短歌 「羽化不全」

酒井迷(さかいまよう)

「羽化不全」

懐に新品の数珠をしまって革靴のまま頭に塩振る



振袖のはがきが届くポストだけずっと昔に取り残されてる



なんか人形みたいで気持ち悪いこんなにきれいなままなのに



天に向け三対の脚を開くお前は確かに死んでいるのか



窓の外水平線が傾いてニュースの一人になりませんように



死んだ後意識がここに残るならすでに地球は定員オーバー



十二月水をやりすぎてまたサボテンを枯らした天気は晴れ



道端のタンポポを摘み紫と白の花束の群れに加える



ひっぱって逆さにしてもしゃべらない目を見開いたわたしのファービー



細筒を吹く子の頭くらいにふくらみふくらみふくらみはぜた

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短歌 「羽化不全」 酒井迷(さかいまよう) @sakai_mayou

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