第107話 頼りになります、文林
そして三日後、
暁生が役に立たないことが判明し、しかも新婚の身をいたずらに煩わすのもいかがなものかというまっとうな考えにより、小玉は彼に頼ることを早々に
だから部下に頼ることにした。
「付いてきてください! お願いします、
こういうときに、いちばん頼りになりそうな人間に。
「お前にしてはまっとうな人選に、ずいぶん早くたどり着いたな」
そう言う文林は、感心した様子である。
「ていうか、あんたか
泰の妻は
「確かに」
文林は納得の表情を顔に浮かべた。
実際、まっとうな人選だったと、小玉は自分の判断の正しさを疑っていない。
班将軍の「気づかい」および、文林を班将軍の家に同行させることを他の部下に告げると、誰もがすんなりと自分たちじゃ無理という事実を受け入れた。
明慧は「お前の人を見る目に感服する」と自分が役立たずであることを胸を張って断言し、泰は小玉の配慮を察したのか申しわけなさそうな顔を向け、
そして
清喜については、連れていくのはもう論外である。
「ていうかあんた、復卿が女装してるから好きなわけじゃないのね……」
おもわず声に出してしまった小玉に、清喜は
「女装してる復卿さんも好きですが、女装してない復卿さんも堪能したいです」
「お前もう口開かないで!?」
叫ぶ復卿は、照れ隠しとかではなく、真剣に怒っている。
これは話を振った自分も悪かったと小玉は陳謝した。
一番悪いのは清喜だけど。
ともあれ小玉は、文林の指図にしたがって班将軍のお宅訪問の準備をした……といっても土産物を用意したくらいである。
「礼儀作法とかは?」
てっきりそのあたりも教わると思った小玉だったが、
「付け焼き刃は
文林の
正直、班将軍よりもよっぽど嫌みだと思う、この男。でも事実である。
文林はさらに言う……もっと辛辣な言葉などではなく、非常に納得できる言葉を。
「お前は武官としては長いから、そちらの礼儀に徹しておけ。それなら粗は出にくいはずだ」
「ねえ、言うなら最初にその言い分伝えてくれない!?」
そっちのほうがよっぽど心に優しい。
しかし優しい文林とか、かえって恐いのでこれでいいのかもしれない。
不思議なものだと、小玉は思う。彼は小玉の側近たちのなかでもっとも最後に加わった人間である。
信頼なら明慧、信用なら復卿、尊重は泰……そんなふうに部下たちのことを
その自覚が小玉にあった。
――あんなことがあったのにね。
小玉は自分のことをふと不思議に思った。
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