第20話:配信アーカイブ#317

:リビングデッド、獣兵、リビングデッド、リビングデッド、獣兵…

:人型の敵が続くから病みやすいんだよなこの階層

:この三人全く病む様子無いんですがそれは

:まあ、チチェロちゃんはちょっと別のとこから来たし…

:Aだぞ

:ウルタールさんは元最前線だからなあ


「……この獣人、死体と一緒にいて臭くないのか?」

「確かに気になるわね」

「おっけー、そのまま固定でお願いねー」


:尻尾で吊るして首斬って血抜き、便利だなあやっぱ

:人間みたいに両足で立ってる獣も容赦なく皮はぎ取って食べるよなAって…

:冷静に考えたらリビングデッドと獣兵が共存してるのって不思議だよなこの城

:今回とか組んで襲ってきたし

:首刺して血を抜くの本当手慣れてる、うちの猟師の手伝いしてほしい

:猟師やるには協調性がね…

:つうかなんで血を集めてるのAは

:チチェロちゃん手慣れてるな、Aが作業している間に火を起こしてる


「……その血で何するつもりなの?」

「火にかけて食べようと思ってねー。魔力結構入ってるし」

「えっ、食べるの!? 肉ならともかく、血を!?」

「魔力摂取大事。この先進もうと思うのなら」


:ウルタールさん表情がひきつってる

:チチェロちゃんAの奇行に理解示さないで

:魔力が大事……? 魔法使いであるウルタールさんはともかく、魔法全く使わないAも?

:というか犬の魔物食自体には抵抗ないんだ…

:ダンジョン探索なんて状態で食事に拘ってたら奥深くまで探索できんわよ


「Aも魔力を取り込む必要がある。体内にある魔力が低すぎると、高魔力地帯に入ると死ぬ」

「えっ死ぬの!?」

「あー……あれね。ワクチンと同じ感じかしら。ある程度魔力を摂取して、体に魔力に慣れさせると……蓄積性過剰魔力障害とか、ダンジョン探索しない魔物食しない人がかかりやすいって話だし」

「……なんでAが驚いてるんだ? 転移されて肌が焼けただれていたのに」


:あー、リビングアーマーに転移魔法かけられた時のあれかー

:そういや急にAの皮膚がどろっどろになってたよな…

:あれ体内に蓄積されてる魔力量少ないからああなってたのか…

:自然と魔物食していた日本人冒険者のやり方合ってたんだな……

:実際、魔物食に忌避感持ってる国の冒険者ってもっと浅い階層しか探索できないらしいしな

:……これ何気に凄い貴重な情報じゃねえの?

:いや普通に研究者の間では一般常識ですよ?だからギルドでは格安で魔物食を食べられるようにしている訳ですし


「よし、全部出終わったかなー。鍋にこの血を全部入れて火にかけてー……」

「あっ忘れてた。えっ何どうやって食べるのA?」

「塩コショウで」

「……もう少し文明的な食事をしたい」

「んじゃ醤油かける?」

「多分そういう意味じゃないと思うわよ……」


:醤油!? あのなんでも塩コショウで食べてたAが醤油!?

:血を鍋で沸騰させてるの悪魔の儀式かなんかにしか見えない…

:パーティー結成したからちゃんと人間文化を覚えてくれたのね、A……

:あー固まってきた。へー……血って火を通すと凝固するんだ


「血も所詮は肉と同じ成分だからねー。火を通せば硬くなるし、味も臭みも似たようなもんだよ……っと、もうそろそろかな?」

「……私も食べないと駄目よねこれ」

「強くなりたければ食べた方が良い」


:味も臭みも……

:臭い消しに生姜くらい持ち歩いててよAよ!!

:火で炙っただけのナイフで切り分けてる…

:いや一応消毒はできてるだろうけどさあ!!

:潔癖症が冒険者なれる訳ねぇだろ


「一人一切れね」

「うぅ、わかったわよ。食べればいいんでしょ食べれば!!」

「いただきます」


:こう完全に火が通って固まったのを見るとパンケーキに見えなくもないか?

