第4話

 ゲーム開始から六時間。

 大吾は眠れぬ夜を明かした。

 昨夜出会ったおっさんこと、南雲順次が見張りを買って出てくれたが、それで安心して寝られるかといえば答えは否だ。

 なんとか寝ようと試みるのだが、なかなか寝付くことができなかった。

 尤も、この状況でスヤスヤと寝られるのは、よほど神経が図太いか、頭のネジがどこか歪んでいる人間だけだろう。

 大吾はそのどちらでもなかった。


 目を閉じても、南雲の話が頭の中でグルグルとうずまき、狼に殺されそうになった場面を思い出し、最後には母親の顔が思い浮かんで目を閉じていられなくなる。

それをずっと繰り返し、気が付けば夜は明けていた。

ところどころ夢か現か判断ができない時間があったので、少しは寝れたのかもしれないが、ほぼ寝ていないようなものだった


「おはようさん」


 大吾が身を起こすと、南雲が声をかけてきた。

 床の上で寝たために痛む体をほぐし、立ち上がる。


「若いねえ。おっちゃんなんか床の上で寝たら体バキバキになって死んじゃうよ」


 この状況でもからかうように笑う南雲の精神を疑う。

 やはり、軽そうな雰囲気のこのなんの変哲もないおっさんでも、数度に渡ってこのゲームを生き残っているだけのことはあるということだろうか。

 大吾はそんな益体もないことを考える。


 南雲のもたらしてくれた情報はどれも非常にありがたいものだった。

 過去のゲームの様子や、生き残りやすい行動、逆に死にやすい行動、などなど。

 昨夜は現実を受け入れられず、不用意に出口に向かってしまったが、それは悪手だったようだ。

 南雲いわく、脱出は諦めたほうがいいらしい。


 今までのゲームでも、ゲームの舞台から脱出しようとした参加者がいたらしい。

 が、それらはすべて失敗に終わっている。

 出入り口になりそうな場所には、狼の中でも特に危険な武装をしたのが、ガーディアンのごとくいるのだそうだ。

 そして、今回もまた。


 大吾は昨夜その狼に殺されかけている。

 あの、重火器を持った着ぐるみの狼。

 本土に繋がる橋の前にいたことから、あの着ぐるみが今回のガーディアン役なのだろう。

 大吾が逃げられたのは、あの着ぐるみが参加者を始末するよりも、橋の防衛を担当していたからだろうと、南雲は語った。

 その気になれば大吾たちを追いかけて、あの重火器で容赦なく殺すこともできたはずだ。


 橋を渡るにはその着ぐるみをどうにかしなければならない。

 それ以外でも、海を渡るのは危険だ。

 狼をどうにかしても、ゲームの舞台の外に出れば、主催者は容赦なくその命を刈り取りに来る。

 ゲーム期間中、舞台にいる限りは狼以外の主催者側の人間が参加者に危害を加えることはない。

 そこらへん、主催者は律儀らしく、ルールを破ることはないらしい。

 しかし、逆に言えば、ルールを破った人間には容赦がないとも言える。

 ルールを破り、舞台を出た人間の末路は、死しかない。


 南雲が知る限り、脱出を試みて生き残った参加者はいない。

 仮に生き残ったとしても、その後殺されてしまうだろうと語っていた。

 はっきりとは語らなかったが、南雲はそれが可能なほど主催者には力があると確信しているようだった。

 主催者に関して深く考えるなと南雲は忠告しているが、そのとおりかもしれないと大吾は考える。

 少なくとも、並の組織ではないのだろう。


 南雲の話を聞いて、脱出するという選択肢は外す。

 残る選択肢は、七日間できるだけ気配を消し、狼に見つからないようにひっそりと過ごすというもの。

 それが一番手堅く、生き残る確率が高いと南雲は語った。

 それでも生存率は低い。


 南雲は前回と前々回の二回、このゲームに参加している。

 前回は狼が一人を除いて全滅し、参加者同士の殺し合いが激しくなるような、荒れたゲームになったそうだ。

 最終的に生き残ったのは四人。

