チビと虹の橋の約束

羊飼い

虹の橋のたもとで


生まれたばかりで病弱だった子猫の「チビ」は、優しい老婆に拾われた。老婆は一人暮らしで、チビを家族のように可愛がってくれた。チビは老婆のそばを離れず、いつも一緒にいた。ある日、老婆が病気で倒れ、病院に運ばれた。チビは、一人になった部屋で、ただただ老婆の帰りを待っていた。


チビが目を覚ますと、そこは七色に輝く虹の橋のたもとだった。


「ここはどこ…?」


チビが戸惑っていると、親猫の「ミケ」が現れた。


「チビ、よく来たね」


ミケはチビの頭を優しく撫でた。チビは嬉しくて、ミケに抱きついた。

しかし、ミケは「お前はまだ、橋を渡るわけにはいかない」と言う。


「どうして?」


「お前には、まだやり残したことがあるんだ」


ミケはそう言うと、チビを連れて、橋のたもとにある公園へと向かった。


公園には、元気な子犬がいた。子犬は、大きな親犬と離れ離れになり、毎日寂しそうにしている。子犬は、チビと出会い、毎日ブランコで一緒に遊ぶようになった。チビは、子犬と遊ぶことが楽しくて、少しずつ元気を取り戻していく。


「いつか、僕も虹の橋を渡るんだ」


子犬はそう言って、虹の橋をじっと見つめていた。


そんなある日、チビは子犬を連れて、虹の橋のたもとへ行った。すると、橋の向こうから、白い靄(もや)が立ちこめてくる。


靄の中から現れたのは、親犬だった。


「よかった、やっと会えたね…!」


子犬は親犬に駆け寄って、嬉しそうに飛びついた。親犬は、子犬を抱きしめ、幸せそうに微笑んでいた。


その光景を見て、チビはすべてを悟った。


ミケが言っていた「やり残したこと」とは、チビが子犬を虹の橋まで連れてくることだったのだ。


チビは、子犬と親犬の再会を見届けると、再びミケの元へ戻った。


ミケは、静かに言った。


「さあ、お前も行きなさい。お前の飼い主が、お前を待っている」


チビが、虹の橋を渡り始めると、チビの目に、懐かしい光景が映った。


それは、病気で倒れる前の、老婆との温かい思い出だった。


ブランコで遊んだこと。公園を散歩したこと。そして、いつも隣で、チビを優しく撫でてくれたこと。


チビは、涙を流しながら橋を渡りきると、そこには、笑顔でチビを待つ老婆がいた。


「チビ、よく頑張ったね…」


老婆はそう言って、チビを強く抱きしめた。


チビは、老婆の胸に顔をうずめ、ただただ泣いた。


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チビと虹の橋の約束 羊飼い @rabita

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