迷探偵、ワイドショーに立つ

凡間凡は、なぜか全国放送の朝のワイドショーにゲスト出演することになった。

テーマは「名探偵が語る! 最新の未解決事件」。

「さぁ本日は特別ゲスト! いま話題の名探偵、凡間凡さんです!」

「つまり、私は私である」

スタジオの観客から笑いと拍手が起こる。

「もう最初からギャグ枠扱いされてるよ……」

留美は、袖から探偵を見守っている。


「先週、都内の宝飾店で金庫破り事件が発生。店内の監視カメラは停止しており、唯一の手がかりは“開けっぱなしの裏口”でした」

というナレーションのあと、司会者が凡間に尋ねた。

「凡間さん、この事件のポイントはどこでしょう?」

「裏口が開いていたということは……裏口が開いていたのだ」

「……そ、そうですね」

司会者は唖然とした顔で探偵を見つめているばかりだった。


「おそらくプロの窃盗団の仕業ですね」

「店員の内部犯行の線もありますよ」

などとコメンテーターたちが討論を繰り広げる中、凡間は人差し指を立てて言った。

「つまり、犯人は、犯行を行った人物である」

司会者が感嘆した。

「・・・深い・・・」

(いや深くないぃぃぃ!)

留美は心の中で叫んだ。

すると、番組ADが慌てて駆け込んできた。

「 警察から情報が入りました! 現場に残されていた手袋の指紋が判明したそうです!」

「おぉっと、これは生放送で大ニュース! 犯人の正体が――」

「……なんと、被害にあった店長本人の指紋だったそうです!」

「えええええ!?」


「つまり――盗まれたものは、盗まれたことにされたのだな」

「!?」

「……え、凡さん今の、核心突いてない!?」

「なるほど……! 店長は“盗まれた”と偽装して保険金を騙し取ろうとした……そういうことか!」

禿山は納得した様子で何度も頷いた。

「そういうことだ」

「おおおおお!!」

「さすが名探偵……凡間凡さん!」

「つまり、視聴率は視聴率だった」

スタジオ大爆笑、番組は最高視聴率を叩き出した。


収録後。

「……凡さん、もしかして本当に天才なんじゃない?」

「天才とは、天才である」

「……やっぱり違った」



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