見いだした恋
望月が二学年に進級してから、礼子の問題は急浮上した。四苦八苦した末に、やがて礼子は過去の人になっていった。望月が懸命につかみ取ろうとした指の間を、一方的にすり抜けていった。
同じ頃、野口と直子は反対に、男女の関係をはさらに深めていった。
世の中が慌ただしくなった年末にまた、クラスのコンパが開かれた。一次会が終わると、一行は店を出て最寄りの駅に歩いて行った。
すると、野口と直子が、地下の商店街の人混みの中で仲間たちから離れていこうとした。他の仲間たちは、自分たちの話に夢中だった。
年上の永山が何やら、先輩風を吹かせて、野口に耳打ちしていた。秘密の知恵を授けているのが、望月には分かった。周囲をはばかる小声だった。永山は親切にも経験者らしく、ゴム製品の使用法などを教え込んでいた。
悪友の傍らで、野口は内緒話にうなずいていた。野口の視線が、空想に駆られて宙をさまよい、望月の視線と衝突した。
望月はふざけて、にっこり笑った。親指と人差し指で輪を作り、激励の合図をして見せた。野口はその意味が分かって驚きの色を示し、照れ笑いして下を向いた。
野口と直子の交際は、始まってから一年近く経っていた。しかし、野口は通常考えられる性行為を、まだ実行に移していないらしかった。以前の直子の交際相手との関係はどうなったのか、その存在が二人のためらいの原因になったのか、その詳細は望月には分からなかった。
直子は女友だちに向かって、大胆なことを言った。
「今夜は帰らない」
直子は野口の腕にしがみついた。
野口に大人の知恵を授けた永田が、苦笑いした。軽く手を出し、直子の頭を小突き、たしなめた。すると、直子は小動物のように野口の背中に隠れた。
仲間があきれて見守る中を、二人はホテル街に向けて歩きだした。覚悟を決めたらしい二つの背中は人込みの中に吸い込まれて行った。
そのうち、直子が暮らしていたアパートに、野口は通い始めた。やがて女性部屋に転がり込んで、生活を共にした。双方とも地方の出身で、都会のひとり暮らしの寂しさも影響しているようだった。
最初に言い寄られたのは直子の方だった。しかし、交際が始まって同棲生活に入ると、直子の方から、のべつ幕なし影のように野口に付き従うようになった。
二人はどうしようもなく引き合い、結び合って行くように見えた。いつも寄り添って、自分たちの関係を公然と示し、大学の内外を歩き回った。
一部の学生たちは、似合いのカップルとして野口たちを好意的に見た。二人は自分たちと同じように、大学に入学するまでは全く赤の他人だった。それが、互いを認め合って恋仲になり、親しい交際に及んでいる。傍目には羨ましいほどの親しさを見せている。
しかし、矢野教授などは冷ややかな眼を向けていた。自分の授業の時も、寄り添っている二人の姿をよく見ていた。
「あれじゃあ、野口がかわいそうだ」
ある時、野口たちのいないところで、他の学生たちに同情のため息を漏らして、そう言った。
同じく批判的な目を向けた学生たちもいた。二人はまだ、親のすねをかじっている。それが、先の見通しも立たないうちから同棲も始めてしまった。そんな思いで、二人に興味深々の視線を向けた。
一方、望月などは、独り身の自由を楽しみながら、悠長な生活を続けていた。野口たちをのんきな気持ちで眺めていた。二人の今後がどうなるのか、考えることもなかったし、考えても見当はつかなかった。
ある夕方、同棲中の二人と、望月は商店街が軒を連ねる八百屋の店頭で顔を合わせた。
直子のアパートが大学の近くだということは、友人の誰かに聞いて知っていた。まるで若夫婦のように腕を組む二人の仲睦まじさに、望月は面食らった。
「なーに、夕飯の支度?」
望月のかけた声に野口は照れて笑ったが、直子は紙袋を手にして言った。
「そう、一緒に食べて行く?」
