トイレの?に?で?神さま

茶碗蒸し

トイレ

 今日は朝からへんてこで大変な日だった。朝ガムを踏んでその後お財布を拾って届けたらお礼に3000円もらって給料日前でカツカツだったのを救われ意気揚々とランチ奮発したらその帰りに財布を落として夕方交番行ったら一円も取られてない財布が届けられて喜んでるのも束の間、ドロボーから『かわいそうで取れなかった、これでうまいものでも ドロボーより』というふざけたメモと1000円が添えられたりしてもやもやなんかムカつくと思っていたら道端で美人女優に間違えられてその後トイレ入ったら


トイレットペーパーがない!


もう叫ばずにはいられなかった!


「ぬぁーぐぁーがぁーおーどんどこビーボボボ」


と意味不明な言葉を叫んでいた。


その瞬間


「え、何?があったのよ?」


と1人っきりのトイレで声がした。


(やばい、花子さんだ。そういうの怖いタイプなんだけど)


怖くて聞こえないふりをしてると


「いやいや、無視はむりだよ。この距離で」


(ダメだ、霊感ないのに今日はとことんついてない)


「無視しないで。おばけじゃないよ。トイレの神様だから」


「え?トイレの神様?」


「そうそう」


「本当にいるんですか?」


「いるいる。日頃トイレの神様だから静かにしてるのよ」


「そうなんですか」


「そうよ、神様だからなんか静かにしてた方がかっこいいじゃん!だけど今回無理だった。すごい気になる事言うんだもん。初めて声出ちゃった」


「なんかすいません」


「いいのいいの、それより何があったらあんなおもしろい言葉発するの?」


「実は朝ふんを踏んでそれから・・・・」

一部始終を伝えた。


「わーそれはすごいね、それはあんな言葉言いたくなるわね、安いアニメみたいに盛りだくさんじゃん!」


「安いとか言わなくていいですよ」


「ごめんごめん。てか敬語じゃなくていいよ」


「え、でも神さまですから」


「いいよいいよ、年も近いと思うし。と言っても神さま的に年齢NGだからあんま言えないけど」


「そうなんですか」


「そうそうだから敬語やめて普通に話して」


「わかりました、わかった」


「そんなあなたに朗報」


「え?」


「今持ってる傘を扉の上から掃除入れの1番上の棚にやるとうまいことトイレットペーパーがここに落ちてきます)


「マジですか?」


「神様を信じなさい」


持っていた傘を持ち言われるままに扉の上から掃除入れの1番上の棚にやった。


「よいしょ」


コトン


「本当に落ちてきた!」


「ありがとう神様!」


「いえいえ、それよりよかったら愚痴聞いてくれない?」


「え、いや愚痴だけは遠慮します」

仕事でクレーム対応が多いのでつい反射的に答えていた。


「えーじゃー水流してあげない!」


「え、そんな、まさか」


レバーを押しても押しても水が出ない


(だめだこのまま出るわけにはいかない)


「聞かせてください」


「やったー」


「どうぞ」


「なんかさ、トイレちゃんと見てくれる人少なくない?」


「なるほど」


「急いでる人はいいよ、用を急いでくださいってこっちだってそんな横柄じゃないけど」


「はい」


「めっちゃのんびりトイレ休憩とか、スマホ持ってきてる人とか、あーいう人、たまにはトイレほめてもバチ当たらないと思うの」


「というと?」


「あーこのトイレの白イカしてるねとか」


「はい」


「なんだかこのカーブがセクシーだねとか、丸みが癒されるとか!」


「それは思った事ないかもですね」


「いや思えよ!どんだけ助けられてると思ってるの?うちらいなかったら漏れるよ?わかる?」


「たしかに」


「だからさ、毎回じゃなくてもたまにはね、言ってよ、言ってほしい!」


「えーとじゃー」


「うん」


「すごい綺麗なトイレ、最新鋭で素敵」


「それから」


「白が優しい白でかわいい」


「それから」


「どっしりボディが安心する」


「どっしりとかやめて」


「あ、すいません。じゃー安心感のあるボディがいいな」


「いいね、それから」


(やばいもうない)


心待ちにしてる声を裏切れずお客様のご要望に無理くり答える時のように


「えーと、あれです、光沢があって高級感があるな」


「いいねー」


「それと、ヒヤッとしてクールでイエス」


自分でも何を言ってるかわからないがとにかく褒めた。


「あー嬉しい、なんか満足した」


「じゃー?」


「うん、流してあげる」


「ありがとうございます」

契約してくれたお客様に言うように声たかだかに言った。


そして水は勢いよく流れた。


ジャーーーーーー


「あ、ちなみに水の水量で応援とか、怒り、とか励ましアピールしてるから気にしてみてね」


「そうなんですか?」


「そうだよ」


「知らなかったです」


「じゃーおしゃべりはおしまい。ばいばい」


「え、あの、あの」


「・・・・」


返事は返ってこなかった。


「え、そんなこんな別れって、まだ会ったばかりで、そんな」


「・・・・・・」


いくら話しかけても返事はなかった。


あきらめてトイレを出ると


やべーやつを見るような顔で女性が見ていた。そしてその横にいたご婦人が


「これから素敵な出会いがあるわ」


とハンカチを差し出してくれた。


素直にハンカチをお借りして冷や汗を拭いた。


お礼を伝えそそくさと出た。


明日からトイレの水流の音に気をつけようと思った。


おしまい

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トイレの?に?で?神さま 茶碗蒸し @tokitamagohan

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