第3話メンヘラ薬剤師

(※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。)


メンヘラ、メンヘラと言うが──一か月待てる女は、本当にメンヘラなのだろうか。

いや、今こうして落ち着いているのは、インスタ配信に救われて“寛解中”なだけである。


私のメンヘラ史は、大学一年生から始まった。


LINEの“普通”がわからなかった。

絵文字もなく、スクロールしても終わらない長文を送りつける。


しかも彼氏へのLINEは、友達に添削してもらわないと心配で送れなかった。

添削を待てずに勢いで送ってしまい、そのあと「これで大丈夫かな?」と自爆する。


頭の中はいつも彼でいっぱいだった。

「どうしてこんなことを言ったんだろう」

「今、何をしてるんだろう」

「何を考えているんだろう」

──考えは止まらず、気づけば病んでいた。


しまいには「どうして会ってくれないの」と泣き続け、

「どうせ私のことなんか好きにならないでしょ」と投げかけては、

「そんなことない」と返してもらうのを望んでいた。


そして最終的には、PMS(月経前症候群)で我慢が爆発。

月初めになると彼氏に振られる──そんなパターンを繰り返していた。


メンヘラとは関係ないが、黒歴史もある。

こんなことがあった。


私は小説の言葉に酔いしれ、それをそのまま使いたくなるタイプだった。

当時ハマっていたのは野球小説『パットリー』。

キャッチングの場面で「ミットの音が心地よく響いた」という描写が、どうしようもなくお気に入りだった。


ちょうど好きな男の子が野球部でキャッチボールをしていたため、

聞こえもしないミットの音を想像しながら──

「ミットの音、心地いいですね」とLINEしてしまったのだ。


……あれは中二病か、頭がおかしかったのか。

学部も学科も違ったため、周囲に広まることはなかったのが唯一の救い。

今ではもう、立派なネタである。


今振り返れば、あれは異常だったと思う。

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連絡不精とメンヘラ薬剤師 ところてん@ @tokoroten1031e

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