第1話 ラバウルの風
第9艦隊所属空母『炎龍』にて
「艦隊各員に告ぐ。この戦争も勃発から既に1年。今日こそ!我々はドイツに奪われた要塞ラバウルを奪還するのだ!一機でも良い。体当たりでも良い。なんとしてでも一撃を与えて来い!」
艦長がお決まりのセリフで気合を入れる。
「まったく、前回までで50機以上墜とされてるっていうのに。こりないねぇ海軍は。ま、しゃあないか。海軍も切羽詰まってる様だし。」
俺の名は山田琥太郎。
海軍少佐のパイロットだ。
愛機は『菫』。
この"よく分からない世界"に来させられて早1年。
こっちの世界にも慣れたもんだ。
おっと発進合図が出された。
よっしゃ!それでは死の
「全機に告ぐ。高度7000メートルを保ち、このまま前進するぞ。おそらくあと10分後、敵の射程内に入る。気を引き締めてけよ!」
俺は風が大好きだ。
特に戦闘機に乗っているときの風はたまらん。
その中でもラバウルの風は格別だ。
大自然から生み出された熱風が俺の鼓動を高鳴らせる。
おや、そろそろ敵さんの射程内のようだ。
遠くの方から小さな点が沢山向かってくる。
2秒も経たない内にすぐに我々に突っ込んできた。
そして次々と味方機が墜とされていく。
まだ戦闘開始から5秒も経ってないのにすでに10機以上墜とされたようだ。
それもみんな新米。
「おいお前ら慌てんな!これ全部無誘導ロケットだ!下手に動くと逆に当たるぞ!」
だがこんな事を言っても新兵に聞ける余裕などない。
中には味方同士でぶつかって大破する者や、無理な回避運動をして機体が耐えきれずに大破する者もいる。
「大量生産用の簡易戦闘機だ。そんな機動力あるわけねぇだろ!」
そうこうしてるうちに無誘導ロケットの雨を抜けたようだ。
しかし、本番はここからだ。
ここら辺から相手の超射程機関砲が牙をむk...!?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
早速隣の奴が落とされた。
となれば、次は俺か。
となれば先程"そこまで機動力がない"と言ったがそれでもやるしかない。
一か八かだが、俺は機首を一気に上げ、高度を上げて敵の射程内から外れた。
「機体の損傷は!?」
大丈夫。
どこからも火は出てない。
「つーか、この程度の動きで心配しなきゃいけない戦闘機ってクソすぎるだろ!」
2kmほど前進した所だろうか。
「あれは!」
私の目に映ったのは、百式司偵とキ109を足して2で割ったような形状の機体だった。
そう、アレこそ"ラバウルの悪魔"だったのだ。
第2話につづく
剱の航空隊 The winds of Rabaul 非 非国民 @teikokukokumin
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