書けない歴史小説
夢水 四季
書けない歴史小説
素晴らしい歴史小説が書きたい。
稀代の陰陽師、安倍晴明の妖討伐譚。華麗に宙を舞い、式神を操り、都に巣食う妖どもをバッタバッタと薙ぎ倒す。時には妖との心温まる話もあり、ミステリアスな晴明の内面に切り込んだ意欲のある話が書けないものだろうか。
百人一首の撰者、藤原定家の一代記。恋仲と噂されていた式子内親王との秘められたエピソード。百人一首に隠された定家の意図や、あまり描かれることない老年期の定家の話はどうであろうか。
足利義満の建てた鹿苑寺。そこで行われた饗宴、外交、また足利氏失脚から放火で焼かれ、また再建されるまでの歴史を当時の人々の話から描いていくのはどうだろうか?
本能寺の変で謀反人の代名詞となった明智光秀。知られざる彼の青年期、信長との確執、そして「敵は本能寺にあり」。所謂「三日天下」の後も生き延び、天海になったという説を採用し新たな光秀像を描くのは面白いと思うのだが。
幕末を駆け抜けた新選組。箱館戦争を生き延び、アイヌの金塊を探す老子の土方歳三なんてどうであろうか。
「どうもこうもありませんって。どのアイデアも何処で聞いたような話ばかり。やっぱりあなたは歴史小説じゃなくて、オカルトエログロしか無理なんですよ」
終わり
書けない歴史小説 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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