:あたし絶対Aのパーティに入らないわ…

:こんなグロテスクなパンケーキがあるかよ

:チチェロちゃん素手で小鍋から取るの熱くないの?


「んじゃ、いただきまーす……うん、臭い。はいウルタールさん」

「……ちょっと待って、覚悟決めさせて」

「肉の方はどうするんだ?」

「僕が捌いておくよ。ウルタールさんが食べ終わったら小鍋で肉を焼いて、余ったのは納品って感じかな?」

「ええい、ままよ!! ……うんぐっ」


:ウルタールさんすっごいえずいてる

:なんかエッチだな

:というか口の端っこ切れちゃってるじゃん、ナイフをフォークみたいに使うから

:このくらい怪我のうちにゃ入らんよ

:涙目で血のパンケーキ(動物性100%)を食べる女の横で人型の犬の皮をはいでいく狂人

:やっぱ綺麗にはいでいくよなAって、マジで上手い

:剝ぎ終わった獣人の死体はチチェロちゃんが尻尾で解体してくれるのね

:すげぇ、日本のスーパーで見かけるようなステーキ肉だ

:塩コショウでちゃんと下味付けてるの偉い

:なんでチチェロちゃんが調理担当なってんだ

:結構分厚めだがこれ中まで火が通るのか?

:ウルタールさんのこと心配してあげなよみんな


「すっごい鉄臭いし獣臭いし美味しくない……」

「ウルタール、頑張った」

「お疲れ様。口直しにチチェロがちゃんとした料理作ってくれるって」

「少し時間がかかる。今日はここで野営にしよう」


:時間がかかる料理って聞いてAが少し不満そう

:普通Aとチチェロちゃん立場逆なはずなんだけどなあ…

:というか何作るんだろ? チチェロちゃん、そんな料理作れるようには見えないけど

:チチェロちゃんのチャンネルで料理動画結構出してるよ

:肉に塩コショウ揉み込んでたって時点でAより信頼できる

:チチェロちゃんの個人チャンネルいいよね、段々上達していくのが見て取れて


「一口大に切った肉に水を張って……ウルタール、お願いできる?」

「いいけども……美味しいの食べさせてよ? 命育む恵みの水よ、ウォーター」


:生活に使う分だと完全詠唱しなくていいんだっけ

:ぶっちゃけ誰でも無詠唱でも使えるもんだからな、日常で使える威力の魔法は

:通称レベル0の魔法は冒険者の間じゃ必需品だぞ、この配信だけ見てたら感覚狂うが

:ただ水魔法は魔力消費が結構激しいんだよなあ…

:風や炎と違って実物を出してるからな


「野菜と一緒に臭み消しの生姜、ローリエ、病消し草のつぼみ、毒消し草の花を入れて火が通るまで適当に煮込む」

「病消し草も毒消し草も食べられるの?」

「元々は野性環境で自生していた植物を食用の植物と交配育種して育てやすくしてある。育てやすさのみが目的だったけど、どういう訳か味も良くなった」


:へー

:さらっととんでもない事実が判明したんだが!?

:嘘でしょ交配育種とかやってんのかよダンジョンの住人…!?

:まあ俺達がやれてんのにダンジョンに住む人間がやらない筈がないわな

:どんな味なんだいったい……


「チチェロ、これも食べられそう?」

「この木の実は美味しい。ただA達も食べられるかは不明」

「ふーん。どれどれ」

「ちょっ、A!?」


:木の実採取してたのねA

:おい迷いなく口に入れたぞこいつ!!


「ペッ……なんとも、なさそうかなー?」

「よかった……飲み込んでないわよね?」

「そんな素人みたいなヘマしないよ。うん、良いねこれ。程よく酸味があって」

「んじゃ全部入れて。軽く傷をつけた方が美味しくなる」


:毒見に躊躇いが無い…

:あの植物、見たことない代物ですね…気になります

:疲れてる体に酸味って染みわたるよね

:あのシチュー、というか雑煮……どんな味なんだろ

:これに関してはマジで気になる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョン配信に憑りつかれた男の娘~何万回死んでも潜り続ける、そこにダンジョンがあるから~ プラン9 @Morinphen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画