第29話 相続センターからの郵便と経験談、そして最終的な収支について
振り込みが終了した翌日、相談センターから封書が届く。
漏れなく書留なので、土日でも届くのだ。
内容は、解約手続きが終了しました、とのこと。
私が知った前日に手続きが完了したとのこと。
その日だったら、仮に連絡があっても対応できなかった。
銀行で手続きしてから8日後に解約完了、振り込みとなったのだ。
調停終了後16日掛かったことになる。
もっとも、私の事情で更に2日経過していた訳だが、書留より早く手続きが終了していることから、時間的なロスはほとんどないと見て構わないだろう。
月曜日、代償金が振り込まれたことを確認したとD男から連絡があった。
眠い目をこすりながら、銀行に飛び込んだかいがあったと思った。
しかしA男からの連絡は一切ない。
数日経っても連絡はない。
ショートメールを送ってはいるが、返事はないのだ。
いつもの通りだ。
A男は、自分にその気がないと一切の話し合いを拒むのだ。
逆に話し合いがしたいと思うと夜中にでも電話を掛けてくる非常識人だ。
まあ嫌がらせなのかもしれないけれど、A男の生活パターンを考えると、単純に嫌がらせと判断できないところもあり、真意の汲み取りに苦労する。
とりあえず、A男の要求通りの口座に送金したので、振り込まれていないとか言われることはないだろう。
これで一切の遺産相続調停は終了した。
C男の『兄弟とは縁を切りたい。兄弟が死んだ時は連絡欲しいが、それ以外は連絡して欲しくない』という言葉を残して。
まさか本当に自分が遺産相続でトラブルに巻き込まれるとは思ってもみなかった。
しかしよく考えると、トラブルの要因はしっかりあったのだ。
・ A男が親兄弟と疎遠であったこと
・ C男が先に遺産を譲り受けていたこと
・ 父親が遺言書を残しておかず、且つ分配方法等について何も残しておかなかっ
たこと
その他C男の家庭環境など、トラブルの種は目の前に転がっていたのだ。
それを血を分けた兄弟、そして恵まれている自分の環境だけを考えて、楽観視していたことが遺産分割調停に繋がったのだろう。
遺産分割調停中、同僚等が色々と経験談を話してくれた。
ケース1
調べてみたら親の遺産が借金だけだった。
これは事前に把握しておかなければ、3か月以内に放棄の手続きなんてできる訳がない。
仮に親に借金があったら、全額相続することになっていたことを考えると恐ろしい。
私の場合では、幸い借金がなかったから、残った資産を分配する方法だけを争っただけで済んでいる。
親が亡くなる前に、しっかりと兄弟と話をしたうえで親のことを調べておく必要があるだろう。
ケース2
兄弟に遺産を横取り(先取り)された。
私のケースとも似ているが、兄弟が親の通帳を握っていて、お金を使い込んでいたケース。
兄弟間で揉めながらも、何とか親の口座を解約したら残金が一万円だった。
その直後、シングル子持ちでパートの兄弟が、貯金もないのに戸建てを新築したが、どこにそんな金があったのか分からないとのこと。
うちの場合は、父親が気が付いたことから最小被害で終わった。
母親が亡くなってから、父親は子供の誰かに口座を管理して欲しいと言ったことから、一番近いところに住んでいるC男が手を挙げた。
父親が必要になった都度、口座からお金を下ろして父に届ける、更には買い物をして父親に届けるという約束だったが、必要以上に下していることに父親が気付き、警察を呼んで通帳やカードをC男から回収するという騒ぎを起こした。
C男は最後まで非を認めず、兄弟間では父親がおかしくなって騒ぎを起こしたと言い張っていた。
私は買い物の度に数千円上乗せして、家計の足しにしている程度だと思っていた。
しかし父親が亡くなった時に、C男は父親から預かっていたお金がある、とポロっと漏らしたことから、速攻で回収した経緯がある。
その金額は想像を超えていて、百数十万円。
どういう気持ちで持っていたのだろう、と不思議だった記憶がある。
このお金も相続財産に入れたが、C男に持たせていれば使い込みされていたのは間違いない。
ケース3
親の通帳を一人で管理している兄弟がいて、入出金を明らかにしない。
これも困った。
施設に入れている親の通帳を預かっている兄弟が、一切中身を見せない。
いくら話しても
・ 私が全部預けられているから
・ 親は全部孫に相続させたいと言っている
・ 認知症と言われているが、施設職員もお金に関してはしっかりしていると言っ
ているから、そもそも自分一人で管理しても問題ない
・ あんたが五月蠅いから成年後見人を付けるために動いている
などと言っている。