 狼も合わせれば、百十人いた人間のうち、五人しか生き残りがいないということになる。

 前々回のゲームは、前回に比べれば穏やかだったそうだが、それでも生き残った参加者は十人に満たない。

 生存率10%未満。

 それが、大吾の置かれた状況なのだ。


「そいじゃあ、おっちゃんたちはそろそろ移動しようかね」

「え?」


 南雲の言葉に驚いたのは、彼のパートナーである鈴木瞳だ。

 瞳は大吾の見立て通り、母親がブラジル人のハーフだという。

 このゲームに参加した理由までは聞いていないが、今回初参加ということで、経験者である南雲の行動に従うことにしているようだ。

 が、南雲本人が語るあまり動かないでどこかに隠れているのがいいという方針と、今言った内容が食い違うことから疑問の声を上げたのだろう。

 実際、大吾も南雲の言葉は意外だった。

 できればこのまま一緒に行動していたいという思いもある。


「ここで一緒に隠れていればいいんじゃないか?」

 

 大吾はそう言って南雲を引き止める。

 大吾は母親のせいで女性に苦手意識を持っている。

 優と二人っきりという状況は息が詰まるのだ。

 それを抜きにしても、経験者である南雲がそばにいてくれれば心強いというのもある。


「悪いけど、おっちゃん他人は信用しないことにしてるんだわ。だから一緒に行動とか勘弁」


 しかし、返ってきた答えは、辛辣なものだった。

 それは、大吾のことも優のことも、パートナーである瞳のことさえ信用していないと語っていた。

 パートナーを見捨てれば、自分も死んでしまうから仕方なく一緒に行動しているだけで。

 そんな心の声が聞こえてきそうなほど、ヘラヘラした口調とは裏腹の、冷え切った考えが見えてきそうだった。


 大吾は引き止めても無駄だと悟る。

 むしろ、一晩だけでも一緒にいてくれたのが奇跡のようだとさえ思える。

 おそらく、何もわかっていない大吾にレクチャーを施し、少しでも生存率を上げさせようとしたが故の行動なのだろう。

 それも、おそらくは大吾のためではなく、大吾が生き残れば自分も得をするという、あくまで南雲自信のことを考えた上での判断なのだろう。


 大吾が生き残ることによって、南雲にはいくつかのメリットがある。

 一つは生き残る人数が多ければ、その分狼の狙いが分散されるということ。

 一つは同じ赤組である大吾が生き残れば、その分赤組が勝利しやすいということ。

 あとは、期待はしていないだろうが世話を焼いたことで、恩義を感じた大吾が今後南雲の助けになることもありえる。

 大吾もすすんで南雲を助けようとは思わないが、もし目の前で死にそうになっていて、それを助けられるような場面に出くわせば、おそらく助けてしまうだろう。

 大吾は優しくなどないが、人でなしでもない。


 しかし、メリットだけではなく、デメリットも存在する。

 それは大吾が南雲の敵となる可能性。

 同じ赤組でも、敵になりうることは南雲自身の口から語られている。

 直接的な敵対はしなくとも、食料の確保などではライバルとなる。

 それらデメリットを、南雲は考えていない。


 いや、考えた上で敵になりえないと確信しているのだろう。

 現に、大吾はすすんで南雲の敵になろうとは思っていない。

 打算まみれの助言とはいえ、それで大吾が助かったのは事実なのだ。

 恩は恩。

 恩を仇で返すほど、大吾は腐っていない。

 真人間には程遠いかもしれないが、それでもクズにはなるまいと大吾は思っている。

 そう、あの母親のようなクズには。


「わかった。健闘を祈る」


 南雲は一瞬キョトンとした後、プッと吹き出した。


「健闘を祈るとか、堅苦しい言い方するねえ。ま、坊主に祈られるまでもなく生き残ってみせるさ。じゃ、行こっか瞳ちゃん」

「は、はい」


 見かけよりもずっと大人しそうな瞳を連れ、南雲は去っていった。

 





