特典チートはいらないっていったのに

魔王エビフライ

神殺し。

ユタカは目を覚ますと見渡す限りまっさらな空間にいた。

いや、まっさらな空間だと思ったが瞬きの間すらなく明らか場違いな黄金の椅子にでっぷり太った髭もじゃが座っていた。

「目が覚めたか、色々省くが貴様らの世界でいう異世界転生とやらをしてやる。あとはまぁ、規則でな。前世でも不憫極まりない貴様らの様な底辺は次の世はおままごとチート無双をさせてやる決まりになっておるのだ。

、、、故にほれ、その中からまだマシな才能を選べ。」


どうやら普通はこの空間に呼ばれるのは

言い方は悪くなってしまうが才能がなく、日々を熱もなく、なんとなくで生きている者、

つまりは『持たざる者』が呼ばれるらしいのだが、、、、

俺はありとあらゆる物に恵まれ、

『持ちすぎる者』故に世界に退屈していたからここに呼ばれてしまったっぽい。


そして『選べ』、と投げられた巻き物をみると

そこにはありとあらゆる才能が並んでいる。

どうやらこの中から一つ才能を選ぶとその才能をいい感じに調整した上で100倍にして異世界に送ってくれるらしい。


例えば『博識』の才能。

前世で知ったかぶりをしているとそれが100倍強化されて一度視た物を2度と忘れない上、応用できる知識として習得できる。

例えば『無双』の才能

脳内の妄想でもいいので無双夢想した経験があればいいのだとか。


「えと、俺のいく異世界には他にも転生者が?あと、この才能の人気なのとかって?」


「はぁ、此度は小賢しい系か、頭悪いくせに質問なんぞしおって、黙って選べんのか?自分で考えれんの?その頭は飾りか?飾りなんじゃろうなぁ。

貴様の様な『自分は他とは違う、自分は賢い』と思い込んでおる愚物が一番、、、まぁいい。

一つ、転生者は今後MAX100人まで入る。

100を超えると別の枝並行世界に飛ぶようになっておる。貴様は45番目だ。だが、異界は地球の500倍の国土を誇る故、他の地球人と会う事はそうそうないだろうし、あったとしてもお互い別の場所でテリトリーを広げれば異世界の民にチヤホヤしてもらえるから安心せぃ。

それに転じゃなく転じゃ。

異世界の民が転生チートを持たせた転生者愚物より優秀なこともありえる故、見抜くことなぞ出来はせん。


二つ、大体は『睡眠学習惰眠・狸寝入り』とか『万能飽き性』とかとっていくな。

ちと悲しい奴だと『耐久力サンドバック』や『反撃頭の中で』などを取ってく奴もおる。

まぁ聞かれたらついでに答えるとこの場で適当に棒を振り回して『剣術』、詠唱(嗤)を唱えて『魔術師』をとるやつもいる。」


はへーと自分で聞いときながら話半分に流し巻物を下の方までみていく。

てか、前半部分鬱憤溜まりすぎだろ。


「ちなみに特典取らないってのは?」


「、、、はぁ。自己満オ○ニーにワシを巻き込むな。俺はチートなんてなくても〜なんて考えてんだろうが、貴様のような愚物が神の恩恵も無しに現代知識無双(笑)でもするつもりか?

黙って適当なの選べ。」


そうはいってもなぁ、とユタカは考える。

ユタカは生前才能が有り余りすぎて世界が退屈だった。資産家の次男坊に生まれ、自由気ままに過ごし、小学では適当に描いた絵が父経由で世界に羽ばたき20億で落札され、中学ではピアノで全国、高校では陸上競技でインターハイへ、大学も自主学習0時間で最高学府へ。