気取らない性格の一端を覗かせた。
「ああ、おれはいいよ」
望月は苦笑いしながら遠慮し、早々に別れを告げて、その場を立ち去った。
それから二,三ヶ月経って学年末になり、望月が節子に言い寄ったコンパの時から一年以上が経った。
時節柄、忘年会のコンパの話がクラスの中で持ち上がった。入学当初に編成されたクラスは、二学年が終了すれば解散することになっていた。
その晩、盛り場のしゃれた店で、望月は親しかった何人かの女子学生と語り合った。しかし、節子の方を気にして、ときどき見ていた。
節子との間には、人間関係のこじれや感情のすれ違いを意識していた。しかしやはり、節子はクラスの気の置けない仲間のひとりだった。日常生活で、視野の中に自然に収まっている女性だった。
店内では、永山が節子と同席していた。
「節子さんのそばに行ってあげれば…」
女友だちの坂本は、何気なく望月に忠告した。まるで二人の間に親しい関係が存在しているかのような口振りだった。
望月は久しぶりに節子と話したい気持ちはあったが、永山の存在が気になった。
そのうち、望月のそばにいた女子学生が一度トイレに立った。
節子は、黙ってそこにやってきてすわった。一瞬、望月の表情を盗み見た。望月が見つめると、一度合った視線をすぐに反らせた。
節子を迎えたそれまでの語りの場は、一瞬白けた。
節子は容姿に自信があり、口が重く、気取ったところがあるように望月には見えていた。節子をあまり好ましく感じていない女子学生も、クラスの中に何人かいるようだった。
間もなく、用を済ませた女子学生が姿を現した。節子は結局、望月とはひと言も言葉を交わすことなく、永山のいるボックスの方に戻っていった。
望月はやがて、離れた席の薄闇の中で、節子の潤んだ両目が輝いているのに気づいた。節子は今度は、目を背けずに望月の方を見続けた。まるで、何かを望月に乞うているように感じられた。望月は、節子を限りなくいとおしく思った。
隣にすわり込んだ永山に勧められて、節子はまるでうっ憤ばらしのようにグラスのウイスキーを飲み干した。それは、望月への当てつけのようにも見えた。永山の下心が透けて見えるようだった。望月には、二人の図は不快だった。
やがて学生たち一行は、次の駅まで電車には乗らずに歩いていこうという酔狂を思いついた。
望月は、適度の酔いで気分を良くしていた。仲間たちは、三々五々移動していった。いつの間にか、節子の後ろ姿が望月の目に映った。千鳥足で陸橋の手すりを伝わって降りていた。
たどり着いた駅の周辺には、夜も遅い時間で人影もあまりなかった。
気がつくと、節子が両手で顔をおおっていた。何かが原因で泣いているようだった。かなり酔っていて、取り乱していた。
永山が、すぐ近くで節子を見つめていた。何かの拍子に、節子に両腕を回して抱きついた。
「節子さん」
永山は、漏れ出るような声を出した。
その拍子に、望月の見ている前で、ほっそりとした節子の体が見事にしなった。永山は手のひらでおおわれた節子の顔を、息のかかる近さで見つめた。
クラスの者たちは、この光景にあまり注意を払わなかった。酔っ払って注意力も散漫になり、所々に集まって雑談していた。
しかし、望月は目の前の光景に動揺した。反発を感じ、耐え難い思いを味わった。一瞬のうちに、一頭の動物の本能に回帰した。腹が立って、衝動的に制止の行動に出た。
永山から節子の体を引き離そうと腕を伸ばした。永山に対する羨望と、節子を助けたいという正義感があった。内心の動揺を隠し、表面上は冷静を装った。
「まあまあ」
その場を取り繕うような言葉をかけた。
プライドの高い永山は、邪魔立てされた怒りを、望月に向かって眼の輝きで示した。
引き離された節子の方は、望月の介入に特に反応は示さなかった。女友だちの方に行ってしまった。
