ひとり 🌾

上月くるを

ひとり 🌾



秋服の裏地のすべり楽しめる

幾年ぞあたまに馴染む秋帽子


やや寒や書斎の如き喫茶店

注文の黒エプロンや一重菊


鷺ひとりわれもひとりや稲の空

コスモスや道にいちまい鳥の羽


秋の蛙なべて無言と言へばいへ

ミュと言ひし猫の口もと白粉花


一雨に紅の深まる秋の薔薇

ほの甘しうす紫の木通の実


がぎがぎと山巓浮かす霧の海

薄紅葉鉄鎖の錆びし閼伽流山あかるさん


先競ひ弾ます息や下り簗

六年の多作多捨なり秋簾


秋茱萸にアンパンマンの正義かな

なぜいまとつぶやいてみる秋の蜂


わらわらと堀から外へ蓮の実

地中には地中の暮らし秋の虹


秋思して黄昏にゐる一個人

夜顔や回送バスの窓にかげ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとり 🌾 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