おまけに貌もイケメンだった。

まず顔で人が寄って来て更に才能で皆の目を引く。なんなら勝手に漏れ出るカリスマ性は新興宗教すら作れるほどだった(興味もないし、怖くてやってないけど)。

生前がむしろ転生体だろ!という恵まれっぷりだったからこそ、ない物ねだりで生まれた酒瓶片手に地べたに座り込むド底辺への憧れ。


そんなことを胸に抱いたからだろうか、くるくるめくる巻物の中の一つの才能に偶然目が止まる。

その特典の名は『神殺し。』

神は先ほど選んだ才能を100倍にして異世界へ送ってやると言っていた。

当たり前だが、俺はただの日本人だったのでいくら恵まれていたとかなんとかいっても神なんぞ殺した事がない。

簡単な算数の問題だ。0×100=0

ユタカは即決した。

「これでお願いします!」


神はゴミを見る目を向け、

「今回はより一層酷いな。まさか説明を理解できておらぬとは。あのな、、、」

ともう一度、子供を諭すようにゆっくりと、

何度も言葉を推敲、咀嚼し、

それを選べば神殺しの能力が手に入るわけではないし、生前やった才能を100倍にするものであって元々ない物はいくらかけても無駄だよ、

ほら、剣術とか成長補正とか取っときなよ。

いずれ神も殺せるさ!とわかりやすい貼り付けた笑顔で説明してくれた。


勿論ユタカはそんな事はわかっているし、

転生特典とか超いらないから選んでいるので

そうだねーうんうんと適当に流し、

「あっ!特典って事ならこの顔をどうにかしてよ!ちょっと美形すぎるんだよね俺。

あともし知能とか数値化して測れるなら能力下げて欲しいだけど」


神は憐憫の目を向けた。

今更ながらこの空間では人の子は存在階位が低く、顔などは神からはもやもやした霧のようにしか視えていない。

(例えば散歩する時、通学する時。多分地面ではアリが生活してるのだろうが、我々の目はその情報をわざわざ掬い上げないだろう?それと近い感じでここではそれが存在のレベルという明確な基準で情報の処理が行われない。)

神がズームすればピントも合うが、する意味もないため、神はもう面倒だ、と『神殺し』の才能をとっとと与え、異世界へ送る準備をした。



そして物の数秒で準備が整った。

「あー勇敢なる異世界の戦士よー。

転移の準備が整った。あと3分もすれば現地へと転生される。最後に聞きたい事があればなんでもきいてくれー」

圧倒的棒読みで椅子に肘をつきながら視線も向けずに神はいう。


「あーさっき言った知能と顔の件よろしくお願いします。」


あらためて言われ神は「あー」と手元で数値を弄り始める。神は今回の転生者が自信が天元突破している無能だと思っていた。なので下げてとお願いされたが、偏見でこれ以上容姿を悪くしたら魔物と間違えられるだろ、

などと考え、、、


結局最後まで説明を理解してもらえなかったことから、これ以上知能下げたら言語すら使えなくなるんじゃね?と考え二つの数値を下げてという要望とは真逆にぐぐっと上げようとした。


、、、のだが、そこで違和感に気づく。

上にあげようとした能力値を弄るバーが動かなかったのだ。

今までこんな事はなく、手元をみると

【容姿:100】(100点満点)

【知能:999IQ150(+894)】(神が弄れるのは999まで)


ここで初めて神は地面のアリ、路傍の石ころを情報として処理をする。モヤモヤをよくみると

そこには神が皆で三日三晩かけて作った物より更に精巧な風貌と体躯を持ち合わせた美青年がいた。

「は?」

「ん?」

そのお互いの一言を最後に3分が経過し、魔法陣が起動する。


神は一瞬あまりの青年の美しさに飛んだ要望をすぐさま思い出し、容姿と知能を下げようとするが、既に転送は終わってしまい、青年は生前の才能のままに、更には才能『神殺し』をついでに異界へ飛び立った。