「どこかもう一軒寄っていこう」
そんな声が、誰からともなくかかった。
一行は横断歩道を渡り、下り坂の歩道を下りていった。若者に人気のある、しゃれた飲食店や商店が両側に並んでいた。
永山は後から追っていって、節子の横に並んだ。細い肩を抱いて頬ずりした。節子は、いやがって身をかわした。酔っていても女の防衛本能が働くのか、背の高い女友だちにしがみついた。
そんな三人のやり取りを、望月は離れた所から眺めた。永山の執拗な干渉の姿に、気分を害していた。
しかし、感覚的には、通りの薄闇の光景を美しいと感じていた。三人の姿は、街灯の原色の照明で、影絵のように浮かび上がった。
一行は、深夜の時間には珍しく照明をつけていた喫茶店に入った。階段を下りていき、望月が気の向いたソファに席をとろうとした。
すると、何を思ったか、節子がすぐ後ろについてきた。まるで甘えるように、黙ってうつむいて、望月の傍らに寄り添ってきた。永山の執拗な手から、節子をかばっていた背の高い女子学生は、望月に尋ねた。
「ここ、大丈夫ですか?」
それが、節子をあなたに任せてよいか、という問いかけであることに望月は気づいた。
望月は、この店でも永山が節子にからむ様子を離れた所から眺めるのか、と不快な気分でぼんやりと考えていた。しかし、望月の隣の席は今や、節子の逃げ場となり避難所となった。
忘年会の最後の時になって、ソファの中で、節子は望月に体を密着させて寄り添ってきた。節子をそんな風に、自分の皮膚感で迎え入れるのは、望月には初めてのことだった。驚きとともに喜びを感じた。一年前には、今日の永山のように言い寄る望月から、節子は懸命に逃げていた。
望月は、傍らの節子の体を抱きかかえたい衝動を覚えた。しかし、一年前の節子の拒絶の反応が思い出された。寛いだつもりで後ろに回した腕は、ソファの背の上に伸ばしたきりだった。
永山は、並んですわる二人の向かいのソファに陣取った。
「雨の日にさ、増田さん、黒いドレス着てきたでしょ?フリルの付いたレースの…。あれ見た時さ、おれは負けたんだよ」
永山は頭を左右に振りながら、飲み過ぎて焦点の定まらない目と、不確かな発音で語った。
「前から好きだったんだよ。言う機会がなかったからさ」
望月は、ここにもひとり自分と同じように、節子に魅了されている男がいると思った。自嘲すると共に、ひとりの女に熱を上げている自分たちの身の上を哀れに感じた。
一ヶ月も前の、あの霧雨の日の黒ずくめの節子の姿は、望月も鮮やかに覚えていた。永山は、望月とは異なる角度から節子を見ていたらしい。
永山は、自分の行動の一端をさらけ出した。
「だから、この間誘ったでしょ」
酔っていた望月の耳の中に、その言葉はふと入って心に引っかかった。
やはり、節子には異性を惹きつける相応の魅力があるらしい。自分を含めた様々な男から狙われ、声をかけられていた。誘いの手があちこちから、伸びていた。
永山は普段から、都会者らしく才気煥発だった。いつだったか、自分の女性交遊の一端を、望月たち男友だちに語ったことがあった。
レスビアンの関係にある、髪の長い二人の美形の女子学生から、永山は港町のホテルに呼び出されたことがあった。その時は、あいにく用事があって行けなかった。しかし、後から考えてみると、あそこれと想像して、残念で仕方がなかった。もし誘いに応じていれば、三人でどんな思いがけない体験ができたかと思いを巡らした。
永山はその気になりさえすれば、交際半径の中で、派手さや垢抜けた雰囲気のある才媛は、容易に見つかりそうに思われた。 そんな永山が、一見地味に見えるクラスの女子学生に心惹かれている事実は、望月には意外だった。
「増田さんはさあ、少年のような美を持ってるんだよ、娼婦みたいな…」
望月も、永山に同調せざるを得なかった。
