第81話 過去と未来
無駄にいい天気だった。
一雨来るといいのにと思いながら、
実家に戻って早一月。
なじられると覚悟していた
村の者に遠まきにされているというあたりが特に。
忘れてはならないことだし、忘れたこともないが、もともと自分は故郷の居心地が悪くなって出て行ったのだ。
だから、彼らにとっては
無理もない。ごく一部の人間が友好的に迎え入れてくれたというだけでも上出来だ。
……その一部のうちに例の王一族が含まれるのが、なんだか複雑だが。本当にあのじいさん、一生許さない。相手の一生はもう終わっているけれど。
あと、子どもたちは素直だ。甥の友達がよくやってきて、都の話を聞きたがる相手をしてやるのも楽しいし、組み合いのやりかたなど教えてやったりすると、目を輝かせているのもかわいい。
自分、教える立場とか向いてるのかもしれないと、余人が聞けば目を剥くことを小玉は思っていた。
日々にそんな楽しみを見いだしているせいか、里の者の反応は全然気にならない。
負け惜しみだとかではなく本当のことだ。
戦場で精神的に鍛えられたのか、加齢による図太さか……どちらかといえば後者な気もする。戦場と無関係な同い年の三娘もやたらと肝が据わっていたことであるし。
ただ彼女の場合、母は強しの法則かもしれないが。
女も二十四歳になれば、度胸がつくものなのだろう。それなりに若いつもりだが、いつかは中年になるのだと考えれば、そうならない方がおかしい。
自分は中年になった時なにしているんだろうなと小玉は思って、すぐ苦笑いして考えれるのをやめた。
別に意外な未来などは待ち受けていないだろうに。
しかし、結婚はしているかもしれない。
最近その未来も「意外」の分類に入りそうになっている年齢だということはさておき、考えて
忙しくないわけではなかった。
田舎の暮らしだから、働いても働いても生活が楽になるわけではない。ただ、耕作や脱穀など、単調な作業のせいで、なにか考えないとやっていられなかった。
ここに来て、久しぶりに自分の未来に思いをはせた。
軍に骨を
これまでその感覚で生きてきたが、今更になって違和感を覚えるようになっている。
むしろ今だからこそなのかもしれない。
この九年間、軍属という立場から離れたことはなかった。
今、一時的とはいえ、民間人となったことで突き放して考えることができているのだろう。
はっきり言おう。現状に問題はない。
畑を耕す……まったく苦にならない。
――あれ? これって、このまま隠居してもいいんじゃない?
むしろ、その流れの方が自然に感じる。
それなのに、なぜか毎日素振りを欠かさない自分。なんだか中途半端だった。
自分とはいったいなんなのかという問いに対して、確固たる答えを持っているほどうぬぼれていないつもりだったが、それなりに自己を律している自負はあった。
それがどうだ。九年前のあの時、許婚に捨てられた時に戻ったように思い悩んでいる。
悩みの内容がまったく同じでないだけましなだけという状態。
この悩みに比べれば、ほかの問題など
「あの男」が頻繁に会いにくることなど。
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