「、、、、、、、、、、ええ、、、なにアレ。え、てか、かっこよ///」

ワシ性別変えよ。と髭もじゃの神は容姿端麗な女神へと姿形を変える。

助言と称してユタカを見守りストーカー、手助けをする事を決意。ついでに近くの森に神威ましましで作った装備一式もメッセージつきで送りつけ、そこでふと神は思い出す。


「そいや、神殺しじゃっ、、だったかしら?」

と呟き、まぁ白紙であるだろう神殺しの生前のリザルトを確認すると、「な、、な、、、なに、、、こ、、れ????」


そこには夥しい数の殺された神が並んでいた。

その殺し方の多くは圧殺。


話は変わってJAPAN、日本、ジパング。

ユタカの出身の国にはこんな神がいる。

一つ、八百万の神。

それは、というより、それらは神は数えきれない程多くある存在する。という概念や考え方。

一つ、付喪神。

それは、長く使った物には魂が宿るという考え方より生まれた神々。


そしてそれらが時代を経て拡大解釈によりあらゆる観測のされ方をした。


本来は0であるはずだった『神殺し』という才能。だが、ユタカという才能の権化が才能がないことを許さなかった。そして『広義の意味で』『拡大解釈すれば』の要領でこねくり回された成果が100倍されたことでユタカの夥しい数の神殺しのリザルトは


毎食の米を食うことで達成された事になっていた。


ユタカの家は父方の祖父が農家であり、その1000年以上使われているらしい事に今なった土壌で育てた米は一粒一粒に神が宿るらしい。

そしてそれを歯で噛んで圧殺して食べていたユタカは一日だけでも約20000体の神を殺した事になる。

それを毎日欠かさず約20年。

その本来目覚めるばすのなかった才能はユタカという才能開花装置によって100倍の強化どころか、発現したその瞬間に指数関数的に才能が伸びた。



程なくして下界には(ユタカ誕生に合わせ因果を逆流して作られた)伝承通り、13年周期で月が姿を隠す新月の夜を月に変わって照らすと言われた赤子がシャリール王国の辺境の地にて男爵家の三男坊として生まれる。


ついでにそのユタカの誕生により、世界という器のバランスそのものが崩壊したことでその世界にはあらゆる伝承や、時代背景のトチ狂ったサイバーパンクの国などがごちゃごちゃに生まれ、世界中の人が明らかにずれた世界の足跡の齟齬に嘔吐をした。


更にそこに『神殺し』の才能により存在値がバグり散らかしているユタカに加え、ユタカ個人に肩入れする神の存在により、神の対となる悪魔種などが雑魚エネミーとしてその辺の野原にリポップする難易度が頭おかしい世界になり、それ以前に転生していた44人の転生者より原住民の方が素で強く、優秀になっていた。


未開の地の猿め、と罵り顎で使っていた転生者のその後を知るものはいない。

弱い者を助けるのは強者の勤め!といい、チート能力にアグラを掻き、ジイ行為の為に人々を守っていた転生者は気づけば自分が守っていたはずの村人に『力がないのに勇気を出して自分たちを助けてくれた彼こそが強者であり、勇者だ!』と崇められていた。


ユタカはユタカで自身の身分、容姿、更には劣化していないどころか子供になった事で更に柔らかくなった脳みその優秀さに愕然として膝を折る。


そしてユタカは力を隠し、魔法で容姿も平凡に隠蔽してなんとか最悪で最高の人生を送ってやる!と胸に決意するが、、、


なんやかんやで、

気が付かぬ間に、

バタフライ効果だけで、

最早因果関係を無視して、


惑星をミクロンレベルで分解する事を企む悪の組織や、あと少しで世界の半分を手中に収めれた魔王や、あとはなんか色々悪いやつなどをバッタバッタと倒しまくり、前世以上に人に囲まれ、、、かけたり!ギリギリ逃避と、

バタバタな生活を送るのだが、

それはまた別のお話。



「あんのクソガミ!ぶっ殺してやる!!!」

「まってろよ!!俺の最悪最高な人生設計!!」











以下、蛇足。


Ps.ぶっ殺すと口にしただけで

『神殺し』(殺神×1億Over)の効果で例の神は3年間瀕死状態で消滅の際を彷徨った。


助言とかいってやってくる女神が例の髭もじゃと同一神物とバレたら多分普通に滅っされる。

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特典チートはいらないっていったのに 魔王エビフライ @take_riry

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