エピローグ「そして、伝説は続く」

 数年の月日が流れた。

 世界は、様々な種族が手を取り合って共存する、穏やかで平和な時代を迎えていた。

 かつて勇者と呼ばれた僕のクラスメイトたちは、それぞれの立場で新しい世界の構築に貢献していた。

 東堂は王国騎士団の団長として、真の意味で民衆を守るための組織改革に尽力している。

 聖女・莉子は、僕が基礎を築いた【細胞再生魔法】をさらに発展させ、新しい医療体系を確立し、世界中を旅して多くの命を救っていた。

 魔王軍幹部だったリリアは、人間と魔族の間に立った外交官として、各種族間の懸け橋となるべく、多忙な日々を送っている。

 そして、僕、佐藤拓海は――。


「師匠! ここの剣筋がどうにも!」

「タクミ様、こちらの新しいポーションの配合について、ご意見を……」


 王都に新設された、あらゆる種族の者が登録できる「総合ギルド」の片隅。

 僕は、特別相談役という名の雑用係として、後進の冒険者たちの育成に励んでいた。

 僕の隣には、変わらずエリアーナとガルドがいてくれる。

 そして、僕たちを慕って集まってきた、エルフや獣人、ドワーフ、そして魔族の若者たちが、賑やかに笑っている。

 種族の垣根なんて、もうどこにもない。

 僕は時折、ギルドのテラスから空を見上げ、僕が創り上げたこの世界を見渡す。

 平和な街並み。

 人々の笑顔。

 活気に満ちた空気。


「悪くない世界だ」


 そう呟く僕の顔には、かつて追放された時に浮かべていた絶望の色など微塵もない。

 全てを乗り越えた、英雄の穏やかな笑みが満ちていた。

 無能と呼ばれた少年の物語は、ここで一つの終わりを告げる。

 しかし、英雄・佐藤拓海の伝説は、これからも、この新しい世界と共に永遠に語り継がれていくのだろう。

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無能スキル【模倣】で追放された俺、実は神々の力さえコピーできる【完全模倣・改】で世界を救うことになった件 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi

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