王子さまはいつになってもくる気配はありません。
ぼんぼり
王子さまはいつになってもくる気配はありません。
お義母さまの癇癪で家を追い出されてから、森で迷って、疲れた果てに見つけた小さなお家で眠ってしまったらしい。これは一体、どういう状況なのだろう。目が覚めたら5人の小人と2つの卵に囲まれてた。うん、やばい。状況が全くの見込めない。
「目が覚めた?不法侵入している自覚はありますか?」
「えっと、はぁ。」
「自覚があるようで何よりですが、ここは立ち入り禁止区域だってことご存じでしたでしょうか?」
「これは知らないって顔。」
「やっぱり通報案件?」
* * *
遡ること多分、3か月前。父が新しい女の人を連れて家に帰ってきた。今思えば多分これが運命の分かれ道だったんだと思う。
「ブランシュ、再婚しようと思うんだ。」
私は、街でそこそこ大きい仕立て屋の一人娘。幼いころに実の母を目の前で盗賊に殺され、私は表情をほぼ失いそのまま15歳になった。
「明日で、ちょうどお前も成人を迎える。・・グリムヒルデは良い人なんだ。私の仕事の支援もしてくれる。優しい人なんだ。」
父が商品の買い付けで家を長期にあけることになった。一言でいうと「地獄」。父が連れてきたグリムヒルデはとても起伏が激しい人で、よく聞く「結婚したら人が変わる」というものを見事に体現したような人だった。金遣いは荒いし、まるで壊れかけたオルゴールのようだった。 一瞬前まで囁くように話していたかと思えば、次の瞬間には耳をつんざくような甲高い叫び声を上げ、使用人に当たる。最後には、表情を変えない私が面白くないのか怒り、手を挙げる。周囲の空気さえも彼女の情緒に引きずられるようだった。
「ブランシュ、お前がいると私がおかしくなるのよ!またその顔!気持ち悪い!何か言ったらどうなの?」
それから、1日前。私は夕食に薬を盛られ、麻袋に入れられ森の前に捨てられた。運んだ人の慈悲なのか麻袋を閉じるための紐は緩んでいたためすぐ脱出することができた。そのあとは、想像通り、食べ物を探すために森へ入ったのだ。
* * *
「おい、聞こえているのか?」
「・・・すみません、ここどこですか?」
「ねぇちゃん、空気読めないって言われたことない?」
「あぁ、失礼しました。私、ブランシュといいます。事情がありまして・・・。」
と、ここに来た経緯を淡々と語った。一通り話し終えた後、なんだか空気がおかしい。小人たちは残念そうな表情をしていたり、涙を目に一杯溜めていたり、複雑な表情をしていた。
「ここに住むといい。」
案外、この小人たちはお人好しなのかもしれない。嘘はついていないけどなんか心が痛んだ。
「僕たち、妖精族専門の仕立て屋をしてるんです。」
「仕立て屋?」
「はい、こう見えて結構人気店なんですよ。あなた、お裁縫は得意ですか?」
「一通りできます。」
「じゃ、話は早いな。住み込みでここで働け。といっても禁止区域に足を入れたんだ、もう外には出ることは難しいけどな。」
「はぁ、ではお世話になります。」
「おう。」
こうして私はここで働くことになった。それから3年――。
「5年先の予約だって?」
「いやいや、大繁盛~」
そう!仕立て屋は口コミで大繁盛。妖精以外の種族にも人気になって今や予約を取るのが難しくなるほど。そういえば、数年前にどこかの遠い国で、とある義母がなんちゃらって言う国のスパイで追放した義娘をとある国の王子が助けるために動いてるって噂で聞いたけれど、何だったんだろう。そんな噂もいつの間にか風化して今ではとある国もどうなっているかわからない。
「そういえば、この前森の中でさまよっていた人間がいたらしい。」
「やーね、立ち入り禁止区域の意味知らないんじゃないのか?」
「えっ?何か意味あるの?私も知らない。」
小人が全員固まってる。どれだけ衝撃的だったのだろう。
「いいや・・・いい。この森は――」
王子さまはいつになってもくる気配はありません。 ぼんぼり @bonbori0u0
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