 残ったのは、大吾と優だけ。

 気まずい空気が流れる。

 わずか一晩一緒に過ごしただけの赤の他人なのだから当然なのだが、それでなくても大吾は女性が苦手だし、優も積極的に喋るような子ではないようだ。

 しかし、これからゲーム期間中一緒に過ごさなければならない相手でもあるので、無下にはできない。

 その点大吾は既に失敗しているとも言える。

 なにせ、昨日はまともに会話らしい会話をしなかったのだから。

 むしろ会話を拒否してすらいた。

 しかも、南雲とのやり取りで、大吾がこのゲームにいかに慣れていないかを露呈させてしまっている。

 優から見れば、頼りないことこの上ないだろう。

 優の心の中での評価が、知りたくない大吾だった。


「改めて、これからよろしく」


 しかし、歩み寄らねば始まらない。

 しょっぱなからマイナススタートだろうが、生き残るためにはパートナーとの信頼関係もなくてはならないだろう。


「あ、はい」


 意表をつかれたのか、優が少し間の抜けた返事をする。

 その返事からは、嫌悪などの悪感情は感じられない。

 ひとまず、嫌われてはいなさそうだ。

 それを態度に表さないだけで、内心は違うのかもしれないが。

 態度に表れないのであれば、当面は問題ないと大吾は考える。


 大吾も仕事をしている関係上、どうしても嫌いな相手と一緒になることだってあった。

 特に大吾は中卒で仕事を始めた関係上、どうしても年齢的なことで責められることがある。

 若いというだけで、嫉妬の対象になることもあるのだ。

 そうやって僻んでくる相手とも、表面上は仲良くしなければならない。

 それが仕事というものだ。


 命の懸かったこの状況で、そういうビジネス的な接し方はどうなんだと思うが、イヤイヤ付き合っているのがまるわかりな態度よりも、表面上はそれを感じさせない方が大吾の精神衛生上いいのも確か。

