るると銀子の日常談

パンチでランチ

第1話

夜の公園に、不思議な二人が座っていた。


ひとりはるる。どこか天然で、常に夢みたいなことばかり考えている少女。

もうひとりは銀子。クールで冷静、ツッコミ担当のような性格。


ベンチの上に、二人はコンビニ袋を置いていた。

中身はポテトチップスと、謎の「期間限定 激辛ホットミルク」。


「なあ銀子、もし小説の主人公になったら、私たちってどんな冒険するんだろうな?」

ポテチをバリバリ食べながら、るるが言った。


銀子は呆れ気味にため息をつく。

「……現実で締め切りに追われる小説家とかじゃない? 冒険なんて、ないない」


「いや、絶対あるって!」

るるは夜空を指差した。

すると、まるで待っていたかのように、星のひとつがシュッと流れた。


その瞬間、二人の前に分厚い本が落ちてきた。

表紙には金文字でこう書かれていた。


『るると銀子の冒険譚 第一章』


「え、ちょっと待って。これ、私たちが主人公ってやつ?」

銀子は慌てて本を手に取る。


中を開くと、そこにはこう書いてあった。


―――

『るると銀子は、夜の公園でポテチを食べていた。』

―――


「……いや、今の私たちそのまんまやん!」

銀子がツッコむと、本の文字が勝手に書き加えられていく。


―――

『銀子は全力でツッコミを入れた。』

―――


「え、怖っ! これ、私らの行動を実況してんじゃん!」

るるは大興奮。

「うわー! すごい! じゃあさ、“宝探しに行った”って言ったらどうなる?」


るるが口にした途端、本が光を放ち――

二人は公園から消えた。


気づけばそこは、古代遺跡のような迷宮の中。

足元にはキラキラ光る宝石の山。


「うわーー! 宝探し、マジで始まっちゃった!!」

るるが飛び跳ねる横で、銀子は頭を抱えた。


「……ほんとに主人公になっちゃったじゃん。これ、帰れるの?」


本はるるの手に握られたまま、ページをめくるごとに物語は勝手に進んでいく。

二人は迷宮を抜けるたびに新しいページを開き、次々と奇妙な冒険に巻き込まれていった。


そして、最後のページにはこう記されていた。


『物語はまだ、続く――』


るるは笑いながら銀子を振り返った。

「ほらね? 言っただろ、私たち冒険するんだよ!」


銀子は苦笑しながらも、どこか楽しそうに頷いた。

「……まあ、悪くないかもね」

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