「私のお、おっぱ、いなら、いくらでも、さ、触っていいから!」

 そう言って勇は、私の左手を自分の胸に押し付けた。

「なんでやねん!!」

 つつましいがしっかりと存在感のあるおっぱいが、私の脳に新たに突き刺さる。

「ぐ、光の魔力が……!?」

 謎にサクラが呻いた。何がわかるんだ。本気か!? 私をからかってるんじゃないのか!?

「やっぱり」

 勇が嬉しそうに笑う。

「私でえっちな気持ちになれば、央華ちゃんには光の魔力由来の欲望が産まれる……。それなら、魔王オーガ復活にはつながらない! 今度こそ魂が浄化されるはず!!」

 何かの希望を見出したようだ。勇のテンションが上がったのを感じた。

「央華ちゃん、わたしでいっぱいむ、ムラムラして!」

「やだよ!! 勇にそんなこと言われたくなかった!!!」

 可愛い小動物系勇を返して!! あの子ムラムラとか言わない!!

 私の叫びに反して、勇はどんどん私に迫ってくる。

 サクラは鬱陶しそうに追っ払おうとした。

「何を! 勇者のくせに小賢しいマネを……!!」

「やめない! 世界の平和を守るために!!」

「やめろ!!!!!!! 私の平和を守ってくれ!!!!!!」

 正面にサクラ。左手に勇のおっぱいを押し付けられる謎の状態を脱したのは、一時間目の授業終わりを告げるチャイムが鳴ってからだった。

 

 

「くそ……」

 教室に戻るとどっと疲れが出てきた。自席に座り机にうつぶせになる。

「なんでこんなことに……」

「央華大丈夫? まだ気分悪いんじゃないの?」

「だいじょーぶ。ありがとー、ゆい」

 佑衣子が心配そうにのぞき込んできた。

 私は一応体調不良で教室を離れていたので、こうして心配してくれているのだ。ありがたい。おっぱい地獄の後だから、余計身に染みる。

「しんどかったらすぐ言えよー」

 佑衣子の好意に心身を癒していると、教師が入ってきた。次の時間は国語、担当は担任の相原先生だ。

 27歳独身女性。黒髪長髪の正統派清楚系女性教師だ。優しくて親しみやすいので、生徒からの人気も高い。

「はーいみんな席ついてー」

 美人で有名な相原先生なので、みんなすぐに言うことを聞く。人間なんて単純である。ちょっとおっぱいがデカけりゃへらへらするんだ。

 ところが次の言葉に、一瞬教室がざわついた。

「授業の前に、まず転校生を紹介しまーす」

「は?」

 2時間目の授業だぞ今から。そういうのはだいたい朝のホームルームでやるもんでは?

「はい、入ってー。転校生のサクラメント・インクラメントさんです。皆さん仲良くしてくださいね」

「どうもみなさまー!」

「……っ!!??」

 ハイテンションで教室のドアを叩き開けてきたサクラに、私は激しく横転。文字通り椅子からひっくり返る。だというのに、誰もこちらを見なかった。

 使いやがったな、認識魔法……!!

 サクラは私が転げ落ちたのも気にせず、元気に挨拶した。

「わたくし魔界第一上級士官学校から来ました、サクラメント・インクラメントですわ。下民の皆様どうぞよろしゅう」

「なにしてんだお前ー!!!!」

 パッツンパツンのセーラー服に身を包んだサクラに、私は立場も考えず立ち上がって叫んだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王だった私、今は女子高生で勇者と魔族相手に百合ハーレムを作っちゃってます!? 徒家エイト @takuwan-umeboshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画