「小悪魔的だね」
「増田さん、うつむいているときにすっと目を上げると、それがすごく美的なんだよ」
その指摘で望月には、節子の魅力の中心とはその視線の動きであることが、初めて分かった。
望月と永山は、揃って節子の美を認めた。しかし、それを手に入れる段階になると、いつまでも同調して意気投合しているわけには行かない。
永山は、節子が望月に寄り添ってすわっていることが気に入らないらしく、くどくどと話を続けた。
「増田さんには本当に負けたんだよ、好きになったからさあ」
節子はそんな言葉を黙って聞いて、酔ったうつろな目でうなづくだけだった。永山は自嘲的に首を横に振った。
「増田さんはさあ」
「もういいから」
望月は永山のしつこさに腹を立て、その声は少し大きくなった。二人はにらみ合った。陰険な雰囲気が、一瞬流れた。
望月は自分の中の強い感情に驚いた。その原因が恋愛感情であることに、後で気がついた。
しかし、不穏な空気が氷解するのに、時間はかからなかった。
三人は、すでに二年間も同じ教室で学んでいた。毎日のように大学で顔を合わせていた。望月は、世間でよく耳にする男女の三角関係を望んでいなかった。それは、永山も同様だろう、と想像できた。
永山は節子を見つめ、呼びかけた。
「増田さん」
永山は自分の手をテーブルの上に差し出した。指が傷つき、赤い血が傷口の周りにだらしなく広がっていた。節子は素直に永山の呼びかけにうなづいて、その手を優しくなでた。
「どうしたの?」
望月には、永山の傷跡と二人のやり取りの関連が分からずに、気にかけて尋ねた。
「いや、増田さんがさ…」
永山は口をねじ曲げて、自嘲的に小さな笑い声を出して、それ以上の詳細は語ろうとしなかった。
望月は勘ぐった。どうやら、どこか見えない所で、永山が欲望にかられて、節子に対して何らかの強引な行動に出た。不快感を示した節子が、それを力で拒んだ。その際に、永山は傷を負ったらしかった。
望月は不快感を味わった。欲望に忠実に、男は女に迫った。女は一度は拒んでも、相手を傷つけたと知ると、いたわりの気持ちを起こした。望月は二人の間柄に疑問を感じた。すべて酒の酔いが引き起こした結果かもしれなかった。
そのうち、永山は誰かに名前を呼ばれた。離れたボックスにすわる仲間たちの方に行ってしまった。
望月は増田と二人きりになった。体を密着させていた節子の太股のぬくもりに、自分の体が熱を帯びてくるのを感じた。下半身が生き物のように反応した。
節子は望月に向かって話し始めた。語り出した内容は、永山に言い寄られた当惑や苦情ではなかった。その窮状から節子を救った望月への感謝の気持ちでもなかった。
節子の心の目は、もっと別のものに向けられていた。
「望月君は毎日、健康的ですか?」
他人行儀にも聞こえる丁寧な語尾だった。望月は一瞬、戸惑った。
「どういう意味?」
「私は毎日、苦しんでるの」
望月は、昼間の大学の中で、最近の節子が時折見せる神経質な眉間の動きや、貝のように押し黙った様子を思い浮かべた。
「もっと素直になったら?」
「素直だから、素直だから苦しいのよ」
節子はすぐに返答した。
「私は、たくさんの人を傷つけてしまったの。私は悪い女だから…」
節子は不意に顔を両手でおおい、泣いたようだった。
確かに節子には、今や恋多き女というにふさわしい雰囲気があった。クラスの男子学生の日野は、いつか言ったことがあった。
「あいつ、モデルみたいだよ」
望月はその言葉に同意せざるを得なかった。
それくらいの水準まで、節子は自分の美貌を成長させた。大学入学当初は、その姿に高校生の名残をとどめていた。それがいつの間にか容姿に磨きをかけ、洗練させた。
一方でそのほめ言葉には、軽い悪意が込められているようだった。節子は、美貌と共に気位の高さを増長させていた。
