第6話 プウェッラ

 恋をした理由はわからない。

 でも恋をした時のことはよく覚えている。


 私は神殿の中で北の山から聞こえるドラゴンの伸び伸びとした声を聞いた。その声に、自由でいいなと思ったのが、初めて彼を知った時だった。


 そして、私は美しいものを感じたのだ。


 ごう、と鳴る空気。すっぽりと覆い隠すような影、人々を襲う時の咆哮は私の癒しの力を求める、人々の声を覆い隠してくれた。


 私は盲目の姫。

 何も見えないから、何も知らないと思われてる。でも、目では見えないものを心では感じることが出来たのだ。


 本当は人々が私には関心がないことも、父や母は私には興味がないことも、みなが私の力だけを欲してたことも、全て全て理解していたのだ。


 だからあの日、私は彼に自由を見出した。

 彼だけは力なんて関係なく、私を見てくれると思ったから。


 私は盲目の姫、癒しの力を持つただの女の子。何も知らない顔をして、私はずっとあなたを知っていた。

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プウェッラ 綴咎 @tuduritoga

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