第4話 VS廃墟の住民

「俺の名前は鏡坂だ。お前は?」

「私はここの巫女をしております。

私、正直に言って有名人じゃないですか?

お祭りとか毎回私が踊っているでしょう。知らないんですか?」

「苗字は内宮って知ってるよ。確かに有名人だよな。

でも祭りの時でも、名前まで出ないじゃねーか」

「内宮連歌と言います。初めまして下級国民さん!」

「俺の名前言った意味がねえ!」


「あの~すみません。掲示板見て来たんですけど~」


だらしない格好をした無職の小太りの男が黒服に案内され、

神社本殿に入って来た。


「おお!高山さん!こんにちは!」

「こんにちは~」


「なんだこのニートっぽい風貌の男は!?」

「失礼すぎるだろ……君も見た目昼間からパチンコしてそうだよ~!?」

「お二人とも。今は平日昼間ですよ?

見た目は同じくらい無職っぽいので初対面から無益な争いはやめてください」


「今回はどういうお仕事なの?」


「廃墟に住む厄介な住人の排除です。

立ち退きに応じない上に近づいた人間を襲います。

無能相手でも関係なく襲うので、今回の依頼となりました。

相手は一人なので、募集人数は二人ぐらいですね。報酬は500万円です」

「500万円!?マジかよすげえ!!」


鏡坂は目をきらめかせた。

この男はフリーターでパチンコが趣味にも関わらず貯金が趣味の変人であり、

あぶく銭には目がない。


「ふ~ん。相場より少し高めだね~」

「高山さんは何回目でしたっけ?」

「三回目ぐらいかな~」

「三人も人殺してるのかこのデブ!?」

「あのさ……君さ~」


「どうですか?せっかくだし、鏡坂さんも参加してみましょう!」

「えっでも人殺しはちょっとな……500万円とは言えさ……」


「殺しても誰も文句は言いませんよ。神器所有者です。神器所有者であるという事は暴力の世界で生きているものです。

今生きているという事は誰かを殺したと言うことなので別にいいんです。

私達は互いに命を取り合う事に納得して生きている。

まあ、たまたま神器を拾った子供とかではない限りですよ?

だからいいんです。

私が殺されないのも、私には護衛がいて、保有戦力が強いからにすぎません」


「う~~ん。でもな~。色々めんどくさくね?」

「重要な事を言ってないんじゃない?『掃除会社』の人達とかさ~」

「そうでした!ご安心ください殺人にはリスクがないです。

例え何人殺したとしても、『掃除会社』の人達に仕事を依頼しているので証拠は残りません。

殺人の証拠が残らなければただの行方不明であり、また対象の人物が見つからない以上、

事件は解決しません。捕まる事はないんですよ。

この『掃除会社』の人達はそれぞれ掃除の仕事に役立つ神器を持っていて、

しっかりと仕事をこなしてくれる優秀な中立機関です!」

「マジ?ってことは悪いことしてもまず捕まらないの?」

「そうです!」

「おっ!じゃあとりあえず一回だけやってみっかな!」

「薦めといてなんですが、なんか軽いですねこの男の人は……」


「フリーター人生に退屈してたのも事実。決闘なんて男らしくてかっこいいじゃん」

「僕が初めて参加する時は、もっと真剣に考えてたけどな~」



「今回の依頼は、正確には『排除』です。

基本的には命を絶ってほしいのですが、まあ説得で立ち退かせてもいいですよ。

大けがさせて入院送りでもOKです。

神器を持ち帰ってくれば+500万円です。私からプレゼントです」


「神器1個で1000万円かよ!すげーな!」


「結構悩むけどね~。内宮さんに渡すか、2つ目の神器と接続するかどうか」

「2つ目?」

「そう。2個神器を持てば、2つの機能を持てる」


「連歌!本当なのか?」

「名前で呼んでるっ!?馴れ馴れしいですよ!?」

「神器2つあれば複数の機能を持てるのかよ!?」


「そうですよ?説明忘れてましたっけ。

もちろん装着時は再度生き死にのギャンブルですけどね!」


「連歌!お前は何個持ってんだ?」

「3個以上です。上級国民ですからね!」

「何だよ以上って?はっきり言えよ!」

「はっきり言うメリットがありません!こういうのは秘密がいいんですよ。

いちいち自分の情報バラしてどうするんですか?

私が3個以上接続している事は、神器所有者の中では広く知られてますから教えただけです」


「狭い業界だから、情報は広がりが早いんだよね~」


「無駄話してないでさっさと仕事してきてくださいよ!鏡坂さん!」


「そうだな~。確かに早く1000万円貯金してえわ。んじゃ、行ってくる!」



鏡坂と高山は黒服から仕事先の廃墟の地図と、

到着するための路線情報が書いてあるメモを貰った。


それから2時間後の16時30分。目的の廃墟のビルに到着する。

太陽が陰っており、朽ち果てた建物の不気味な雰囲気をよりいっそう強調させている。


「高山の機能は何だよ。俺は『振動』だけど」

「いきなり自分から言うのか……。まあ、今回の仕事内容からすると互いに知っていないと連携できないかな」

「もったいぶるなよ」

「反発力を操作するって機能だね。自分が主体的に動かないとできないけどね~」

「よくわかんねえぞ!?」

「例えばバスケットボールってはたくとよく跳ねるでしょ?

それをはたいても跳ねないようにする。バレーボールで思い切りアタックしても手元にぽとりと落ちる。

逆に水風船とかは衝撃を吸収して跳ねないけど、それを与えた衝撃と同じくらい跳ねるようにする事ができる。

そんな感じかな~」

「なんだそりゃ?そんなちょっとした事を、自分から動いて触れなきゃできないのか?

弱そうだな!俺の方が断然強いだろ」

「君さぁ……ほんと失礼すぎるだろ仕事の先輩に対して……。

神器での戦闘は機能も重要だけど、『形態』も重要なんだけどな~。

ま、僕の神器はかなり戦闘向きだと思うよ」

「ほう。なら期待しとくわ」

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