望月は、少なくとも自分は、節子に傷つけられた男たちの中には含まれていないことを意識した。
節子はその後、自分を被害者にした男のことを、前ぶれもなく口走った。
「付きあっていた人がいたの。年上の人だったの。彼は野心家で、精力的で、優しくて、色んな所に連れていってくれたの。バーにも連れてってくれて…。私は誘惑に勝てなかったから…」
節子からは一年前に、不倫の恋に対する願望を聞いていた。
そこから想像して、その相手は既婚の男性と思われた。そう思うと、傍らの節子が自分とはかけ離れた世界の住人に思われてきた。都会の贅沢で、危険な、大人の恋を知っている女に思えた。やはりその点で、望月は純粋だった。かつての望月は、詰め襟の学生服を着て、田舎町の片隅で高校生活を送っていた。
「それなのに、彼ったらひどいの。私に、ひもになれって言うの。あたし、そんなの、いやだから…」
節子は、「ひも」という言葉で、「二号」という意味を表そうとした。それは、一年前の、確か「二号さんでもいいの」という口ぶりとは矛盾していた。
「つまり、彼の目的は…、分かるでしょ?」
節子は品のない想像を、望月に強いた。うなづきながら望月は、節子のうぬぼれの強さを感じ、内心で苦笑した。
相手の男ばかりか、永山も望月も、そして名も知らない他の男たちも、節子の花の魅力に誘われて飛んできた昆虫の類いに思えた。
「どうして、そんな男とつき合ったの?」
望月はいくぶん失望し、気分を害した。相手の男をさげすむような口調だった。節子をわずかに強い語気で詰問した。
「素敵だったの。好きだったの」
本心をはっきりと聞かされて、望月は言葉を失った。
望月は、自分の動揺をひと思いに笑い飛ばしてしまいたくなった。吐き捨てるような語調になった。
「そうか……、よくある話だね」
うつむいていた節子は、弾みをつけて顔を上げた。急にいつもの冷めた口調に戻った。
「そうよ、よくある話よ」
節子は「はあ」とため息をひとつついた。すると、望月の肩の上に自分の頭をもたせかけてきた。
頭の重みと温かさが、肩を通して望月の体の芯まで伝わった。望月は、傾いてきた頭の上に、頬で節子の髪の毛をなでるようにして、頭を重ねた。少しためらったあと、ソファの背に伸ばした手で節子の肩をつかんだ。節子の体を自分の方にわずかに引き寄せた。それは、望月にとって心地良い抱擁だった。
その時、不幸なことだったが、望月は予感した。
自分たちのこの抱擁は、形式だけで内実を伴っていない。節子の生きる道と自分の生きる道は、平行線で交わらない。二人が寄り添って目を閉じるこのひとときが、自分が節子を最も近く感じる、ほとんど唯一の機会になるだろう。そのことが、口惜しいほどの自然さで望月には納得された。
望月の視界は、酔いから来る疲れと節子のぬくもりから来るわずかな陶酔によって、うつろで狭くなっていた。その視界の端に、抱き合っている二人を見るために、身を乗り出している女子学生の姿が映った。
先ほどから節子は、永山と望月の二人の男に持てはやされている格好だった。他の女子学生たちは、節子に白い目を向けているように、望月には感じられた。
永山も二人の姿に気づいた。自らの敗北を認めるかのように、二人に向かって言った。
「彼は優しいからさ…」
皮肉にも永山は、望月が節子から、節子が好きだった男のことを聞かされたことを、知らなかった。
この一件があってから、望月はしばらく迷った。
ある親密さによって身を寄せ合った節子に対し、今後どのように接したらよいものか。ここ一年の間、ほとんど交流のなかった節子が、アルコールのせいもあったか、急に接近してきた。節子に対する心情の安定感を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます