ライブハウスで歌う少女と付き合うことになった、中学生の友斗。しかしそこにはかすかな違和感が。同じ頃、友斗の周囲の人々に、不気味な包囲網が。やがて友斗は、終わらせたはずの過去に直面させられる。不穏な空気を感じて集まった仲間たちに、癒えることのない傷を負った獣たちが牙を剥く。過去は変えられない、どんなに願っても悔やんでも。ならば前へ進め、心を満たすため、大切なところへ帰るために。立ちふさがるものをたたき伏せてでも――男の意地と矜持がぶつかり合う、ワルたちのバトルが今作でも開幕。互いに引き下がれない理由がしっかりと語られているためか、その迫力たるや並じゃない。そして苦い思いとともに成長する中学生男子。心身ともに手負いとなった男たちが帰るところは……。BL要素はありますが、詳しい描写はほとんどなく、心の絆として読み切れます。熱さと、やわらかな心のひだとが丁寧に描きこまれた、男のロマン。ちょっとスカッとしたいあなたに。
不良&格闘小説大得意の亜咲加奈さん渾身の一作です。
毎日、夜中の1時まで一心不乱に書いたとおっしゃる通り、大変な力作になっています。なにしろ、一つだけでも小説のテーマになりそうな、男同士の友情・愛情、不良少年の成長、家族愛、陰謀と謎解き、そしておなじみの格闘と、もうてんこ盛り。これは長編だからこそ可能だった、多面的な構成でしょう。
そして、本作は、カクヨムプライベートコンテスト「ブロマンスBL」の出品作でもあります。審査員の編集長がBL好きであることから、今回は加奈さんのBL愛が大解放! 各話ごとに、美青年日野君と不良青年余田君のイチャコラが展開されております。BL好きにはたまらない構成でしょう。もっとも濡れ場などはなくお尻つねるくらいで(笑)、もっぱら心と心の重なり愛と言った風情で、そこまでBL色は濃くありません。わたくしでも大丈夫なので、万人向けとすら言えるでしょう。中盤では、危機に立ち向かうにあたって、「明」「誠司」と名前で呼び合うようになる心の進展が!
キャラも全員魅力的です。おなじみの日野君余田君コンビ、その不良仲間だったリーゼント宮沢さんとおとぼけ富田さん、中学生の友斗とその母、あと今回はニューハーフの信子ママがいい味出してます。加奈さんの描く男は、みんな男らしくて潔くて強くてカッコいいですね。
また、いつものことながら、格闘シーンが秀逸。加奈さん本人が格闘技をやっていることもあり、動きの一つ一つが、そしてその意図が、脳内に画像となって浮かびあがります。イーストウッドの名作「ダーティーファイター」のような、迫力あるストリートファイトが展開されます。また敵役も強くてかっこいいんだ。ここ大事ですね。
それと、謎解きは、まあご紹介するとネタバレになりますから遠慮しておきますが、特に作者も隠すような意図はなく、すぐに「あー、この人犯人」ってすぐ分かりますが、そこは本筋ではないのでいいでしょうw
最後の最後で、「恋を歌うビースト」のフラグが回収され、どのキャラも傷つきながらも、明日を向く希望を抱いたところでエンディング。読後感も爽やかです。
主人公の友斗も、不良から脱却し、親子愛から友情、そして愛する人を勇気づけるところまでの成長を見せ、読者は「この子、もう大丈夫だわ。立派に育てよー」とエールを送ってページを閉じるのです。
長々かいてしまいましたが、このお話の魅力は数えきれないくらいあります。
BL好き、格闘好き、の方に是非お勧めしたいです。
この物語は、ただの不良喧嘩ものでも、ただの青春ドラマでもありません。
読んでいて感じたのは、暴力や友情といった言葉だけでは語りきれない、人間の矜持と弱さ、そして愛情の物語でした。
まず圧倒されたのは、喧嘩シーンの描写です。拳や蹴りの描写は確かに生々しいのですが、それ以上に「肉の削り合い」ではなく、「魂の削り合い」に達しているのが凄くて! 痛みや緊迫感が伝わるだけでなく、そこに載る感情や覚悟まで描き切られていて、一瞬たりとも目が離せません。
普通なら、書くのにカロリーが要るから消耗して避けたくなるような領域なのに、思い切りそこに踏み込んでいて。
そのうえで見せるのは痛みや暴力ではなく、「負けられない理由」「守りたい誰か」「意地と矜持の突っ張り合い」です。
そして、特に自分の心を打ったところなのですが、見当違いだったらごめんなさい。それでも言いたくて。
この作品の凄さは、殴り合う男たちの熱だけじゃなく、読者を全力で熱いドラマに引き込みにきている作者さま自身のエンターテイナー魂にもあると思うんです。 物語の熱量と同じくらい、読ませる力・魅せる気迫が凄くて。
こんなの、簡単に書けるはずありません。だからこそ響くんです。
そして物語の魅力は、戦いの向こう側にある静かな優しさや寄り添いにもあります。
大切な人を思う気持ち、誰にも言えない愛情や孤独、赦されない道を選ぶ覚悟……。
それらが丁寧に描かれることで、どんな激しいシーンも、ただの暴力ではなく、ちゃんとドラマとして心に残って。
喧嘩シーンで泣き、会話シーンでまた泣く、そんな作品です。
さらに恋愛要素や家族の絆も絶妙で、特に、人を愛することの痛さと愛されることの救いが胸に染みます。
登場人物みんなが誰かのために戦っていて、それは拳だけでなく、歌や言葉や沈黙でも戦っている。そんな姿が、静かで、強くて、美しい。
読み終えた時、心に残るのは爽快な達成感というより、「ああ、生きてるって、こういうことなんだ」と思わせてくれる感覚でした。
刺さる人には刺さり過ぎる……そんな作品です!
熱い物語が読みたい人へ。
魂を込めた喧嘩と、本気の愛と、人間の弱さと強さに触れてみたい人へ。
全力でオススメします(๑•̀ㅂ•́)و✧
ライブハウスで歌を披露する、謎めいた女子高生・和奏に片思いする中二の友斗。
友斗が暴走族テンペストの元構成員だったことがきっかけで、報復請負組織ビーストと対峙する。
友斗が慕う余田明、その悪仲間の富田、宮沢、そして余田の恋人・日野誠司。
彼らが織りなす、拳で語る物語に目が離せない。
BGMにモーツァルトの鎮魂歌ニ短調 『Lacrimosa』が響き渡る中を、余田・富田・宮沢がビーストの男たちと喧嘩を繰り広げる様は圧巻。
また、余田明と日野誠司の愛の時間は、月並みな男女の恋愛ではありえないほどの純粋さと色気を併せ持っている。
こういう恋愛を書かせたら、右に出る者はいないと言われるアサカナ先生である。
恋のスパイス且つ重要な助言者となる信子ママがまた、いい味を出してる。
みんなも大好きになるはずだw
さあ、諸君(お前ら)準備はいいか?!
男同士の愛に酔いしれ、男たちの因縁のバトルに胸を熱くする時間だぜ!