 失った信頼は一朝一夕では回復しないが、文字通り命懸けの状況ならば挽回のチャンスはいくらでもある。

 挽回すらできずに死ぬかもしれないということは、あえて考えない。


 実際には、大吾が考えたほど優は悪印象を持っていないのだが、それを大吾が知るすべはない。

 正面から女性の内面に踏み込めるほど、大吾は女性慣れしていないどころか、女性が苦手なのだから仕方がないのだが。


 とりあえず、今いるジェットコースターの発着上を拠点にし、身を隠すのがいいだろう。

 問題は食料だが、これは南雲の話にあったミッションの発令を待つしかない。

 一晩何も飲まず食わずなため、喉の渇きと空腹が酷いが、我慢するしかない。


 そうなってくると、ミッション発令までやることがない。

 再び気まずい沈黙が続く。


「えーと。いい天気ですね」


 優の方から話しかけてきた。

 しかし、それは話題に困った時の天気の話である。


「そうだな」


 大吾は肯定する。

 実際いい天気だ。

 絶好のレジャー日和である。

 場所も遊園地で、これで殺伐としたデスゲームに巻き込まれていない身だったら遊びたい気分になっただろう。


 会話はそれで終わった。

 再び訪れる無言の時間。

 二人が打ち解けるのは、かなり難儀しそうだった。











「南雲さん、よかったんですか?」


 瞳に問いかけられ、南雲は振り返る。

 今は隠れられるところを探して移動中だ。

 あまり移動中に話すのは良くない。

 近くに狼や青組の羊がいたら、その話し声で発見されかねないのだから。


 話し声くらいで、と思うかもしれないが、無人の場所というものはかすかな物音でもよく響く。

 南雲からすれば、瞳の足音さえ気になるくらいだった。

 その状況で声量を落としもせずに話しかけてくるなど、南雲からすれば自分の居場所を知らせて回っているかのような愚行だ。


「しー」


 その意味を込めて、南雲は人差し指を口に当てて、静かにするように促す。

 しかし、瞳には南雲の言いたいことは察することができなかったようだ。


「からかわないでください」


 からかったわけじゃないんだけどなー、と面倒な気分になりながらポリポリと頭を掻く。


「瞳ちゃん、声量ちょっと落とそうか。おっちゃん君のうるさい声で狼に見つかるとか間抜けな最期は嫌だからね?」


 飄々とした口調ながらも、言っている内容には容赦がない。

 そのストレートな物言いに、瞳も自分が犯したミスに気づく。

 顔を青くするが、南雲がフォローをすることはない。

 その余裕がない。


 瞳の肩を掴み、その場にしゃがむ。

 南雲は常に遮蔽物に隠れるようにして進んでいたので、それだけである程度身を隠すことができる。

 いきなりの行動に驚く瞳だが、ついさっきの南雲の指摘を思い出し、咄嗟に声を上げるようなことはしなかった。


 南雲はそっと遮蔽物からナイフの刀身を出す。

 瞳にも内緒にしていたが、南雲がこっそりと持ち込んでいたものだ。

 鏡のように綺麗な刀身に、青い服を着た二人の羊の姿が映る。


 キョロキョロとあたりを見回す青服の二人。

 瞳の声に釣られて出てきたのだろう。

 キョロキョロしているのは声の主である瞳を探しているものだと思われる。


 ただし、その表情は情けない。

 男女ともに疲れきった表情をしており、悲壮感が漂っている。

 今にも不安に押しつぶされそうな、その服にも劣らない青い顔だ。


 南雲は警戒のレベルを一段階下げる。

 あれはどう見ても、殺し合いができる雰囲気ではない。

 瞳の声を聞いて来たのは、単純に人恋しさから。

 とにかく誰でもいいから一緒になって、不安をやわらげたいという、序盤脱落者の典型的なダメな例。


 今回のゲームでは男女二人一組なので少ないだろうが、南雲の参加した過去のゲームでは同じように不安にとりつかれた参加者が、他の参加者と一緒になりたくて徘徊していた。

 そして、動き回ればそれだけ狼に見つかりやすくなる。

 死がすぐそこにあるという緊張感から、人を頼りたくなる気持ちが出る。

 皮肉にも、死の恐怖を紛らわせるための行動が、死ぬ確率を高めてしまう。


 おそらく、今南雲たちの目の前に現れた二人は、どちらも初参加なのだろう。

 焦燥した顔からもそれが伺える。

 そして、南雲の見立てでは彼らはまず生き残れない。


 なぜなら、その背後から狼が迫ってきているのだから。


 大柄な男だ。

 その手には、マシンガンと思われる銃が握られている。

 口元には歪んだ笑み。

 哀れな羊を狩るのが楽しくて仕方がないといった、快楽殺人者の顔。


 南雲はナイフを引き、瞳の口を押さえる。

 同時に鳴り響く、連続した銃声。

 悲鳴は聞こえなかった。

 悲鳴を上げる間もなく殺されてしまったのか。


 瞳が恐怖で固まる。

 幸いだったのは、それでも声を上げなかったことだ。

 過去のゲームでは、恐怖で錯乱して悲鳴を上げたり、酷い場合は自ら狼の目の前に飛び出していってしまう人すらいた。

 そうして無駄に死んでいった人たちを、南雲は知っている。

 瞳が恐怖を感じると固まってしまうタイプで本当に良かったと、南雲はしみじみと考えた。


 銃声はしばらく続いた。

 明らかにもうその餌食となった羊は息絶えているであろうにだ。

 そして銃声が止み、足音が遠ざかっていく。

 それでもしばらくは、南雲は瞳の口を片手で押さえ、もう片手に握ったナイフの構えを解かなかった。


 十分すぎるほどの時間を置き、周りの物音を確認し、南雲はようやく立ち上がる。

 物陰から顔を出し、その惨状を見る。

 同時に、瞳には見せないほうがいいなと考え、未だ座り込んだままの瞳に視線を向けた。


「立てるかい?」


 瞳は無言のまま頷くも、腰が抜けてしまったのかなかなか立ち上がれなかった。

 南雲が手を貸して、ようやく立ち上がる。


「じゃあ、行こっか」


 瞳に惨状を見せないために、それが視界に入らない方向に歩き出す。


「これからは無駄口はしないようにね?」


 南雲の言葉に、瞳は無言で何度も頷いた。

 瞳にとって、さっきのことはかなり衝撃的だったようだ。


 甘いな、というのが南雲の評価だ。

 パートナーでなければ、とっくに見捨てているとも。

 随分なハンデを背負ってしまったと南雲は心の中で嘆息する。


 南雲は、パートナーを決めたルーレットが本当にランダムだったとは思っていない。

 きっと、南雲のようなゲーム経験者には、未経験者の中でも足でまといになりやすい人物がつけられているのだろう。

 瞳はポッチャリ体型で運動が得意なようには見えない。

 その上この無用心さ。

 南雲がパートナーでなければ、もうすでに死んでいたかもしれない。

 実際さっきのあれは、身代わりがいたから何とかなったものの、かなり危なかった。


 今回は生き残れないかもな。

 それが南雲の正直な感想だ。

 おそらく、前回の狼がほぼ全滅した事態を重く見た主催者が、羊に不利なルールを追加したのだろうと南雲は考えている。

 過去二回のゲームを生き残った南雲でさえきついと感じる今回のルール。

 生き残れる羊はいないかもしれないとさえ、南雲は思っている。


 歩きながら、先ほどの瞳の問いの答えを考える。

 南雲から見て、大吾は生き残れるような人物ではなかった。

 はっきり言って、共に行動しても南雲にメリットはない。

 足でまといが増えるだけだった。


 しかし、と同時に思う。

 その相方の優には、南雲も少し感じるものがあった。

 非日常の舞台にありながら、あの落ち着きよう。

 そして、常に南雲のことをさりげなく警戒していた。

 それも一晩中。

 過去二回の参加者の顔とは一致しないが、南雲も生き残った全員の顔を把握しているわけではない。

 おそらく、優はゲーム初参加ではない。

 それが南雲の出した結論だった。

 南雲が大吾たちと別れたのは、大吾が足でまといになるのも理由の一つだが、最大の理由は優を警戒してのことだ。


 南雲は考える。

 果たしてあの嬢ちゃんは、足でまといの坊主を守りながら生き残れるかな?


 ピローン!


 大きな音が二つ鳴る。

 その音に瞳が大げさにビクッと跳ねる。

 南雲は周囲を見回して異変がないかを観察しつつ、物陰に隠れる。


 隠れたまま周囲を警戒し、スマホを取り出す。

 その画面には、一通のメールが届いていた。


『ミッション!

 やあ! 夜は快適に過ごせたかな?

 爽やかな朝に羊さんたちに朝ごはんのプレゼントだ!

 六つのエリアに、それぞれ一箇所ずつ朝食を配置しておくから、取りにおいで!』


 メールの最後には添付ファイル。

 それを開くと、中にはこの人工島の地図と、朝食があるの場所を表すマーク。

 南雲たちがいる遊園エリアのマークは、観覧車の場所を示している。


 生きるのに食料は絶対必要だ。

 しかし、食料を得るには観覧車に行かなければならない。

 このミッションの内容は、狼には知らされていない。

 しかし、羊がこぞってある一点を目指せば、狼もそこに向かうのは必然。

 毎回このタイミングこそが、最も羊が死ぬ。


 ここで死ぬ気はさらさらないが、どうしたものかと南雲は考える。

 羊たちにとって、最初の関門が始まった。

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