通帳のお金を使い切った後、不動産を売却され、そのお金も自由にされると打つ手がなくなる。
手を打つとすれば、銀行に親が認知症であることを連絡して、口座凍結を行い、施設費用等を折半で現金払いするなど、入出金を明確化させるしかないのではないか。
しかもその兄弟は、
・ お金を少しでも子供に残してあげたい
子供のためなら、あんたがどうなっても構わないし悪いこともする
と言って、親のお金を横領することを正当化する言動をしているとのこと。
これは私の場合もC男の奥様が、資産を子供に残したいという言動を頻繁にしていた。
C男も似たような言動をしている。
よく考えると、ケース3もC男も資産状況は似たり寄ったり。
特に子供たちは、どちらの家庭の子供も平均賃金以下で働いているので、地方と言えども家を建てるには非常に苦労する立場だ。
こういう立場の人たちが、『子供のため』と言って、親の資産を少しでも多くせしめようとしている姿を見ると、非常に悲しくなる。
ただ、子供たちは将来を悲観している訳じゃない。
現状で遊ぶことを最優先しているために、労働時間の長い職場や厳しい立場で働くことを嫌っているだけだ。
お金が無くても親に頼っているから、現状で十分満足なのだ。
しかも自分の日常の世話は親にしてもらうことを公言してはばからない者もいる。
親戚の立場から言わせてもらえれば、馬鹿〇〇なのだ。
そんな子供をダシに使われて、親の遺産を横取りされるのは納得がいかない。
そうそう、最終的な収支についてだが、遺産は他の兄弟よりも『2円』多かった。
これは、3人で割り切れない数字があったからだと思う。
そして、父親の口座を解約したら、利息が付いていた。
調停を申立ててから、成立するまでに、利息決算日を迎えていたため、『5122円』
多く受け取ることになった。
つまり他の相続人よりも、『5124円』多く受け取ることになった。
遺産相続調停に掛かった累計金額 16950円
多く受け取った金額 5124円
全経費 11826円
と言うことで、調停に掛かった費用は、16950円だが、5千円ほどのお金が入ったことから、入金分を相殺すると、経費としては11826円で確定でした。
不要な書類のために、千円ほど余計に掛かっているが、一万円を切ることは、私の場合できなかった。
しかし、これが兄弟の少ない方だったら、1万円を切ることは十分可能だったと思う。
もっとも、この金額には、コピー代やガソリン代などは含まれていない。
また、平日に対応した日数については、9日間。
調停が続いたとしても、有給休暇は充分残る計算だった。
また、わが社は夏休みで5日間有給休暇がプラスされることから、有給休暇+5日間は平日使えたので、まだ余裕はあった。
終わってみれば、遺産分割調停は、あっさりと済んでしまった、という感じだ。
インターネットで調べてみると、弁護士を頼んでいたら私の場合、100万円ほど掛かっていたようだ。
それを考えると、自分でやって良かったと思う。
お金の問題もあるけれど、自分の責任で全部行っていたことから、誰かのせいで思い通りにいかなかった、と後悔することがないので、他人に責任転嫁する気持ちが発生しなかったのが一番良かったことかと思う。
ただ、父親の残した財産が簡単なものばかりで、且つ大体のものを把握できる状況だったことが幸いした。
知人で弁護士を頼んだ人は、財産目録などが自分では作れなかった、と言っていましたので、弁護士などの法律家を依頼するしないはその人が置かれた立場によると思います。
とりあえず、親父、お袋、遺産は貰ってやったぜ。
あの兄貴もしっかり受け取ったぜ。
兄弟げんかは引き分けってところだよ。
全員痛み分け的な感じ?
遺産相続は放置しちゃダメだということを反面教師の親から学んだよ。
俺は早速遺言書を作るよ。
まあ天国で孫たちを見ていてくれ。
俺を含めた子供たちのことは放っておいていいからさ。
墓参りには月一以上で行っているけど、もう少し頻度は落とすよ。
ちょっと俺の家から墓まで近すぎるよな。
そうは言ってもその墓を選んだのは俺だけどな。
天国に行く直前で墓を返すなよ。
墓探しが大変だっただろ。
言いたいことはたくさんあるけれど、ひと段落したからな。
それじゃあ。
目指せ1万円調停! 1万円で遺産相続調停はできるのか? @mr-gyousei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。目指せ1万円調停! 1万円で遺産相続調停はできるのか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます